眼下の敵の紹介:1957年アメリカ映画。西大西洋を警戒中のアメリカ海軍所属の駆逐艦はUボート1隻を補足する。そのUボートは特別任務を帯びており、その為変えられぬ航路に縛られながら駆逐艦を相対する。海上と海中、2国2隻の戦闘艦、そして2人の艦長が知力の限りを尽くし、その死力を振り絞り対決する、第2次世界戦を舞台にした戦争映画。
監督:ディック・パウエル 出演者:マレル艦長(ロバート・ミッチャム)、軍医(ラッセル・コリンズ)、ウェア副長(デヴィット・ヘディスン)、シュトベルク艦長(クルト・ユルゲンス)、ハイニ先任士官(セオドア・ビケル)
映画「眼下の敵」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「眼下の敵」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
眼下の敵の予告編 動画
映画「眼下の敵」解説
この解説記事には映画「眼下の敵」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
眼下の敵のネタバレあらすじ:起
嵐の西大西洋を航行中のアメリカ軍所属駆逐艦ヘインズ乗組員の間では、新艦長マレルに対する話で持ち切りでした。未だ艦長室から出て来ない彼を、船酔いする素人と揶揄する声もありました。士官には、副長ウェアの昇進を口にするものも居ましたが、ウェアは自分その格がないと謙遜します。軍医は、マレルが前に乗り込んでいた船が魚雷攻撃で撃沈され、漂流した経験がある事を知っていたので心配していました。
翌日、レーダーが艦影を拾います。その報告は直ぐにマレルへ行われますが、彼は無警戒に真っ直ぐ追跡するよう指示を出しました。艦の速度が上がり、水兵達は騒然としてレーダー室に押し掛けます。それを押し退け前に出ようとした人物がいたので水兵達が文句言おうとしますが、それが艦長だと知り慌てて敬礼しました。レーダー手は速度の速い漁船かもしれないと報告しますが、マレルは戦闘態勢を指示します。
その追跡を受ける船Uボート側でも、追尾する艦影を確認しました。マレルは指揮所に上がります。ウェアは指示に関して彼に説明を求めます。マレルは敵ならばこちらの動きを確認する筈だから、波の誤反応だと思わせると説明します。そのUボートは彼の思惑通り、一度進路を変更し駆逐艦の様子を確認します。マレルは停止を指示、Uボートが進路を戻したので欺瞞に成功したと判断、司令部へ報告、総員に気を抜くなと檄を打ちます。
Uボート艦長シュトベルクは、総統に忠誠をという標語に白い目を向け、党員の新任少尉に指揮所を任せます。彼は長年苦楽を共にしたハイニを部屋に呼び、今回の任務である情報部員との洋上での合流、そして今、次大戦の虚しさを語ります。シュトベルクは前大戦も経験してきましたが、戦死した息子達、正確性が増したが機械的で人間味が薄れた戦闘等、道理が捻じ曲げられ先が見えないと虚しさを口にし、眠りに就きます。
マレルは、爆雷装填の時間短縮等を指示し、ウェアに後を任せ一旦船室に戻ります。軍医は彼の体調を診て、問題がないと太鼓判を押します。前職は貨物船船長だったマレルは、その船が魚雷攻撃で撃沈された事により、攻撃をする側に回ったと軍医に零します。戦争がもたらすものは破壊だけだと悲観的な事を言います。それに対して軍医は、破壊の後にも未来がある筈と希望を口にします。マレルは貨物船と共に家族も失っていました。しかし戦争に個人的な感情は挟まないとも言います。
眼下の敵のネタバレあらすじ:承
