テレフォン(別題:チャールズ・ブロンソンの テレフォン)の紹介:1977年アメリカ映画。米ソ冷戦時代を舞台に、過激なスターリン主義を貫く元KGB諜報員の暴走を食い止めるべくアメリカに派遣された男女のKGB諜報員の半月間の暗闘を描いたアクション・サスペンス作品です。
監督:ドン・シーゲル 出演者:チャールズ・ブロンソン(グリゴーリ・ボルゾフ)、リー・レミック(バーバラ)、ドナルド・プレザンス(ニコライ・ダルチムスキー)、タイン・デイリー(ドロシー・パターマン)、アラン・バデル(マルチェンコ大佐)ほか
映画「テレフォン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「テレフォン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「テレフォン」解説
この解説記事には映画「テレフォン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
テレフォンのネタバレあらすじ:起
1月10日、ソ連・モスクワ。
とある閑静なアパートの中に、銃を手にした男たちが潜入していました。指揮を執るのはKGBのストレルスキー将軍(パトリック・マギー)と副官マルチェンコ大佐(アラン・バデル)、ニコライ・ダルチムスキー(ドナルド・プレザンス)を逮捕するのが目的でした。しかし、そこには既にダルチムスキーの姿はありませんでした。
1月17日、アメリカ・コロラド州デンバー。
高速道路沿いの自動車修理工場に電話が鳴り響きました。電話に出た店主のハリー・バスコム(ジョン・ミッチャム)は、そこでロバート・フロストの詩の一節「森は美しく、暗く、深い。しかし、誓いを果たして眠るまでの道は遠い…」を聞くなり、暗示にかけられたかのように隠し持っていた爆弾を車に積み込み、米軍基地に車ごと突入して兵士を射殺、車は基地を巻き込んで大爆発を起こしました。その様子を密かに見ていたのは、行方をくらましていたダルチムスキーでした。
テレフォンのネタバレあらすじ:承
1月18日、アメリカ・バージニア州ラングレーにあるCIA本部。
この2週間の間にソ連の極端なスターリン主義の主要人物が24人も不可解な死を遂げていることを知ったコンピュータープログラマーのドロシー・パターマン(タイン・デイリー)は、米軍基地爆破事件を追う副長官ハーレー・サンドバーグ(フランク・マース)にこの事を報告しました。そして、容疑者のバスコムは実は22年も前に死亡していることが明らかになりました。
1月20日、アメリカ・フロリダ州アパラチコーラ。
今度はヘリコプターでチャーター業を営む男のもとに、先日バスコムにかかったのと同じ内容の電話がかかってきました。男はヘリに爆弾を積んで海軍基地への体当りを試みましたが、ヘリは直前で撃墜されました。ダルチムスキーはこのニュースをテレビで見ており、作戦失敗に愕然としていました。
1月24日、モスクワ・KGB本部。
マルチェンコ大佐に召集されたグリゴーリ・ボルゾフ少佐(チャールズ・ブロンソン)は、アメリカでダルチムスキーが絡んだとされる一連の事件の説明を受けるとともにダルチムスキー暗殺を命じられました。
ダルチムスキーの手口とは、まだ米ソが冷戦だった頃、KGBにより洗脳された51人の工作員がアメリカに送り込まれ、死んだ人間に成りすまして標的付近に潜伏させ、フロストの詩を聞かされると行動を開始するという”テレフォン作戦“を悪用したものでした。しかし、冷戦が終結した今となっては、もはやテレフォン作戦は必要のないものに成り下がっていたのです。ボルゾフはこの51人の名や住所などを暗記するとアメリカへ向けて出発しました。
テレフォンのネタバレあらすじ:転
1月26日。カナダ・カルガリー空港に到着したボルゾフは現地工作員のバーバラ(リー・レミック)と合流、夫婦を装ってアメリカへと入国しました。
1月27日、アメリカ・ロサンゼルス。
ボルゾフらが情報召集を開始した矢先、国際電話局が神父によって爆発されたというニュースが舞い込んできました。実行犯の神父は重体のまま病院に搬送され、ボルゾフはバーバラに神父の入院先に向かうことを告げました。
1月28日。ボルゾフとバーバラは神父が入院しているサンタモニカの病院に医師と看護師を装って潜入、神父を殺害しました。
1月29日。モスクワのKGB本部はテレフォン作戦を存在自体抹消するため、作戦のことを知らないバーバラに任務完了後ボルゾフを抹殺するよう命じました。同じ頃、ニューメキシコ州ケンブリッジでまたしても米軍のロケット試射場が爆破される事件が発生しました。ボルゾフは、事件が起きた土地の頭文字がダルチムスキーのイニシャル順であることに気づき、次の文字はH=ヒューストンとみて現地に向かいました。
