カノンの紹介:1998年フランス映画。父娘の異様な関係を描いた「カルネ(1994年)」の続編。馬肉屋の父親が人生のあらゆる苦難に苛立ち、狂いながら娘を求めていくドラマ作品。パリを離れ、愛人と共に暮らし始めた肉屋は日々苛立ちを募らせていた。高慢な愛人、臭い姑、陰鬱な田舎、何もかもが気に入らない。ある時ついに怒りが爆発した肉屋は愛人を殴打して流産させ、逃げるようにパリに舞い戻った。しかし誰も彼を助けてくれる人はいない。肉屋は溺愛する一人娘シンシアを施設から連れ出した。シンシアをホテルに連れ込んだ肉屋は、破滅的な幻想に囚われながら娘の肉体に手を伸ばす。
監督:ギャスパー・ノエ 出演者:フィリップ・ナオン(肉屋)、ブランディーヌ・ルノワール(娘)、フランキー・バン(愛人)、マルティーヌ・オドラン(姑)、ジャン=フランソワ・ラウガー(不動産業者)、ほか
映画「カノン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「カノン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
カノンの予告編 動画
映画「カノン」解説
この解説記事には映画「カノン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
カノンのネタバレあらすじ:起・肉屋の半生
モラルとは何か?を男達が話し合っています。モラルなんてものは金持ちの戯言で、貧乏人は騙されるだけだと1人の男が言いました。彼は銃を取り出し、「俺のモラルだ」と見せつけます。モラルという名の法律、絶対の正義なのだと。
――これは全てのモラルに闘いを挑んだ元馬肉売りの物語。
肉屋は1939年パリで生まれました。41年に母親に捨てられ、孤児院で育ちます。14歳で精肉業界に入り、30歳でパリ郊外に店を開きました。若い女工を妊娠させ、一人娘シンシアをもうけます。妻が他の男と逃げた後、肉屋は1人で娘を育てました。
年頃になったシンシアの肉体に、やもめの肉屋は忍耐を強いられます。やがて初潮を迎えたシンシアはスカートを血で汚しました。それを見た肉屋は娘が強姦されたと思い込み、無関係の男を人違いで刺してしまいます。肉屋は傷害罪で刑務所に、シンシアは施設にそれぞれ送られました。
釈放後、肉屋は働いていたカフェの女主人を妊娠させます。彼女はカフェを売って、田舎で馬肉の店を開くと言いました。肉屋は承諾してシンシアに別れを告げ、翌朝愛人と一緒にパリを後にします。行き先は愛人の故郷、北の町リール郊外。彼女の実家に居候しながら、肉屋は店を開くための貸物件を探しました。
カノンのネタバレあらすじ:承・鬱屈した苛立ち
1980年1月3日。愛人はすっかり大きくなった腹を愛しそうに撫でています。欲求不満が見て取れる顔に、肉屋はうんざりしていました。愛人が金を出し渋ったため肉屋は自分の店を持てませんでした。
彼は仕方なく、老人病院の夜警の職に就きます。肉屋は何もかもに苛立ちを募らせていました。高慢な愛人も、臭い姑も、陰鬱な町も、全てが肉屋を苛立たせます。
3月18日、愛人と激しい口論になった肉屋は、ついに怒りを爆発させました。肉屋は愛人の腹を激しく殴打して流産させ、姑を脅して銃を入手します。家を飛び出した彼は、人生をやり直すためパリへ向かいました。
カノンのネタバレあらすじ:転・パリの現実
肉屋の所持金は僅かでした。しかしパリには友人もいるので、何とかなるだろうと考えます。15年前、妻とシンシアを「作った」安ホテルに滞在する肉屋。早速金策に走るも全て断られ、職探しも難航します。
肉屋はかつての取引相手だった畜殺所で雇って貰おうと考えました。しかし前科があることを理由に、言外に不採用を告げられます。怒りで沸騰しそうな頭でバーに行けば、マスターや他の客から馬鹿にされ追い払われてしまう始末。肉屋の頭の中は怒りと殺意でいっぱいです。
肉屋は銃を取り出し、弾が3発あることを確認しました。その3発で誰を殺すか考えます。畜殺所の所長、バーの親子、客、自分を馬鹿にした人間を次々頭の中で殺していきます。肉屋は最後に自殺しようと思いつきました。しかし、気がかりなのはシンシアです。口のきけない彼女がこの先1人で生きていけるとは思えません。
カノンの結末:狂っていく父親
肉屋は施設を訪ね、シンシアに会いに行きました。彼女は相変わらず何も喋らず、鈍い反応を見せる程度です。肉屋はエッフェル塔に連れて行くと施設の職員に説明し、シンシアを連れ出しました。しかし本当の行き先は、宿泊しているホテルです。
3月23日の昼頃。ホテルに連れ込んだシンシアは、この数ヵ月で随分変わったように見えました。美人で、良い体をしています。肉屋はシンシアを犯し、背後から彼女の首を撃ちました。倒れたシンシアは床の上で大量に出血しながら痙攣しています。なかなか絶命しないシンシアを見下ろし、肉屋は早く楽にしてやろうと頭を撃ち抜きました。
ピクリとも動かなくなったシンシア。肉屋は「俺は誰と話してる?」「誰が娘を殺した」「そいつを殺す」と思考が支離滅裂になっていきます。「俺は善人なんだ」「奴らが悪人だ」と狂っていく頭で考えた肉屋は、顎に銃を押し付け発砲し、自殺を遂げました。
肉屋ははっと正気を取り戻します。彼はとんでもない妄想をしていたようでした。犯されても殺されてもいないシンシアが窓辺に立っています。肉屋は、自分の人生は失敗だったと振り返りました。唯一の例外はシンシアの存在です。
肉屋はシンシアを抱きしめ「何よりも愛してる」と伝えました。泣き出す肉屋をシンシアも抱きしめます。肉屋はシンシアに何度もキスをして、彼女を抱きました。肉屋はようやく生きていく理由を見つけました。シンシアを守り、誰より幸せにすることです。
自分が女にしてやれば、きっとシンシアも幸せだと考える肉屋。人間にはモラルがあります。真実はたったひとつ。肉屋がシンシアへの愛を呟き、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「カノン」のあらすじと結末でした。
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