駆逐艦はUボートを完全に捕らえ、それを知ったUボートは慌てて潜航します。マレルは艦の速度を落とさせます。士官達は敵の攻撃を受けると騒然としますが、マレルの狙いは艦尾の魚雷を使わせる事でした。彼は、Uボートが発射まで10分程だろうと予測します。Uボートでは、戦闘準備が整えられました。
シュトベルクは、駆逐艦が回避行動を取らない事に疑問を感じます。相手が利口なのか馬鹿なのか図りかねるがすぐに判ると、彼は艦尾の魚雷装填を命じます。駆逐艦側では攻撃に備え緊張が漂います。Uボートはシュトベルクの指示に従い、魚雷を設定、発射しました。マレルは時計を見て、転進、速度の増加を指示します。魚雷が向かってくるのが確認されましたがすべて外れました。
マレルの手腕に水兵達が感心する中、反撃の指示が飛びます。シュトベルクは爆発音がない事で魚雷が回避されたと判断します。駆逐艦ではソナーを使い、Uボートの正確な深度を確認します。シュトベルクは敢えて何もせず、まず現在の深度で爆雷を装填させる時間を与えます。駆逐艦は爆雷の起爆深度を設定、それが見えているかのようにシュトベルクは潜航を指示します。標的の深度が変わった事で爆雷の起爆深度が再設定され、投下されます。
その時、水兵の一人が爆雷とレールに挟まれ、指を切断してしまいました。爆雷が起こす水柱をよそに、水兵は医務室へ運ばれていきます。攻撃を受けるUボートにも緊張が走りますが、艦長は冷静にデコイを放出、相手の感知能力を乱し、深度を上げて逃走に移ります。Uボートは上下擦れ違うように駆逐艦の下を抜け、駆逐艦を撒きます。
マレルは探査を中止を指示します。しかし彼は、Uボートが元に進路に戻ると踏んで、次の邂逅チャンスを探ります。シュトベルクは、駆逐艦を一旦撒きはしましたが、慎重に次の行動を判断します。マレルは怪我をした水兵を見舞い、再設定を急がせた事を詫びます。水兵は次の寄港で除隊する事になりますが、彼の職業は時計技師でした。顔を曇らせるマレルに後を引き受けると軍医が言うので彼はその場を後にします。
マレルは司令部から増援の駆逐艦が3隻向かっている事、そしてUボートの目的は、洋上で味方と合流することにあると報告を受けます。マレルはウェアに増援を待つかどうか助言を求めます。ウェアが運に任せましょうと言ってくれたので、彼は戦闘配置の維持を命じます。Uボートでは進路を戻すかどうか、シュトベルクが悩んでいました。
コックが配るスープを飲んでいると、少尉が先ほどの戦闘は総統も喜ぶと賛辞を送ってきます。しかし、その言葉を聞いてシュトベルクは苛立ちます。Uボートは進路を戻し後方を確認しますが、そこに駆逐艦を見て慌てて潜航します。攻撃を受けたシュトベルクは海底に着底し、やり過ごす事を決断します。しかしその深度は艦の限界をわずかに越えていました。
駆逐艦は再びUボートを見失います。マレルは海底までの距離を聞き、無理だろうという説明を聞きながらもそこにいると判断します。マレルはゆっくりと速度を落とし、遠ざかったかのように見せかけUボートが動き出すのを待ちます。それはシュトベルクも同じで、音が消えた事で去ったとも思えましたが慎重に時間を掛ける事を選択しました。
眼下の敵のネタバレあらすじ:転
海上の駆逐艦、海中のUボート、水兵達は緊張を紛らわせる為に思い思いに時間を過ごします。暑さに気を使う軍医は、マレルに塩パレットを差し出し逃げたのではと聞きます。マレルはそれを受け取り、まだ居る筈だと確信していました。彼のUボート艦長への評価は高く、撃沈を考えているだろうと思い、任務が無ければとっくに撒かれていると言います。ですがどんな人物かは知りたくないとも言います。
合流への時間が押し迫っているシュトベルクは、音を抑えながら移動を決断します。駆逐艦はそれを察知し、追撃を開始しました。シュトベルクは、十分時間を掛けて潜伏したのにまだ居る駆逐艦艦長の忍耐力を悪魔だと評価し、撒くか撃沈か悩み始めます。マレルは爆雷の残りは少ないが増援が近付いている事を有利と考え、断続的に攻撃を仕掛け時間稼ぎを行い、敵の神経戦を取ります。
