パイロマニアック ~炎の中の獣~の紹介:2016年ノルウェー映画。ノルウェーで実際に起こった、衝撃の事件を映像化した作品。小さな村で発生した、恐ろしい連続放火事件。村人達の尊敬を集める消防隊長インゲマンの息子であるダグは、火災と闘う勇敢な父親を誇りに思い、自らも消火活動に携わっている。しかしその一方、ダグは誰にも言えない秘密を抱えていた。母親のアルマは、息子のある行動に不信感を抱く。ノルウェーの鬼才エーリク・ショルビャルグが、淡々と、そして衝撃的に描くサスペンス・ドラマ。
監督:エーリク・ショルビャルグ 出演者:トロン・ニルセン(ダグ)、リヴ・ベルンホフト・オーサ(アルマ)、オドゲール・トゥーン(アルフレッド)、ベール・フリッシュ(インゲマン)、アグネス・キッテルセン(エルサ)ほか
映画「パイロマニアック 炎の中の獣」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「パイロマニアック 炎の中の獣」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
パイロマニアック ~炎の中の獣~の予告編 動画
映画「パイロマニアック 炎の中の獣」解説
この解説記事には映画「パイロマニアック 炎の中の獣」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
パイロマニアック ~炎の中の獣~のネタバレあらすじ:起
1978年のノルウェー。住民が千人にも満たない小さな村。ある晩、オラフとヨハンナという老夫婦の住む家がいきなり炎に包まれました。2人は急いで外へ飛び出し、事なきを得ます。しかしヨハンナは火事の直前、家の前に停まった一台の車を目撃していました。ヨハンナはオラフに言います。「あいつよ」。…この火事から遡ること3週間前。1人の青年が森の中で木切れを集め、マッチで灯した炎を見つめていました。青年の名はダグといい、19才。兵役を終え、両親の住むこの村に戻って来ていました。父親のインゲマンは地元の消防隊長で、村人から尊敬されている人物。また母親のアルマはいつも息子を気にかけている、愛情深い女性です。近頃、村では謎の火災が頻繁に起きていました。火災発生の連絡を受けるたび、インゲマンは自宅ガレージに置いた消防車で出勤します。そんな父親の姿を見て育ったダグも今では、インゲマンと一緒に消火活動に参加していました。サイレンを鳴らし、父親と共に現場へ向かうダグの表情は活き活きとしています。雑木林はすでに広範囲で燃え、消防隊員達は懸命に消火活動を始めます。湖から水を引き、ホースで消火するダグの姿を、インゲマンが誇らしげに見つめていました。ようやく炎が消え、火元は煙草の吸殻と判明します。たまたま通りかかったドライバーが投げ捨てたのではないか。インゲマン達はそう推理します。
パイロマニアック ~炎の中の獣~のネタバレあらすじ:承
インゲマンは消防隊員としてのダグの働きを誉めますが、アルマは息子が就職するべきだと考えていました。ダグは頭がよく、学校でも優等生でした。しかし兵役を終えて村に戻ってからは同年代の若者と打ち解けず、いつも孤立しているように見えました。アルマの勧めで、ダグは気の進まないまま郵便局に就職します。郵便物の仕分け作業を終えた帰宅途中、ダグは1人、森の中で煙草をふかします。その日の真夜中、インゲマンに火事の知らせが入ります。しかしインゲマンは体調が悪く、消防車の運転をダグに任せます。消火活動の最中にインゲマンは帰宅し、ダグに「体力の限界だ」と弱音を吐きます。ダグは答えます。「大丈夫。もう火事は起きないよ」。息子の発言を奇妙に感じるインゲマン。その後1週間、火事はありませんでした。ダグは警官に「容疑者は?」と尋ねます。警官は答えます。周囲はよそ者の仕業だと思っているが、自分は住民の誰かが犯人だと考えている。ダグの顔に不安がよぎります。ダグは現場の地面を探って汚れたカップを拾うと、警官に犯人逮捕の手がかりになるかもと手渡します。ある日、ダグは職場の上司に咎められます。郵便物をゴミ箱に捨てたのがばれたのです。郵便物を直接届けに行くダグですが、その家の住民に怒鳴られ、腹立たしさを堪えます。ダグは車で走り去り、森の中で見つけた一軒の家に放火してから帰宅します。
