点と線の紹介:1958年日本映画。博多郊外で起きた心中事件は実は官庁の汚職がらみの殺人事件なのでは?刑事たちが執念の捜査で完全犯罪に挑む。松本清張の最初の長編推理小説を映画化。清張作品を原作とする映画の中でも名作と言われるものの一つ。
監督:小林恒夫 出演者:高峰三枝子(安田亮子)、山形勲(安田辰郎)、南廣(三原紀一)、加藤嘉(鳥飼重太郎)、志村喬(笠井警部)、河野秋武(土屋刑事)他
映画「点と線」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「点と線」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
点と線の予告編 動画
映画「点と線」解説
この解説記事には映画「点と線」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
点と線のネタバレあらすじ:「心中」事件への疑問
10月21日、福岡県香椎海岸の岩の上に男女の死体が並んで見つかる。男は産工省の課長補佐・佐山、女は東京赤坂の料亭小雪の女中・お時。合意の上でジュースに溶かした青酸カリを飲んでの心中と誰もが思ったが、老刑事鳥飼は疑う。佐山は10月15日に一人で旅館に来て10月20日の晩に女性からの電話で旅館を出たことがわかる。彼は一人で博多に来たに違いない。
ところが、お時の同僚の女中で遺体を引き取りに来た八重子は、東京駅で10月14日お時と佐山が同じ特急に乗るのを見たことを鳥飼に話す。お時は熱海か浜松で途中下車したと考えられる。だがそれはなぜか?しかも、二人の仲を知っていた者は誰もいなかった。
点と線のネタバレあらすじ:東京から来た刑事
一カ月後、警視庁捜査二課の三原刑事は東福岡警察署へ向った。佐山は産工省汚職事件の鍵を握る人物だったからだ。鳥飼の案内で現場を調べる。佐山とお時らしい二人づれを見た男が国鉄香椎駅付近と、西鉄香椎駅付近にいた。
鳥飼は正義感の強い三原と意気投合する。「心中」の現場にいたもう一人の男がお時と佐山を殺したのではないかと三原は考える。
点と線のネタバレあらすじ:4分間の偶然
帰京した三原は八重子の証言について調べる。15番線の佐山とお時が乗る特急あさかぜの発車直前に4分間だけ、13番線の八重子から15番線を見わたすことができたことわかる。三原は八重子ともう一人の女中から、あの日、安田という男にお時が15番線にいることを教えられたということを聞きだす。三原は安田に会う。彼は機械工具を扱う会社を経営していた。
三原は安田の話にわざとらしさを感じるが、20日の晩に上野駅を立って北海道へ出張していたので心中事件の日にアリバイがあった。安田と別居して鎌倉に住む安田の妻、亮子を訪れた三原は、机の上の時刻表に目を留める。結核で療養中の彼女は日頃鉄道時刻表で孤独をまぎらわせていたのだった。
点と線のネタバレあらすじ:行き詰まる捜査
安田は産工省と取引を増やしつつあり、佐山の上司の石田部長と近しくしていたことがわかる。三原は土屋刑事と共に北海道へ行く。だが、安田のアリバイが補強されるばかりだった。
佐山とお時を殺してから飛行機で北海道に来たのではと考えたが、飛行機の乗客に安田という名はない。何より、青函連絡船の乗船名簿に安田の署名があった。係長の笠井は三原をはげまし続けるものの、捜査打ち切りが近づいていた。
点と線のネタバレあらすじ:真実に近づく
土屋刑事が起死回生の情報をもたらす。佐山の部下であった佐々木が石田部長、安田といっしょに北海道に出張していたことがわかる。ところが、彼の名は青函連絡船の乗船名簿になかった。三原たちは佐々木を取り調べる。
佐々木が自分の乗船名簿の代わりに安田の乗船名簿を連絡船に提出したこと、安田が偽名で東京-福岡-東京-北海道と飛行機で移動するために名義を貸す人を佐々木が集めたことがわかる。安田のアリバイは崩れる。福岡から来た鳥飼も捜査に加わる。国鉄香椎駅で目撃された男女と西鉄香椎駅で目撃された男女は別々の男女だった。安田の妻、亮子がお時と博多に同行したことがわかる。
点と線の結末:もう一組の男女の死
汚職の中心人物である石田部長にとって邪魔になった佐山をだまして心中に見せかけて殺すために、安田は自分の愛人のお時を利用した。妻の亮子は、夫の愛人を憎むあまり、お時を殺す計画に加担したのだろう。捜査が自分に迫り石田とも決裂した安田は、若い愛人を連れて逃げることにする。
だが、自分に容疑がかかっていることに気づいた亮子が鎌倉の家を出て阿佐ヶ谷の本宅に帰っていることを安田は予想していなかった。本宅を訪れた愛人と出くわした亮子は夫の裏切りを知る。帰宅した夫の飲むビールに青酸カリを混ぜ、夫が飲んだ残りのビールを飲む。三原たちが阿佐ヶ谷の家に着いたとき、既に二人は死んでいた。
以上、映画「点と線」のあらすじと結末でした。
「点と線」感想・レビュー
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考えが詰まると、堂々巡りするものです。飛行機は読者のほぼ全員が気づくことです。
本筋は乗船名簿のアリバイを崩すことと思う。 -
福岡市の香椎海岸で男女の心中死体が発見された。
二人の顔のあたりに小蟹がはっている。
地元の警察は、心中として片付けようとしたが、一人の刑事が心中する者が、こんな寂しいところで死ぬだろうかと疑問を抱いた。
その勘は正しく、通産省の役人の汚職と関連のある偽装殺人だった。時刻表を巧みに使った、松本清張の社会派推理小説の映画化で、警視庁の警部補役の南廣がいい味を出している。
容疑者が浮かび上がるが、これがなかなかしぶとい。
新興会社の社長(山形勲)と結核で療養中で、時刻表マニアのその妻(高峰三枝子)だ。アリバイ崩しの必死の捜査が続けられていく中で、犯罪を犯す者の悲しさが漂ってくる。
だが、壮絶な終幕は、それを打ち消す。
蟹がはいまわる風景を、繰り返し出して、荒れ果てた心象を伝えていたと思う。
45年前高校生の頃、没頭して読んでいましたが、途中でなぜ鳥飼刑事たちは石田が飛行機で北海道に行ったと思わないのかなあと思っていたら、ある個所で鳥飼刑事が階段を踏み外し身体が宙に浮いた瞬間に、もしや石田は飛行機を利用したのではないかと気づく描写があり、読んでいた私は、えーーっ、そんなんありなのっと椅子からずっこけた記憶があります。