その作戦は図に当たり、Uボートでは精神の休まる間が与えられず、ストレスで潜航中の艦から出ようと暴れる者も出ました。シュトベルクは、その水兵を死ぬのも任務の一部だと諌め、だがまだ死なないと自分への信頼を確かめさせます。しかし、部下の士気が下がっているのは目に見えていました。シュトベルクはレコードを取り出し、戦意高揚の為にボリュームを最大にし、部下達に歌わせます。駆逐艦にその歌声が聞えてきていました。
ウェアは神経戦が失敗かと首を傾げますが、マレルはその効果を実感、しかし逆に戦意を高め裏目に出たと感じます。マレルは更に盛り上げてやろうと攻撃を続行します。その攻撃はUボートに少なからずダメージを与えました。それを見てもマレルは慎重に追い込んで行きます。追い詰められたUボートですが、シュトベルクは駆逐艦の攻撃、回避にパターンがある事を読み、その隙を突いてありったけの魚雷で攻撃する事を決断します。
眼下の敵の結末
マレルは嵐で増援が遅れる事を知り、攻撃を強めます。シュトベルクはその攻撃後の回避行動を見計らい、魚雷を斉射します。駆逐艦はそれを避け切れず一撃受けてしまいます。駆逐艦は浸水が始まり沈没は避けられませんでした。マレルは敵の油断を誘う為、被害を大きく見せるよう指示を出し、最低限の人員を残し退艦を命じます。シュトベルクは潜望鏡で戦果を確認、止めを刺す事を決断します。
Uボートが浮上し、マレルは敵が餌に食いついたのを喜びます。シュトベルクは5分の退艦猶予を与えました。マレルはそれに感謝すると信号を返しながらも横腹を見せたら砲撃しろと命じます。駆逐艦の退艦は順調に進み、油断したUボートは併走を始めました。そこに駆逐艦からの砲撃が浴びせられます。Uボートも致命傷を負い、シュトベルクは自沈を命じました。
マレルが突撃を命じ、駆逐艦はUボートに乗り上げ停止しました。マレルは残りの乗組員も退艦させます。その眼下、シュトベルクが見えました。Uボートでも退艦が始まり、自爆装置がセットされます。しかしその装置をセットしたハイニが出てきませんでした。シュトベルクは艦内に戻り、事故に合った彼を助け出します。
外に出たシュトベルクですがハイニは動けず、見下ろすマレルに敬礼をします。マレルは退艦しようとしますが思い直し、ロープをUボートに投げました。そのロープを使い、シュトベルクはハイニを連れ奪取を図ります。マレルもそれに手を貸し、更には先に脱出した両艦の乗組員達が手伝います。彼等が十分離れた頃、Uボートが自爆、駆逐艦も沈んでいきました。
増援に来たアメリカ駆逐艦の上で、アメリカ軍も参加したハイニの水葬が執り行われます。シュトベルクはやるせない顔でハイニを送りました。それに立ち会った軍医はマレルに、この戦闘で破壊の後の再生、その希望を見たと言います。マレルは、黄昏るシュトベルクに煙草を差し出します。シュトベルクは受け取り、死にそうな目に遭ったが生き残れたと言います。マレルはもうロープは投げないぞと宣言しますが、シュトベルクはまた投げるさと笑みを浮かべました。
以上、映画「眼下の敵」のあらすじと結末でした。
「眼下の敵」感想・レビュー
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ロバート・ミッチャムがアメリカ軍の駆逐艦長になり、クルト・ユルゲンスがドイツ軍の潜水艦長に扮して、壮烈な一騎打ちを演じた「眼下の敵」は、武士道的な友愛精神をまともに描いた作品だ。