パイロマニアック ~炎の中の獣~のネタバレあらすじ:転
アルマは息子の行動が不安でなりません。服がいつも煙臭いのです。さらに、火事が起こるのは必ずダグの帰宅後です。ダグの行動は次第に大胆になっていきます。一軒家を見つけると、ガソリンタンクを持って侵入。地下室に火を放ち、燃え盛る炎を魅入られたように見つめます。いつものように消火活動を終えたインゲマンは、全焼した現場で何かを拾って厳しい表情になります。村の放火事件は有名になり、消防隊は新聞の取材を受けます。現場では不審車両の目撃情報以外、何の手がかりもありません。インゲマンの体調は日に日に悪化し、今度火事が起きたらお前に任せるとダグに告げます。たった1人でやれだって?と腹を立てたダグは、その夜にも外出。ある一軒の家にガソリンで火をつけます。しかし、そこに女性の悲鳴が響きます。驚いて逃走したダグの行動はますますエスカレートし、夜明けにまた一軒の小屋を燃やすと、笑顔すら浮かべて炎を見つめます。数日後、放火犯が逮捕されたというニュースが村に流れます。息子を疑っていたアルマはホッとしますが、すぐに人違いだったと報道されます。ある晩、ダグは村の若者達のパーティに参加。女の子2人と仲良くなります。ダグは彼女達を消防車に乗せてやり、湖へと連れて行きます。女の子達は大はしゃぎしますが、そこへ車で現れた青年達が誘いをかけてきて、結局、彼女達はダグを置いて走り去ってしまいます。1人残されたと気づいたダグの顔が、ショックと怒りで歪みます。
パイロマニアック ~炎の中の獣~の結末
その直後、オラフとヨハンナの家の放火事件が起こります。インゲマンの代わりにホースで火を消そうとするダグを見て、その場にいた若者達がせせら笑います。怒りを溜めたダグは副消防隊長の家に行き、彼の妻に話しかけます。妻はダグが唯一、村で心を許していた女性でした。妻はダグのことをいつも誉めていましたが、今日はダグが望む言葉をかけてくれません。ただただ困惑した様子で、ダグのことを見つめています。失望したダグは車で走り去り、自宅近くの一軒の家に火をつけます。家は勢いよく燃え上がり、ダグは炎を見つめます。しかし、ふと後ろを振り向いた瞬間に顔色が変わります。放火するダグのことを見つめていたのは、アルマだったのです。息子の犯行を知ったインゲマンは、「警察に行って何もかも話せ」と静かに諭します。ところがダグは「何か問題?」としれっと答えます。ショックを受けたインゲマンは、以前現場で拾った証拠品である消防車の部品を持ち、警察に向かいます。間もなく警官が家に現れ、ダグは連行されます。落ち着いた態度でパトカーに乗り込むダグに、上着を渡して涙ぐむアルマ。インゲマンが悲しそうにアルマの肩を抱き寄せます。警察署で尋問されたダグは、「あり得ない」と犯行を否定します。「僕は消防士なんだ」。警官はインゲマンから受け取った証拠品をダグに見せます。「なぜ僕だと?」と問うダグに、警官は言います。「犯人は頭のいい奴だ」。その言葉を聞いた途端、ダグはかすかに笑顔になります。「あんたが事件を解決した」。そう答えたダグは犯行を認め、とても満足そうな表情を見せます。インゲマンとアルマが車で署に到着します。アルマは車内で身を固くして座っていましたが、やがてあきらめたように車から出て行きます。
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