サタンタンゴの紹介:1994年ハンガリー,ドイツ,スイス映画。絶望的な寒村に、死んだはずの男が帰ってくる。人々は男に希望を託すが…。ハンガリーの作家、クラスナホルカイ・ラースローの同名小説が原作。長回し撮影を多用し、「やつらがやって来るという知らせ」から「蜘蛛の仕事そのニ」にいたる前半の6章で時間を行きつ戻りつ複数の視点でイリミアーシュを待つ一日の出来事を描き、「イリミアーシュが演説をする」以降の後半の6章でイリミアーシュが戻ってきてからを描くが、円環的な物語であることが最後にわかる。ジム・ジャームッシュ、ガス・ヴァン・サント等に影響を与えた傑作でありながら、438分の超大作の日本での一般公開は4Kデジタル修復の済んだ2019年を待たなければならなかった。
監督:タル・ベーラ 共同監督:フラニツキー・アーグネシュ 出演者:ヴィーグ・ミハーイ(イリミアーシュ)、ホルヴァート・プチ(ペトリナ)、デルジ・ヤーノシュ(クラーネル)、セーケイ・B・ミクローシュ(フタキ)、ボーク・エリカ(エシュティケ)、ペーター・ベルリング(医師)ほか
映画「サタンタンゴ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「サタンタンゴ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
サタンタンゴの予告編 動画
映画「サタンタンゴ」解説
この解説記事には映画「サタンタンゴ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
サタンタンゴのネタバレあらすじ:やつらがやって来るという知らせ/ 我々は復活する
ハンガリーのある寒村で長雨の最初の日の朝、シュミットの家でシュミットの奥さんと寝ていたフタキは聞こえるはずのない鐘の音で目が覚めた。一番近い礼拝堂は8キロ離れているが塔は戦争で倒れ、鐘もなくなっていたから。
家々の壁は崩れ落ち、外は泥だらけ、住人の楽しみは酒とセックス、秋の長雨が始まると冬まで孤立してしまう経済的に破綻した村。家に帰って来たシュミットは妻に村人の金を持ち逃げする算段を話す。ところが、その朝、彼ら村人たちは1年半前に死んだはずのイリミアーシュが帰ってきたという驚くべき知らせを得る。
イリミアーシュと相棒のペトリナはその朝役所に召喚されていた。強風がゴミを吹き上げる道を通って役所に行き、仕事についていないことを警視から咎められる。私たちは法に従っているとうそぶく二人に、警視は自由と秩序をめぐる彼の思弁を語ってから、協力を求める。
村へ向かったイリミアーシュとペトリナにシャニが合流する。シャニが、イリミアーシュが死んだという噂を広めたのだった。
サタンタンゴのネタバレあらすじ:何かを知ること
村に住む肥満体で酒浸りの医者が双眼鏡で外をうかがっていた。ノートを取り出し、村人について記録する日記を書き始める。
酒がなくなり、医師は酒を買うために重い腰を上げる。いったん雨宿りした大きな建物の二階には顔見知りの、男たちを客にとって暮らしている二人の女がいた。雨の降りしきる夜道を歩き酒屋兼酒場の前に来た時、少女が「先生!」と呼び止める。少女を払いのけてしまったが気になって少女を追いかけるが追いつけない。林の中で力尽き、側の道を行く三人の人影に声をかけるが彼らは気づかずに行ってしまった。倒れていた医師を翌朝バスの車掌ケレメンが見つけ、馬車の荷台に乗せて運んでいく。
サタンタンゴのネタバレあらすじ:蜘蛛の仕事 その一/ ほころびる
酒屋に入って来たケレメンがイリミアーシュとペトリナが来るという話をする。多くの人が彼を見たと言う。ケレメン自身もイリミアーシュに抱きしめられ話をしたと語る。
その日少女エシュティケは母親が男を家に入れているので家に入れない。隣の建物で猫といっしょに雨風をしのいで過ごす。ところが「粗相をしたのね」と猫に言って猫をいじめ始める。ミルクに猫いらずをまぜて器に入れ、猫の顔を器にうずめると猫は動かなくなった。猫の亡骸を埋めようと林に行くと、その日少女の兄のシャニがカネの木が生えると騙して彼女のお金を埋めた場所が掘り返されている。兄に文句をつけても、俺が必要だから取ったんだと言われてしまう。
