幸せはパリでの紹介:1969年アメリカ映画。パーティーで知り合った中年の男女が真実の愛を見つけていくまでの様子を描いたロマンティックコメディ。アメリカの名優ジャック・レモンとフランスが生んだ大女優カトリーヌ・ドヌーブの共演が話題になりました。
監督:スチュアート・ローゼンバーグ 出演者:ジャック・レモン(ハワード・ブルーベイカー)、カトリーヌ・ドヌーブ(カトリーヌ・ガンサー)、ピーター・ローフォード(テッド・ガンサー)、シャルル・ボワイエ(アンドレ)、ジャック・ウェストン(ポッター・シュレーダー)、ほか
映画「幸せはパリで」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「幸せはパリで」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「幸せはパリで」解説
この解説記事には映画「幸せはパリで」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
幸せはパリでのネタバレあらすじ:起
舞台はニューヨーク。投資部長に昇進したサラリーマンのハワード・ブルーベイカーは、社長のガンサーが主催するパーティーに出席します。その場の雰囲気に馴染めず浮いてしまっているブルーベイカーを遠くから美しいフランス人女性が見守っています。彼女の名前はカトリーヌ、ガンサーの妻です。ブルーベイカーは社長夫人だとは知らず、軽い気持ちで彼女を飲みに誘います。そして二人はパーティー会場を飛び出すと、風変わりなクラブで飲み始めます。ブルーベイカーが正直に妻子持ちであることを打ち明けると、カトリーヌも既婚者であることを告白します。しかし彼女はどこか寂し気で、結婚生活への不満を漏らすのでした。妻が自分の部下と会っていることなど知らないガンサーは、電話でデートを楽しむようにブルーベイカーを激励します。妻には邪険にされカトリーヌとこのまま別れるのも名残惜しいブルーベイカーは、もう少し彼女との時間を楽しもうと街に繰り出すのでした。
幸せはパリでのネタバレあらすじ:承
別の店へと入った二人はダンスを楽しみます。ラウンジで居合わせた中年女性グレースはカトリーヌを一目見るなり星座や性格を的中させてみせます。さらに独占欲の強い今の夫との相性は最悪であり、誠実なブルーベイカーとならうまくやっていけるだろうと宣言されてしまうのでした。終電を逃したくないブルーベイカーはカトリーヌと別れ、帰宅しようとします。しかしのグレースの運転手が泥酔してしまったことから、ブルーベイカーが代わりにを彼女を自宅に送り届けることになってしまうのでした。グレースの住む豪邸へやってきたブルーベイカーとカトリーヌをグレースの夫アンドレが歓迎します。カトリーヌの結婚生活がうまくいっていないことを見抜いたグレースは、カトリーヌに未来を占うタロットカードを引かせます。騎士のカードを引き当てたカトリーヌは、目の前にいるブルーベイカーこそが運命の王子様かもしれないと思うのでした。庭園へ散歩に出たブルーベイカーとカトリーヌはキスを交わします。そして互いの結婚生活を忘れ、しばし二人だけの甘いひとときを過ごします。翌朝ブルーベイカーがカトリーヌを自宅まで送り届けると、離婚を決心したカトリーヌはパリへ帰ることを伝えます。ブルーベイカーは彼女を愛し始めていることを感じつつも別れを告げるのでした。
幸せはパリでのネタバレあらすじ:転
公園で感傷に浸るブルーベイカーは自分がカエルの王子様のようだと思いはじめます。そして優しくキスをしてくれたカトリーヌこそが、自分をカエルから王子様に変えてくれるお姫様なのだと感じ始めるのでした。オフィスへやってきたブルーベイカーは電話で妻に別れを切り出そうとしますが、忙しい妻は彼の話を聞こうともしません。カトリーヌとともにパリへ行くことを決意したブルーベイカーは、ガンサーに会社を辞職することを告げます。ガンサーはブルーベイカーの決断を諌めますが、彼の気持ちは変わりません。カトリーヌのマンションを訪れたブルーベイカーは彼女がガンサーの妻であることを知りますが、まったく動じませんでした。そしてブルーベイカーからカエルのぬいぐるみをプレゼントされたカトリーヌも彼への愛を再確認するのでした。カトリーヌは夫に離婚を切り出しますが、自分勝手な行動を激しく非難され取り合ってもらえません。ブルーベイカーは窮屈な結婚生活を捨ててカトリーヌと駆け落ちすることを友人の弁護士ポッターに話します。ポッターは一時の気の迷いで離婚を早まるなと説得しますが、ブルーベイカーは聞く耳をもちません。カトリーヌと空港で落ち合う約束をしたブルーベイカーは、妻と話し合うため自宅へと向かうのでした。
