僕たちの舞台の紹介:1998年フランス映画。台本のない所からテーマを決め自分たちの演劇を作り上げようとする、ストラスブールの演劇学校の生徒たちの一夜。彼らは何を語るのか。ニコラ・フィリベールによる青春群像劇を、ドキュメンタリーとフィクションを融合させて制作した意欲作。
監督:ニコラ・フェリベール 出演者:ストラスブール国立演劇学校、第30班学生、ほか
映画「僕たちの舞台」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「僕たちの舞台」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「僕たちの舞台」解説
この解説記事には映画「僕たちの舞台」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
僕たちの舞台のネタバレあらすじ:台本のない演劇
ストラスブールの国立演劇学校のとあるクラスでは、15人の生徒が集まり、台本のない劇を作ろうとしていた。学校のあるストラスブールの街をテーマにしたが、15人それぞれに調べて見つけてきた事柄は、アルザス地方の食文化や、街で出会った盲人との交流や、ランドマークの大聖堂など様々。短編のオムニバスにするにしても15人分の意見を入れるわけにもいかない。台本のない状態から演劇を作った経験のない彼らは、それぞれの意見が対立してしまいなかなか進まない話し合いに、言い争いが始まりかけてしまう。そこで一人が、言い争いはやめて、5分休憩を取った後、即興劇しようと提案した。
僕たちの舞台のネタバレあらすじ:即興劇
即興劇では、大聖堂からライン川の向こうに見える景色の話をするカップルたちと、そこまで登る男、教会の鐘が10時に鳴る理由等、ストラスブールのらしい一幕が繰り広げられる。
そんな彼らが演劇の稽古をしているのは昔は兵舎だった建物の中。使うはずの劇場が工事中なので今はここで練習をしているのだと話す。なぜ演劇を学んでいるのか、カメラを向けると、その問いに対して確固たる答えを持っている者もいれば、まだ漠然としている者もいた。
やがて生徒たちは街の中心にある巨大な聖堂を模してか、肩車や型に乗る等して、二つの鐘楼のシルエットを作り出した。
僕たちの舞台のネタバレあらすじ:アルザスの言葉とハーモニー
合唱の練習では、それぞれにパート分けをし、アルザス語の歌を練習する。各々旋律に会うようなハーモニーを探りながら、アドリブに近い状態で合わせていく。合唱の盛んなこの地域ではよく見る光景でもある。
夜も更け、剣の練習をするもの、ハーモニーの練習をする者、この地方を象徴する鳥でもあるコウノトリの小道具の作成を始める者もいた。
盲人との交流でこの街を再発見した生徒は、その盲人をどのように表現しようかと悩んでいた。はっきりと舞台上に出すのではなく、シルエットで出そうか、その人の気配を感じるように出すにはどのような方法がいいのか、策は尽きない。
今回の課題で、強制収容所にまで行った生徒もいた、彼は、収容所は恐怖とは違う、同じ人間同士が現代になぜあんなむごいことをしたのか考えさせられる場所だと語る。
歌の練習はソロのパートまで進み、盲人をどう舞台上で表現しようと言うのは足元だけライトで照らし、その人の感じるものを暗がりの中に流れるナレーションで表すと言う方法とることにした。
僕たちの舞台の結末:夜明けまで
話がまとまって来たので、一度大まかな舞台を机で作り試してみることにした。そうすると生徒の中から、また提案が飛び出した。
合間に合唱の練習を挟み、小劇場へ異動する彼ら。今回の課題で演劇について見つめ直した生徒の一人は、舞台に出る時、演じることで観客を変えようとは思わない、誰かを変えるために演じるのは嫌だ、変えるなら銀行家や行政担当者を変えたいと、私立より下に見られる国立劇場の現状を語った。また、早くこの街を出たかった生徒は、今回の課題でストラスブールの街について調べることで、この街の複雑さを発見した。それぞれに考えを吐露していく中で、生徒同士で結婚するカップルはその報告をした。
衣装を運び込み三回目の即興劇は、大聖堂の仕掛け時計を思わせるものだった。
そして、夜明けまで踊り明かし、午前五時半、雑魚寝をしながら、劇をどうするのか、このまま続けるのか、明日にするのか、話し合いはまだ終わらない。授業があって来られないと言う生徒もいた。
明け方、眠る生徒たちの間に静かに流れる歌は、『良い知らせです』と繰り返す歌だった。
以上、映画「僕たちの舞台」のあらすじと結末でした。
僕たちの舞台のレビュー・考察:演劇学校の学生の一晩
ストラスブールの国立演劇学校での一晩の出来事。リーダーと思われる男性は一人いるけれど、彼らを指導する教員は一切出てこない。多少の年齢差はあれどそこに年功序列はなく、皆同じ目線で語り合う。もちろん議論が白熱し出口の見えない口論になることもある。それは、15人の誰しもが演劇を志した理由を秘めているからに他ならない。
アルザス地方にあるストラスブールはドイツと国境を接する、少し複雑な歴史を持つ街。文化的にもドイツと地続きだと思わせる部分が所々に散見する。合唱のシーンがその代表格かもしれない。アルザスはフランスの他の地域に比べて合唱が盛んで、彼らが歌う歌詞の中にはアルザス語が混じっている事が会話からも察する事ができる。
この一夜の後、彼らの舞台がどうなったかはわからない。けれど、演劇について、演じることについて、街について、テーマに沿って調べた事について、語る彼らの真剣さが強く印象に残る。
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