らしゃめんの紹介:1977年日本映画。鰐淵晴子のレコード「らしゃめん」を映画化。不幸な巡りあわせを懸命に生きた女性の悲哀を描く。没落士族の娘お雪は、借金のカタに居留中のアメリカ人に売られ「らしゃめん」となった。不幸を嘆くお雪の唯一の支えは、かつての恋人数馬の存在。彼が西洋医学を学んでいると知ったお雪は、自分を犠牲にして金を稼ぎ、匿名で援助をするようになる。
監督:牧口雄二 出演者:鰐淵晴子(神保雪)、橘麻紀(お園)、荻島真一(片桐数馬)、山田昌人(神保玄太郎)、ジョン・マギー(ロング公使)、ほか
映画「らしゃめん」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「らしゃめん」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「らしゃめん」解説
この解説記事には映画「らしゃめん」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
らしゃめんのネタバレあらすじ:売られた娘
舞台は明治7年の横浜。没落した士族の娘神保雪は、金貨1枚で身売りすることになります。父親は死亡し、弟の玄太郎は攘夷運動の際官憲に追われて行方不明。妹くみはまだ幼く、家の窮地を救うにはお雪の身売りしか方法がありませんでした。泣き伏す母親に見送られ、お雪は「らしゃめん」として西洋館に連れて行かれます。らしゃめんとは、居留中の西洋人に現地妻としてあてがわれる日本人女性のことで、「洋妾」などとも呼ばれています。西洋館に到着したお雪には、2人の世話係がつけられました。特に小間使いの和助はお雪に対し親身に接してくれます。しかし怯えるお雪は逃げようと暴れ出しました。そこに現れたのは、お雪を買ったアメリカ人ロング公使です。彼は片言の日本語で「怖がらないで」と声をかけ、お雪が心を開くまで無理強いしないことを約束しました。西洋館にはらしゃめん仲間となるお園も暮らしています。彼女は2年ほど前に、書記官スミスに買われたそうです。らしゃめん暮らしも悪くないと笑うお園に、お雪はどうしても笑顔を返せませんでした。
らしゃめんのネタバレあらすじ:辛い境遇
お雪はかつての恋人、片桐数馬のことを忘れられずにいます。初々しく清らかな恋を思い出し、西洋館の窓辺で物思いにふけるお雪。そこに妹くみの叫び声が響きます。くみはお雪に会うため無断で西洋館の敷地に侵入し、スミス書記官達にいたぶられようとしていました。お雪は慌てて庭へ走り、何とか助け出すことに成功します。くみは母親が寝たきりになっていることを話し、様子を見て欲しいと頼みました。お雪はロング公使に頼み込んで数日の休暇を貰います。翌日、早速西洋館の外に出たお雪でしたが、あっという間に群集に囲まれ石を投げられてしまいました。らしゃめんは売国奴として忌み嫌われていたのです。同行していた和助が懸命にお雪を庇いましたが、結局実家に戻ることは出来ませんでした。西洋館で過ごす内に、お雪は次第にロング公使に心を開いていきます。初めて抱かれた時こそ強引でしたが、紳士的なロング公使に好感を抱くお雪。そんな折、お園が別の男性と逢瀬を重ねていたことが明らかになります。お園は泣いて許しを乞いましたがスミス書記官は許さず、身一つで彼女を西洋館から追い出してしまいました。絶叫して門に縋り付くお園に、お雪は何もしてやれません。
らしゃめんのネタバレあらすじ:悲しい生きがい
