迷子の警察音楽隊の紹介:2007年イスラエル,フランス映画。イスラエルの地で迷子になったエジプトの警察楽団と、地元住民との心の交流を描くコメディ&ドラマ作品。エジプトのアレキサンドリア警察楽団は、文化交流のためにイスラエルに招かれた。しかし手違いで空港に迎えが現れず、痺れを切らした楽団は自力で目的地へ向かうことにした。ところが行き先を間違えてしまい、ホテルも無い辺境の町で迷子になってしまう。親切な地元住人の家で一泊させて貰うことになったが、言葉も宗教も違う彼らの間に流れる空気は重かった。静かに夜が更ける中、彼らは少しずつ心の内を吐露していく。
監督:エラン・コリリン 出演者:サッソン・ガーベイ(トゥフィーク)、ロニ・エルカベッツ(ディナ)、サレ・バクリ(カーレド)、カリファ・ナトゥール(シモン)、ルビ・モスコヴィッツ(イツィク)ほか
映画「迷子の警察音楽隊」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「迷子の警察音楽隊」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
迷子の警察音楽隊の予告編 動画
映画「迷子の警察音楽隊」解説
この解説記事には映画「迷子の警察音楽隊」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
迷子の警察音楽隊のネタバレあらすじ:致命的なミス
舞台は1990年代のイスラエル。エジプトのアレキサンドリア警察楽団は、それぞれの楽器を持って空港に降り立ちました。ベイト・ハティクヴァ市文化局から、アラブ文化センターの開所式で演奏して欲しいと招かれたのです。
しかし何か手違いがあったのか、いくら待っても迎えは現れませんでした。痺れを切らした団長のトゥフィークは、自力で目的地に向かうと言い出します。団員のシモンが大使館に連絡してみてはどうかと提案しますが、25年自力でやってきた楽団なのだからとトゥフィークは譲りませんでした。
シモンは団員のカーレドに、案内所でベイト・ハティクヴァへのバスを聞いてきてくれと頼みます。カーレドは気に入った女性がいれば所構わず声をかける男性で、案内所の女性に対してもチェット・ベイカーの曲を口ずさんでナンパしていました。トゥフィークは軽薄な行動の目立つカーレドに頭を抱えています。
案内所で教えて貰ったバスに揺られ、楽団はベイト・ハティクヴァに到着しました。しかしそこは見渡す限り何もない辺境の町です。楽団は困惑しつつも歩き出し、食堂を見つけて地元住民に道を尋ねました。店主のディナに事情を説明すると、楽団の目的地はベイト・ハティクヴァではなく、ペタハ・ティクヴァという別の町だろうと言われます。
正しく発音出来ないため、間違ってしまったようです。トゥフィークは帰国次第解雇するとカーレドに言い放ち、バス停へ歩き出しました。カーレドは意固地なトゥフィークに不満を持っています。カーレドを始め多くの団員が空腹を訴えたため、楽団はディナの食堂に戻って食事することにしました。
迷子の警察音楽隊のネタバレあらすじ:思わぬ厚意
食事を終えた団員は、それぞれ思い思いの方法で休息を取ります。シモンは店先でクラリネットを吹き始めました。店の常連客イツィクがじっと聴いていましたが、途中で演奏を止めてしまいます。吹いていたのはシモンが作曲している協奏曲なのですが、長いこと完成に至っていませんでした。
ディナはトゥフィークに声をかけ、もう今日中のバスは無いこと、この辺りにはホテルも無いことを教えます。演奏は明日の夕方だと聞いたディナは、自分の部屋とイツィクの家、そして店に寝泊りしているパピという男性の部屋に分散して一泊してはどうかと提案しました。トゥフィークは迷いますが、結局ディナの厚意に甘えることにします。
トゥフィークはカーレドと一緒に、ディナのアパートで世話になることになりました。ディナは現在独身で、1人暮らしだそうです。ディナは町の案内がてら、近くの店にトゥフィークを誘いました。トゥフィークは断ろうとしますが、女性の誘いを断るなとカーレドに言われ、仕方なく外出します。
