静かなる叫びの紹介:2009年カナダ映画。アカデミー賞にノミネートされた「メッセージ」のD・ヴィルヌーヴ監督が、実際に起こった女子学生ばかりを標的にした銃乱射事件をモチーフにした衝撃作の問題作。名前が設定されていない事件の実行犯により、ありふれた日常が崩壊されていく様を全編にわたる白黒映像がリアルに浮かび上がらせています。カナダのアカデミー賞に当たる第30回ジニー賞で、作品、監督賞など計9部門で受賞しています。
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 出演者:マキシム・ゴーデット(殺人者)、セバスティアン・ユベルドー(ジャン=フランソワ)、カリーヌ・ヴァナッス(ヴァレリー)、エヴリーヌ・ブロシュ(ステファニー)、ピエール=イヴ・カルディナル(エリックエリック)ほか
映画「静かなる叫び」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「静かなる叫び」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
静かなる叫びの予告編 動画
映画「静かなる叫び」解説
この解説記事には映画「静かなる叫び」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
静かなる叫びのネタバレあらすじ:起
1989年12月のカナダ。その日”彼”(マキシム・ゴーデット)は、自分の人生を破滅させたフェミニストを抹殺する決意をし、遺書をしたためる。女性の特権を手放さず、男の権利を奪うフェミニストに強い憤りを抱え続けてきた”彼”は、成績は悪くはなかったが社会性欠如で軍隊に入隊できず、以来7年間仕事もせず、貯えが尽きるのを待っていた。
そして今日、溜まっていた洗い物を済ませると、母親宛てに赦しを請う短いメモを書いてポストに入れると、工科大学へ向かう。大学内のカフェテリアで一通り様子見をした”彼”は、一旦車に戻り、犯行声明を書いたメモをポケットに入れると、ライフル銃を手に再び校内に入って行く。
同じ日、工科大学の女子学生ヴァレリー(カリーヌ・ヴァナッス)は就職面接のため身支度を整えて大学に来ていた。航空業界で働くことが夢だった彼女は、機械工学のインターンを希望するが、面接官からは出産による途中退職をけん制される。
女性であることへの偏見に憤りながらも、やむなく「キャリアを優先し子供を作ることは考えていない」と答えることで、ヴァレリーはインターンへの道を手に入れるが心は晴れない。
その後、ヴァレリーはルームメイトのステファニー(エヴリーヌ・ブロシュ)や、友人のジャン=フランソワ(セバスティアン・ユベルドー)とともに講義に出席していると、そこにライフルを持った”彼”が現れる。
静かなる叫びのネタバレあらすじ:承
突然教室に入ってきた男は威嚇射撃を行うと、まずそこにいた学生を男女に分け、男たちは全員出ていくよう指示する。怯えるヴァレリーらを気にかけながらも、逆らうことができずに教室を出たジャン=フランソワは、その足でまだ何が起こっているか知らない多くの学生らの間をぬって警備員の元へ走り、人質事件の発生と警察への通報を告げるが、警備員の反応は鈍かった。
彼が教室に戻ろうとしたときには部屋から出てきた犯人がロビーやカフェテリアで次々に発砲し、すでに構内は阿鼻叫喚と化し、逃げ惑う学生らでパニック状態になっていた。そんな中、犯人の目をかいくぐってヴァレリーのいる教室に戻ったジャン=フランソワだったが、中に入ると、そこには凶弾に倒れ血まみれになって横たわる女子学生たちの姿があった。
こらえきれず嗚咽しながら教室出た彼は、構内で多くの犠牲者を目の当たりにして愕然とするが、まだ息のある女子学生を発見し、なんとか助けようと犯人の目をかいくぐって離れた場所で救急キットを手に入れて手当をする。
しかしあまりに出血が激しく、再び助けを呼ぼうと構内を走るジャン=フランソワは、そこで犯人に遭遇、居合わせた学生らに向けた犯人の銃撃から逃げようと、慌てて近くの部屋に駆け込むと、そこには構内で起きている惨劇に気づかないまま酒宴に興じている男子学生たちがいた。
静かなる叫びのネタバレあらすじ:転
この銃撃の中でヴァレリーは奇蹟的に一命をとりとめていた。あの時、教室に残され手をつないで恐怖に耐えている女子学生らに、犯人ははその理由を「フェミニストが嫌いだ」と告げ、勇気ある1人が反論しようとした瞬間に、銃弾を浴びせた。
犯人が教室を出ていった後、被弾しながらも意識を取り戻したヴァレリーがまわりを見ると、その時ステファニーら数名はまだ息がり、重傷を負いながらも助けを呼ぼうと体を引きずるようにして教室を出た彼女は、そこで犯人が乱射している姿を見て再び恐怖にかられる。
慌てて教室へ引き返すが向かってくる足音に犯人が戻ってくると思ったヴァレリーは、しゃべろうとするステファニーの口もとを抑え、死んだふりをしてやり過ごす。しかし その時、教室に入ってきたのは犯人ではなくジャン=フランソワで、誰一人動く気配のない様子に彼は生存者に気づくことができなかったのだ。
叶うる限り撃ち尽くした犯人は、最後に装填するとライフルを自分の額に当て、自らの頭を撃ち抜いて自殺した。横たわる犯人の頭から流れ出るその血は、近くで息絶えた犠牲者の血に交じっていった。
その後、警察や救急が到着し、ヴァレリーは気づくことができなかったことを謝罪するジャン=フランソワに付き添われながら搬送される。
静かなる叫びの結末
事件後、ジャン=フランソワは多くの友人らの悲惨な姿を目にした衝撃と、誰一人助けることができなかったという無力感に打ちのめされ、鬱々とした日々を送っていた。
クリスマスを目前にして彼は思い立って実家に戻ると、母親は久しぶりの再会を喜び、平静を装って何気ない会話をする。そして実家を後にしたジャン=フランソワだったが、心に巣くう闇に勝つことができず、その後、雪が降り積もる水岸に車を止めると排気ガスを引き込んで自らの命を絶つのだった。
ヴァレリーは数年後、憧れていた航空業界の職に就き、一緒に暮している恋人もいて事件から立ち直ったかのように見えたが、今でも惨劇の悪夢に飛び起きる。そんな中で恋人の子を妊娠したことを知った彼女は、何故か面識もないまま絆を感じた犯人の母親に宛てて投函するつもりのない手紙をしたためる。
つきまとう記憶や恐怖に耐えることに疲れ果てていること、喜ぶべき妊娠を知って人生第2の恐怖に直面していること。それでもヴァレリーは人生への信頼と勇気を取り戻し、再び自分の力で立ち上がる決意を胸に刻むのだった。
以上、映画「静かなる叫び」のあらすじと結末でした。
事後のジャン・フランソワの死は痛ましい。