唄うスター出身のディック・パウエル監督による作品だが、戦闘というものを徹底的にスポーツ風に扱っている点が興味深く、ミッチャム・キャプテンとユルゲンス・キャプテンが知恵を絞って作戦を練り、虚々実々の戦いを繰り広げるプロセスが、スリリングに描き出されていたと思う。
両軍とも実力はほぼ互角なので、思うように得点を稼げない。まず、アメリカ駆逐艦は、さかんに爆雷を落としてドイツ軍を悩ませ、こまかく点を稼いでいく。これに対して、ドイツ潜水艦が水中深く潜って行方をくらまし、ひそかに脱出のチャンスを狙うあたりは、見事なサスペンスの盛り上がりを見せている。
そして、両方の艦はエンジンを止めて、それぞれ相手の気配をうかがうのだが、その”不気味な静寂”が画面いっぱいに広がってくると、観ている方は、思わずかたずをのまずにはいられない。
この膠着状態を打破するために、ドイツ軍は反撃に乗り出し、魚雷を駆逐艦の胴体にぶっつけるのです。こうして、アメリカ軍はピンチに陥るが、ミッチャム・キャプテンのとっさの機転で、米軍は駆逐艦をドイツ潜水艦に体当たりさせて共倒れ—-。
この両軍の戦いは、あくまでもフェア・プレーで行なわれ、ミッチャムは敵のキャプテンのユルゲンスを救助したり、ユルゲンスはミッチャムに敬意を表したり、お互いに相手の武勲を褒め合ってかたい握手を交わす。
この作品では、二人の好演が見物であり、ミッチャム・ファンはアメリカ軍側に、ユルゲンス・ファンはドイツ軍の応援をというような作り方だから、まるで野球かサッカーの手に汗握る、面白い試合を観ているような気分なのだ。
したがって、戦争の残虐さなど、どこにも見あたらないが、川中島合戦での越後の上杉謙信と甲斐の武田信玄との一騎打ちを彷彿とさせるような、”古武士的な友愛精神”が、爽快に表現されていたように思う。
それにしても、こんなにスカッとした戦争映画も非常に珍しいと思う。
敵同士でさえ尊敬の対象となる。それを教えてくれた映画でした。駆逐艦の艦長は部下からその能力を疑われていたものの、いざ敵であるUボートと接触して以来、本職に劣らない不屈の闘志で水面下の敵に挑みます。片やUボートの艦長は歴戦の勇士であり、部下も一丸となって頭上の敵に挑もうとしています。まさに男の世界ですね。現在では時代遅れとなった爆雷攻撃の際に攻撃する側もされる側も、必死に相手の次の手を読もうと躍起となる姿はこの映画の見せ所です。見事な心理戦でした。しかしこの持久戦もUボートの魚雷攻撃を受けた駆逐艦は致命傷を負い、沈没はもはや時間の問題となった時、相討ち覚悟で駆逐艦は艦長の命令一下、欺瞞工作を施した上で、相手が止めを刺しに来るだろうと予測し、砲撃戦の準備をして待ち受けました。勝利を確信したUボートは艦砲射撃で相手を屠るために浮上して来るのですが、予想外の反撃を受けてこちらも致命傷を負うのです。そしてついに両艦長が合いまみえることになりました。Uボートの艦長は脱出の遅れた部下を救うために退艦の時期を失し窮地に陥っていましたがそこへ思わぬ救いの手が差し伸べられました。それは駆逐艦の艦長が投げた救命ロープでした。敵味方を越えた、人間としての尊い行動でした。そしてお互い死力を尽くした人間のみが得られる友情にも似た共感が画面に溢れ出ていました。両艦は海の藻屑となり、やがて両者はアメリカの駆逐艦に収容されますが死者を葬る儀式にはもはや敵も味方も無い、海の男の無念さとその愛情しかありませんでした。素晴らしい場面です。勝敗は決したものの勝者も捕虜も無い、戦士同士の姿で締めくくられたのも実に善かった。次はロープは投げない。いや、君は投げるさ。短いやり取りに両人の想いが込められていました。相手の姿さえ見ることのなくなった現代の戦闘では考えられませんが、男の想いとはこのようなものでしたね。