ある日、攘夷運動を展開している日本人数名が西洋館に侵入、刀を手に襲撃を仕掛けました。お雪はその中に玄太郎の姿を見つけます。玄太郎は退却しながら、数馬は元気だと叫びました。その夜、お雪は突然ロング公使に別れを告げられます。大統領から帰国命令が出たそうです。お雪は一緒にアメリカへ連れて行って欲しいと頼みますが、ロング公使は妻子ある身なのでそれは叶いませんでした。ロング公使はお雪の幸せを願いますが、らしゃめんとなった女性は苛烈な差別を受けるのが当然の時代です。お雪は実家に戻ろうと考えますが、和助から母親が既に死亡していること、くみが地主に貰われていったことを聞かされ、帰る場所すら無いことにショックを受けました。和助を連れて墓参りに出かけたお雪。そこへ偶然数馬が現れます。咄嗟に隠れたお雪は、汚れた身の自分は二度と彼には会えないと泣き伏しました。しかし一方で、思いがけない支えを得ます。攘夷運動から離れた数馬は、西洋医学を学ぶため帝国大学に入っていました。そこでお雪は匿名で学資を寄付し、数馬を支えることを生きがいと定めます。
らしゃめんのネタバレあらすじ:歓喜と絶望
明治8年、東京新橋。お雪はキャバレーで歌を披露し生計を立てていました。女主人に脅され、男性客に体を差し出すこともあるお雪。地獄のような毎日で、数馬の存在だけが心の支えでした。お雪は稼ぎのほとんどを封筒に包んで和助に託し、大学まで届けて貰っています。そんなある日、お雪の前に血まみれの玄太郎が現れました。攘夷運動を続ける彼は官憲に追われ、瀕死の重傷を負っていたのです。お雪はキャバレーに玄太郎を運び、自首するよう説得しました。そこに官憲が駆けつけ、玄太郎はお雪の目の前で殺害されてしまいます。そして姉であるという理由だけでお雪も官憲に連行されました。激怒した女主人はお雪を解雇。またも居場所を失い、お雪は明治9年になると吉原の遊女に身を落としました。笑うことすら忘れてしまったお雪でしたが、数馬への援助だけは滞らず続けています。そんな折、同じく吉原に売られてきたお園と再会を果たしました。気の強いお園は、嫉妬する他の遊女達や、業突張りな女将からお雪を庇ってくれます。ある日、お雪がいつものように和助に金を託そうとすると、彼は笑顔でもう必要無いと言いました。和助が持参した新聞には、数馬がドイツへ留学したという記事が掲載されています。お雪は苦労が報われたと喜びました。部屋に戻り、1人で新聞を見つめていたお雪。その直後、彼女は血を吐いてしまいます。自分を犠牲にして働き続けた結果、お雪の体は病に蝕まれていました。あまりに残酷な運命に、お雪は泥酔して暴れ回ります。
らしゃめんの結末:お雪の死
明治10年の冬。お雪は起き上がることさえ辛くなっていました。女将は客を取れないならと、お雪を追い出してしまいます。その頃、和助は帰国して立派な医者になった数馬に会いに行っていました。そしてこの3年間、お雪がどんなに辛い目にあってきたか話します。せめて診察して欲しいと乞われ、数馬は大急ぎで吉原へ向かいました。しかし一歩遅く、吉原から出されたお雪は橋から身投げしてしまいます。お雪が目を覚ますと、そこは病院のベッドの上でした。傍らには数馬の姿があります。和助がくみを連れて病室を訪れ、姉妹は涙の再会を果たしました。弱り切ったか細い声で、「生きていてよかった」と伝えるお雪。病室に笑顔が溢れる中、診察した数馬だけは辛そうに拳を握りしめていました。お雪の病は、西洋医学でも手の施しようがないほど進行していたのです。廊下に出た和助は数馬に縋り付き、お雪を助けて欲しいと懇願しました。そして数馬の学資は、お雪が自分を犠牲にして捻出したものだと告白します。数馬が驚いていると、看護師が慌てた様子で呼びに来ました。2人が病室に戻ると、くみが目を閉じているお雪に縋り付いています。数馬が何度読んでも、お雪が目を開けることはありませんでした。お雪が静かに息を引き取り、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画らしゃめんのあらすじと結末でした。
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