猫の亡骸をもって歩き続けるエシュティケは夜、酒場の外から、大人たちがアコーディオンの音楽に乗せてくるくると踊っているのを見る。そこへ現れた医師に「先生!」と呼びかけるが不機嫌な医師に追い払われて逃げる。翌朝、少女は廃墟でポケットから取り出した猫いらずを口に入れて、目をつぶって横になる。
サタンタンゴのネタバレあらすじ:蜘蛛の仕事そのニ(悪魔のオッパイ 悪魔のタンゴ)
酒場ではイリミアーシュの話でもちきりになる。店主は酔いつぶれたフタキを店の裏に連れていくが、イリミアーシュを待望するフタキたちへの怒りを叫ぶ。確かにかつてイリミアーシュが提案した玉ねぎ栽培で皆助かったのだが、それを恩に着せて彼は店の酒を二週間ただ飲みしたのだった。この国にもいつかは秩序が訪れると言う店主。
村人たちはやがてアコーディオンの伴奏に合わせて踊りを繰り返す。窓の外からのぞいているエシュティケには誰も気づかない。やがて奥のテーブルで静かにしていた元校長がシュミットの奥さんにダンスを申し込む。タンゴを踊りながら、あなたに粗野なシュミットはもったいない、私が校長に復職したらあなたを町に連れていくのにとくどく元校長。ケレメンは「俺の人生はタンゴだ! 母親は海で、父親は大地で…」と歌う。
サタンタンゴのネタバレあらすじ:イリミアーシュが演説をする/ 正面からの眺望/ 天国に行く?悪夢にうなされる?
エシュティケの遺体を囲んで村人が集まる。イリミアーシュが穏やかな口調で演説を始める。少女の悲劇について皆が罪びとであると説く。問題の根本的解決のためにこの村を捨て、見本農場を作ろうと説く。演説に感銘を受けたシュミット夫妻、クラーネル夫婦、元校長等の村人たちは一年働いてためたなけなしの金をイリミアーシュに預ける。
明朝6時にアルマーシ荘園に集合しましょうとイリミアーシュは宣言する。人々は荷物をまとめ、不要になった家具はジプシーのものにならぬように壊して雨の中アルマーシ荘園を目指して歩いていく。酒屋店主は行動を共にせず、医師は置いてけぼりになった。人々はアルマーシ荘園の寒くて大きな建物の中で希望を抱きながら一夜を過ごすが、同時に悪夢にうなされもした。
村人たちを口車に乗せて、イリミアーシュ、ペトリナ、シャニの三人は町へ向けて歩いていく。シュテイゲワルトの店に入ったイリミアーシュとペトリナはスープを注文して警視への報告書を作り始める。彼の誘いに乗った村人を警察のスパイに仕立てるのがイリミアーシュの計画だった。
サタンタンゴのネタバレあらすじ:裏からの眺望/ 悩みと仕事ばかり
翌朝、イリミアーシュが約束の時間に現れないので村人たちは騙されたのではと疑い始める。そこへ現れたイリミアーシュは見本農場の計画の無期延期を言う。この事業に不信を抱くものたちがいるからだ。そして当面村人たちが県内にばらばらに住み、この事業の敵について報告することを提案する。住みかと職場は世話すると言う。金を返せと言う者もいたが、結局、皆さんは偉大な事業に選ばれたのだとおだやかに言うイリミアーシュを信じることになり、トラックにのせられて町へ行く。人々はそれぞれ別の住みか、別の職場を与えられ、ある程度の資金を与えられて別れる。ただし、フタキだけはイリミアーシュの仕事と住みかの斡旋を受けずに去っていった。
計画に参加した村人についてのイリミアーシュによる露骨すぎたり文学的過ぎたりする報告書を二人の警官が書き換えて報告書の清書をタイプライターで打った。
サタンタンゴのネタバレあらすじ:輪は閉じる
医師は酒を買って家に戻る。13日間入院していた医師は村人たちの引っ越しに気づいていなかった。外に出て、「トルコ軍が来るぞ」とつぶやき続けながら礼拝堂で鐘を鳴らす男を見てから家に戻り、窓に戸板を打ち付け始める。真っ暗になった部屋で医師はノートに書き始める。「フタキは鐘の音を聞いて目を覚ました。一番近い礼拝堂は8キロも離れているが、そこには鐘がなかっただけでなく…」。
以上、映画「サタンタンゴ」のあらすじと結末でした。
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