スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたちの紹介:2020年アメリカ映画。女優のスタントを担当するスタントウーマンたちに支えられ、多くの名作映画が世に送り出された。伝説の女性スタントたちのインタビューと共にアメリカ映画史を振り返る。
監督:エイプリル・ライト 出演:ミシェル・ロドリゲス、アリマ・ドージー、エイミー・ジョンストン、ジェイディ・デヴィッド、ジーニー・エッパー、ジュリー・アン・ジョンソン、ほか
映画「スタントウーマン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「スタントウーマン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたちの予告編 動画
映画「スタントウーマン」解説
この解説記事には映画「スタントウーマン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたちのネタバレあらすじ:起・陰には常にスタントウーマンがいる
女優にとって危険なアクションの代役を担うスタントウーマンがいる。70年代の男女同権論の影響で、女役はより強く速く危険になり、災害映画なども女性スタントを増やすきっかけになった。階段落ちや喧嘩のスタントなどは昔からあったが、男性が代役を務めることもままあった。
初期の映画では、女優達が安全策やスタントもないまま、危険な役を行っていた。1910年代のハリウッドでは、移民の女性などを雇う等、全盛期は女性に支えられ、女性監督も今よりも多かった。しかし撮影技術も今とは異なり、ものすごいスタントをやる女性は少数いたものの、見世物として扱われていた側面もあった。
やがて西海岸、ハリウッドで映画作りが盛んになると男性スターが集まり、スタントは男性が行っていた。この男女格差は、黒人と白人の格差にも同じことが起きており、男性が女装をしてスタントをしたり、白人が黒く塗りカツラをかぶり黒人のスタントをしていた。そして今なお、黒人女性にとって、スタントの道は十分に開かれているとは言えない、
スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたちのネタバレあらすじ:承・男性以上に必要とされる努力
女性スタントたちは、女優の代役をすべくトレーニングを欠かさない。それは柔道を始めとした格闘から、運転技術、スポーツ、ダンス等多岐にわたる。また女優のスタントは歩きにくい靴や動きずらい服装でのアクションが求められ、安全用のパットも映像に響かないように工夫をしなければならない。
さらに、代役をする女優と身体のサイズ・体型が似ている必要もあり、いわゆる女優体型が求められる。そしてその体型でアーノルド・シュワルツェネッガーに投げ飛ばされたり、『マトリックス」では俳優を後ろに乗せてバイクアクションをこなす。そのように女性は自分たちの実力と何度も証明し、一度のミスにも付きまとわれるわけにはいかない。
また、スタントマン協会には、「スタントマン」は女性とは無縁と言う理屈で入れず、黒人のスタントも入れなかった。そして女性を含めた黒人スタント協会の創立を経て、スタントウーマン協会も生まれた。仕事場で差別された黒人と女性の地位向上は連動していた。
そこから女性アクション作品『地上最強の美女たち!(チャーリーズ・エンジェル)』が生まれ、女性がアクション監督を務めるケースも出て来た。
スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたちのネタバレあらすじ:転・切り離せないリスク
単なる代役として容姿や演技を似せるだけでなく、内面からその女優になりきる工夫が求められる一方で、派手なスタントや危険なスタントがお金になるというのは、これからも変わらない。力頼みの男性スタントに対して、女性スタントは繊細さでその仕事に挑む。
積極的でタフでないと続けることができない。傷みが当たり前、ヘタをすれば一生治らない傷を負う事態もありうる。イメージのできないスタントには何か欠陥や危険がある時で、安全にスタントを行えない時や、命に関わるような恐怖を感じたら中止も考える。しかしその中止の判断は難しい。
監督のミスで、救急車で運ばれるまで危険性を実感できない場合や、最悪、命を失う場合もありうる。その監督からスタント役を守るのがアクション監督の役目となっている。
女性スタントのキャリアは尊重されてきているが、この業界は男性優位や人種差別、そして恐怖を払しょくするためにはびこる薬物の問題がまだ残っている。
スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたちの結末:女性スタントのこれから
家庭・結婚・子供の他に、泊りの仕事を断ったり、年齢を理由に採用されないことも、女性スタントではありうる。今でも、女性という事を理由にいらぬ心配をされたり、男女格差が残る男性社会で、女性のアクション監督も少ない。
数少ない女性監督の一人のメリッサは、企画段階からプレビズ(シミュレーション映像)を利用し、アクションを構成していく。繊細にじっくり考え、強引な事はしない。分析的で思慮深く考える彼女もまた、女性が良いアクション監督になれると世間にわからせるのはまだ難しいと語る。
それでも普通の人がやろうと思わないような事をやってのけるスタントの不屈の精神や、能力、大胆さは男性スタントも女性スタントも同じように持ち合わせている。女性スタントたちはプロとして、男性の持っている偏見を吹き飛ばしていく未来を切り開くたゆまぬ努力を今も続けている。
以上、映画「スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち」のあらすじと結末でした。
スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたちのレビュー・考察:男女同権と、実際
チャーリーズ・エンジェルが先駆けと言えるが、バイオハザード他、いわゆる「戦う女性」「強い女性」をメインにする映画作品がふえた。もちろんアクションシーンのすべてをスタントを使った吹き替えで行うわけではないとは思うが、女性のスタントは以前より必要とされているだろう。ただ、作中で触れられていたが、スタントをするために鍛えた身体を、代役をする女優に合わせてさらに絞るという点は、ハードルが一気に上がる気がした。ただ彼女たちの努力は映画として記録され、これからも映画史を彩って行くことだろう。
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