ローリング・サンダーの紹介:1977年アメリカ映画。ベトナム戦争で過酷な捕虜生活を送り、心身に深い傷を負った帰還兵が、帰国後にメキシコ人強盗団に妻子を殺され自らも片腕を失い、かつての部下と共に復讐のために立ち上がるバイオレンスアクション映画です。
監督:ジョン・フリン 出演者:ウィリアム・ディヴェイン(チャールズ・レーン)、トミー・リー・ジョーンズ(ジョニー・ヴォーデン)、リンダ・ヘインズ(リンダ・フォルシェ)、ジェームズ・ベスト(テクサン)、ダブニー・コールマン(マックスウェル)ほか
映画「ローリング・サンダー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ローリング・サンダー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ローリング・サンダー」解説
この解説記事には映画「ローリング・サンダー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ローリングサンダーのネタバレあらすじ:起
1973年、アメリカ空軍将校チャールズ・レーン少佐(ウィリアム・ディヴェイン)と部下のジョニー・ヴォーデン伍長(トミー・リー・ジョーンズ)は、ベトナム戦争から8年ぶりに故郷テキサス州の小さな町へと帰還してきました。レーンとジョニーはベトナム・ハノイで7年間に渡る捕虜生活を送り、凄惨な拷問と屈辱により心身ともに深い傷を負っていました。やがてレーンとジョニーは地元の英雄として讃えられ、町を挙げての歓迎式典に臨みますが、地元住民の熱狂とは裏腹にレーンとジョニーの表情は冷めきっていました。
ローリングサンダーのネタバレあらすじ:承
レーンは久々に我が家に戻りますが、夫の生還を絶望視していた妻のジャネット(リサ・リチャーズ)は、夫の不在中に悪漢に襲われそうになったところを助けてくれた町の若い保安官クリフ(ローラソン・ドリスコル)と不倫関係にあり、戻ってくるなり離婚を迫ってきました。更に、出征時に生まれたばかりだった息子のマークもすっかりクリフになついてしまっており、もはや家庭にはレーンの居場所はありませんでした。しかし、レーンにとっては心の傷は想像以上に深く、もはややりきれないという感情すら湧かず無気力な表情をするのみでした。そんなある日、レーンが歓迎式典で授与された高価な銀貨を狙って、メキシコ人の強盗団がレーンの家に侵入してきました。
ローリングサンダーのネタバレあらすじ:転
レーンは強盗団には決して銀貨のありかは教えず、キッチンのシュレッダーで右腕を砕かれてしまいます。強盗団はレーンの妻子を殺害、銀貨を奪って逃走していきました。病院に運ばれたレーンは金属製の2本の爪をもつ義手を身に付け、強盗団への復讐を誓って懸命のリハビリに励みます。その後ようやく退院したレーンは、何かと世話を焼いてくれる酒場の女リンダ(リンダ・ヘインズ)の協力を得ながら独自に強盗団の足取りを追跡し、彼らの潜伏先がメキシコのエル・パソであることを突き止め、現地に向かいます。一方、極秘に事件を追っていたクリフは強盗団に捕まり、惨殺されてしまいます。
ローリングサンダーの結末
リンダを壮絶な抗争に巻き込むわけにはいかないと考えたレーンは、彼女が眠っている隙にモーテルを静かに発ち、現地でジョニーと合流します。ジョニーもまた平和な日常に馴染めていなかったのです。今後こそは負け戦にはしないと誓ったレーンとジョニーは武装してキャデラックに乗り込み、強盗団のアジトである売春宿に突入していきます。そして二人は売春婦が逃げ惑うなか、ショットガンをぶっ放して一味を次々と血祭りにあげていきます。二人は負傷しながらも、かつてのベトナムでの戦いの日々を思い出していました。そして強盗団を一人残らず皆殺しにした二人は、「さあ、家に帰ろうぜ」と戦場になった売春宿を後にしていきました。
あの究極のオタク監督クェンティン・タランティーノが、自らが主催する埋もれた映画の配給会社名にしてみたり、はたまた「イングロリアス・バスターズ」では、ブラッド・ピット扮するアルド・レイン中尉のその名前のルーツだったりするのが、この映画「ローリング・サンダー」だ。
「タクシー・ドライバー」でハリウッドのトップ・シナリオライターになったポール・シュレイダーのオリジナル脚本を、「組織」で注目されたジョン・フリンが監督したバイオレンス・アクションだ。
とはいえ、ストレートなエンターテインメント作品になっているわけではない。
その多くが、狂気を感じさせるストーリーを描いてきたポール・シュレイダーらしく、この作品の主人公、ヴェトナム帰還兵のチャールズ・レイン(ウィリアム・ディヴェイン)も登場した時から狂気がにじんでいる。
7年もの間、ヴェトナムで捕虜となっていたレインが、その時の仲間(トミー・リー・ジョーンズ)とともに故郷に帰ってくる。
ブラスバンドの演奏と市長たちの讃辞の言葉。
そして、妻と大きくなった息子。
そんな彼らに出迎えられたレインは、言葉少なに挨拶し、懐かしい我が家に。
ところが妻は、浮気を告白し、息子も本当の父親より、その浮気相手のほうを慕っている様子なのだ。
どうにか生還したものの、それを喜んでいる者はいない。
だが、問題なのは、そういう哀しむべきこと、怒るべき真実を突きつけられてもレインが何も感じてないというか、何も感じてないように見えるところだ。
レインを演じるウィリアム・ディヴェインは、常に口をへの字に曲げ、笑うこともなければ怒ることもない。
まるで感情をヴェトナムに置き忘れてきたかのように無表情。
唯一、生気を感じさせるのは、そのヴェトナムの捕虜時代を思い出す時だけなのだ。
そんな彼に再び不幸が襲い掛かる。戦争の英雄として贈られた銀貨を狙い、強盗団が侵入。
妻と息子を殺し、自分の腕もズタズタにされ、義手に変えられてしまったのだ。
それでも、表情を変えない彼はしかし、復讐を誓い旅に出る。
かつての仲間を招集し、かつてのように銃を構え、強盗団のいる場所に。
その時、初めて生き生きとした表情を見せるレインと仲間——-。
当時としては、過激なジョン・フリン監督らしいバイオレンス・シーン、無表情なのに雄弁に語りかけるウィリアム・ディヴェインの存在感、そして狂気と痛みと時代と社会を感じさせるポール・シュレイダーの秀逸な脚本。
この作品は、演出・演技・物語の3本柱がきちっと揃い、その化学反応によって、今なお優れたカルト映画として、映画史に残り続けているのだと思う。