客の少ない店内で、トゥフィークは客からじろじろ見られつつディナと会話しました。伝統的な楽団なので、アラブの古い音楽を演奏していると話すトゥフィーク。何故警察がそんなことをしているのかと尋ねられ、彼は音楽が人に大事にされなくなったことを寂しそうに指摘しました。
少しして、店内に家族連れがやって来ます。一家の父親はディナと度々浮気していました。ディナは余裕の表情を崩さず、トゥフィークを連れて店を出ます。その後公園のベンチに座った2人は、トゥフィークの趣味である釣りについて話しました。会話は弾みましたが、家族の話になるとトゥフィークは気まずそうに言葉を濁してしまいます。
迷子の警察音楽隊のネタバレあらすじ:それぞれの夜
シモンは2人の団員と一緒に、イツィクの家で世話になっていました。しかし会話は全く盛り上がらず、イツィク達の夫婦喧嘩まで始まってしまう始末です。イツィクは気を取り直したように、シモンが協奏曲を作曲していることを家族に話しました。
シモンは警察学校を出てすぐ書き始めたものの、妻の妊娠で忙しくなってからずっと止まっていると話します。イツィクにも産まれたばかりの子どもがいました。にも拘らず、もう1年近く失業中だとイツィクの妻は厳しい声で言います。シモンがクラリネットを吹いてみるものの、空気はますます重くなっていきました。
一方、カーレドはディナの家を出て食堂に向かっていました。店の前でパピにばったり会った彼は、遊びに出かけると聞いて強引に同行します。パピは友人からユリアという女性を紹介されますが、全く好みのタイプではありませんでした。
クラブで彼女に誘われても、嫌がって強く手を振りほどいてしまいます。その拍子にユリアが転んでしまい、カーレドはデート慣れしていないのかと呆れました。パピは女性に会うと混乱するのだと言い訳します。カーレドはパピに、泣いているユリアの慰め方を指南しました。その甲斐あって、パピとユリアはキスまでする仲に発展します。
迷子の警察音楽隊のネタバレあらすじ:夜の語らい
シモンはイツィクの部屋へ行き、迷惑をかけてすまないと謝罪しました。夫婦喧嘩は毎日だとイツィクが力なく笑います。2人は穏やかに眠る赤ん坊を見つめました。するとイツィクが突然、協奏曲のラストはふいに静まる感じにしてはどうかと言い出します。
盛り上げるのではなく、小部屋に赤ん坊が眠り、深い寂しさがある、そういうイメージの曲にしてはどうかと。シモンは赤ん坊のオルゴールを鳴らしました。その優しい音に耳を傾けながら、シモンは何か思いついたように目を開きます。
一方、トゥフィークとディナはアパート前まで戻って来ていました。ディナは昔よくエジプト映画を観たと話し、今夜は映画の再現のようだと笑います。同時に、自分では物語が台無しだとも言いました。
トゥフィークはディナに亡き妻子のことを話します。トゥフィークの一人息子はとても賢い子でしたが、誤ちを犯した時トゥフィークはきつく叱りつけました。妻に似て、繊細で傷つきやすい子だと理解していなかったのです。息子は自ら命を絶ち、嘆き悲しんだ妻も後を追うように亡くなりました。
ディナには子どもがいません。機会を逸したのだと彼女は言います。とても良い女性なのに残念だとトゥフィークが言うと、ディナは少し涙ぐみました。そこへカーレドも合流し、3人で部屋に戻ります。
迷子の警察音楽隊の結末:静かな別れ
カーレドは、ディナにチェット・ベイカーを知っているか尋ねました。彼女が知らないと答えると、自分は好きだとトゥフィークが言います。
トゥフィークのリクエストで、カーレドがトランペットを吹きました。ディナからワインを勧められたトゥフィークは、もう遅いからと断ります。そしてカーレドの肩を叩き、1人で眠りに就きました。
夜中、ふいに起きたトゥフィークはディナとカーレドのセックスを目撃します。翌朝、楽団はディナの食堂の前に整列しました。トゥフィークはディナに礼を言います。2人は別れ難く見つめ合いますが、互いにさよならと告げました。
楽団は無事アラブ文化センターに到着し、演奏を始めます。トゥフィークの歌声が響く中、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「迷子の警察音楽隊」のあらすじと結末でした。
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