1月30日。ヒューストンに着いたボルゾフが次の標的を追っている頃、バーバラは密かにサンドバーグと連絡をとっていました。バーバラは実はCIAの二重スパイであり、サンドバーグからも任務完了後にボルゾフを始末するよう命じられました。その頃、次の標的は爆弾を車に乗せて走り出していましたが、途中で事故を起こして作戦は失敗、ダルチムスキーはそのまま逃走しました。
テレフォンの結末
1月30日。
ダルチムスキーの次の目的地はテキサス州ハルダーヴィル。現地に先回りしたボルゾフは、次の標的にフロストの詩を聞かせ、その人物が爆薬を用意したことから殺害しました。作戦を妨害されたダルチムスキーは電話ボックスでリストの人物に電話をかけようとしましたが、最後はボルゾフに追い詰められて殺害されました。
ボルゾフはリストを取り戻すと破り捨て、この時既にボルゾフと惹かれ合っていたバーバラは彼を殺すことができませんでした。バーバラはサンドバーグに電話をかけ、「ダルチムスキーは死んだ。これから私とボルゾフは足を洗って姿を消すから決して行方を探ろうとしないでね。KGBにも伝えているからね。もし探ったら工作員に電話をかけるからね」と脅しました。もちろんバーバラは電話をかける気など更々なく、ボルゾフとバーバラは車でいずこへと走り去っていきました。
この映画「テレフォン」—-、監督がドン・シーゲル、脚本がピーター・ハイアムズとスターリング・シリファント、そして主演がチャールズ・ブロンソンと、これだけの面子が揃ったら、そりゃあ、面白くないわけがありません。
とにかく、抜群に面白いサスペンス・ミステリー映画です。
ソ連のKGBの職員ダルチムスキー(ドナルド・プレザンス)が、「テレフォン名簿」というトップ・シークレットを盗み出し、アメリカに逃亡を図ります。
名簿には、54人のアメリカ人の氏名と電話番号が記されています。
かつての米ソの東西冷戦の時代に、ソ連政府によって拉致され、洗脳された後、母国アメリカに送り返された54人の市民たち。
「森は美しく、また暗く深い—-」で始まる、ロバート・フロストの詩を聞くと、潜在意識下に仕掛けられたスイッチがオンになり、彼らは指定された米軍基地を破壊する”人間兵器”に変貌するのです。
そして、KGBの予想通り、全米各地で謎の爆発事件が連続して発生しますが、それらは、ダルチムスキーが電話を使って”人間兵器”を一人づつ動かし始めたのです。
米ソの東西冷戦の時代は既に終わっており、このままでは事情を知らないアメリカ政府が、モスクワへの核攻撃で報復を開始する可能性もあり得るのです。
この事態を重く見たKGBの首脳の命令で、ボルゾフ少佐(チャールズ・ブロンソン)がアメリカに極秘裏に潜入し、在米の女スパイ、バーバラ(リー・レミック)と合流し、ダルチムスキーを追う事になるのです。
しかし、このバーバラは、CIAとも通じる二重スパイで、ボルゾフ暗殺指令を受けていたのです—-。
この映画でチャールズ・ブロンソンが演じる、アメリカの地理にやたらと精通しているソ連軍人という妙な役柄が抜群に面白く、「レッド・ブル」のアーノルド・シュワルツェネッガーや、「レッド・スコルピオン」のドルフ・ラングレンを軽くしのぐミスマッチさがご愛敬で、嬉しくなってしまいます。
おまけに驚異的な記憶力の持ち主という知的な役柄。
こんなブロンソンは、他ではなかなか見れません。
しかし、相棒のリー・レミックには指一本触れようともせず、やはりここでも、ブロンソンは実の奥さんのジル・アイアランド第一主義かと思わせてくれて、長年のブロンソン・ファンとしては、ニヤリとしてしまいます。
対するドナルド・プレザンスは、セリフがほとんどない役で、フロストの詩を電話口で囁くくらいなのですが、ベスト・パフォーマンスを見せてくれるのです。
遠隔地から電話をかければいいのに、わざわざ標的の家まで赴き、玄関前の公衆電話から指示を送るという間抜けさ。
しかも、サボタージュが成功するかどうかを自分の目で確かめ、自己満足に浸りたいがため、車で延々と”人間兵器”を追いかけ、ソワソワと、そして嬉々として、いつまでも事のなりゆきを見守っているという、この小心者ぶりが実にイカシているのです。
全面核戦争にも繋がる大胆な犯行に及んだのにもかかわらず、動機について、「彼は好戦的で、執着心が強い異常者だから—」としか、言われないあたりも、実にかわいそうな人なのです。
そんな小悪党なので、ブロンソンとの丁々発止の対決とはいかず、クライマックスは驚くほど、あっけないのです。
また、ブロンソンとレミックの絡みもひねりが不足しているという難点はあるのですが、しかし、そこはドン・シーゲル監督、そんな短所を補って余り有る、プログラムB級映画特有の、ふてぶてしさと痛快さをたっぷりと堪能出来る映画に仕上げていて、さすがだと思わせます。