幸せはパリでの結末
カトリーヌは旅立つ準備を始めますが、未練を残すガンサーが必死に引き留めます。さらに妻に離婚を決意させた男がブルーベイカーであることを知って驚愕します。二人でやり直し、養子を育てようと提案するガンサーでしたが、カトリーヌの気持ちが変わることはないのでした。ブルーベイカーは愛のない結婚生活は終わりにしようと妻に離婚を切り出します。冷静な妻は取り乱すどころか離婚訴訟を起こすと冷たく宣言するのでした。空港に着いたカトリーヌは夫に別れを告げ、飛行機に乗り込みます。遅れてやってきたブルーベイカーも急いでゲートへ向かいます。その途中ガンサーに遭遇しますが、彼を振り切りなんとか愛するカトリーヌの元に辿り着くことができました。こうして二人はようやく真実の愛に手に入れたのでした。二人を乗せた飛行機はパリへと飛び立っていきます。
この「幸せはパリで」は、私の大好きな俳優ジャック・レモンとフランスの名女優カトリーヌ・ドヌーヴの共演による、大人のメルヘン的な素敵な恋物語。
この映画を観た感想を述べてみたいと思います。
ディオンヌ・ワーウィックのセンチメンタルで素敵な素敵な主題歌「The April Fools」。
いつまでも耳の奥に残って離れない、この名曲を聴くたびに、ジャック・レモンとカトリーヌ・ドヌーヴが主演した素敵なロマンティック・コメディー「幸せはパリで」を思い出します。
ジャック・レモン。言わずと知れた、ハリウッド映画界を代表する名優で、「アパートの鍵貸します」「あなただけ今晩は」「お熱い夜をあなたに」など、名匠ビリー・ワイルダー監督と組んで、市井に生きる小市民の哀歓とおかしさを滲ませる、シニカルでペーソスあふれるコメディーから、「セイヴ・ザ・タイガー」「チャイナ・シンドローム」「ミッシング」などの鬼気迫る、迫真の演技を見せるシリアス・ドラマまで、実に幅広く、そして奥深い演技力の持ち主だと思います。
カトリーヌ・ドヌーヴ。フランス映画界を代表する美人の演技派女優で、ジャック・ドゥミー監督の「シェルブールの雨傘」でブレークし、その後もロマン・ポランスキー監督の「反撥」、ルイス・ブニュエル監督の「昼顔」と、名匠監督の作品で演技派女優として開眼し、この映画の公開当時、アメリカで”世界一の美女”との称号を受けたほどでした。
共演者の一人がシャルル・ボワイエ。流暢なセリフと鋭い目力、粋なセンスで「うたかたの恋」や「歴史は夜作られる」などで多くの映画ファンを魅了した俳優でした。
そして、もうひとりの共演者がピーター・ローフォード。ディーン・マーティンやサミー・デービスJrなどと共に、フランク・シナトラ一家の一員で「オーシャンと11人の仲間」などに出演していて、一時期、ジョン・F・ケネディ大統領の妹のパトリシア・ケネディとも結婚したこともある上品でシャレた男優でした。
この映画は、ジャック・レモンとカトリーヌ・ドヌーヴという全く水と油のような二人の大物俳優の夢の顔合わせが実現した作品で、ジャック・レモンが得意のうだつのあがらないサラリーマン役に扮し、そんな彼があるパーティで目の覚めるような、カトリーヌ・ドヌーヴ扮するフランス美人と知り合い、いい仲になるのだが、なんと彼女は社長夫人だということがわかり、さあ大変——–。
ジャック・レモンは、自分を蛙に見立てて、それまでのふがいない自分から脱皮して、手の届かない王女のような存在のカトリーヌ・ドヌーヴへの愛を全うするために、全てを投げ捨てパリへと行くのだった——–。
こんな現実離れのした、夢のようなお伽噺の世界を描いたロマンティック・コメディーなのですが、ジャック・レモンとカトリーヌ・ドヌーヴの二人が演じることで、このお話は、その時点ですでにお伽噺の世界なんですよと我々に既に宣言しているわけで、観ている我々としては、その架空のお伽噺の世界にたっぷりと浸って酔いしれればいいわけです。
そして、この映画で最も意外だったのは、監督がスチュアート・ローゼンバーグだった事です。
ポール・ニューマンと組んだ「暴力脱獄」、ロバート・レッドフォードと組んだ「ブルベイカー」などの骨太の社会派映画や、ユダヤ人の悲劇を歴史の大きなうねりの中で描いた「さすらいの航海」などの優れた秀作を撮っていた彼が、まさかこのような軽妙なロマンティック・コメディーを撮るなんて、彼の多彩さに驚きましたね。