ウェールズの山の紹介:1995年イギリス映画。第一次世界大戦中、イギリスのウェールズ地方にある小さな村を、軍の測量技師が訪れる。村人が心の拠り所としている山を測量し、「丘」と認定。地元の心意気をかけて村人がとった行動とは?
監督: クリストファー・モンガー 出演者:ヒュー・グラント、タラ・フィッツジェラルド、コルム・ミーニイ、イアン・マクナイスほか
映画「ウェールズの山」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ウェールズの山」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ウェールズの山」解説
この解説記事には映画「ウェールズの山」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ウェールズの山のネタバレあらすじ:「おらが村の意地」にかけて丘を増築して山にする物語
イギリスのウェールズ地方にある小さな村を、軍事地図作成を担う測量技師が訪れ、村人が心の拠り所としている山を測量し、「丘」と認定。普段は自然の恵みを受け取り、緊急時には身を隠したり闘いの拠点としたりする、地域の拠り所を「丘」と言われて村人は動揺します。誇りを取り戻すためには国の基準の高さまで山を増築するしかない、と話し合い、バケツや荷車で土を運んで丘を増築。数日間で「山」の称号を確かなものにする、という物語です。
ウェールズの山のネタバレあらすじ:日本に例えていえば沖縄の首里城
表面的に観ていると村人の必死な思いが理解しにくいのですが、日本史に例えて考えると、心を揺さぶられます。日本史でいえば「太平洋戦争中、沖縄戦が終わったばかりの那覇に、軍の測量官が防衛拠点把握を目的に訪れる。首里城を測量し、保存状態に鑑みて邸宅と認定。沖縄戦で物理的にも心理的にも大きな傷を負った地元民が、心の拠り所を守ろうと、必死に城を修復して城としての認定を勝ち取る」という物語に例えられるでしょう。
ウェールズの山のネタバレあらすじ:中央政府の戦に巻き込まれて傷ついた地元の心を立て直す
まず、イギリスは多民族国家であるという歴史的な背景があります。琉球王国が薩摩藩に侵略され維新後に沖縄県として日本に取り込まれたように、舞台となるウェールズはイングランドに併合された歴史があります。作品の舞台となっている時代は第一次世界大戦中。この戦争はヨーロッパが初めて経験する総力戦でした。今まで軍人だけが展開していた戦争と違い、多くの一般人が前線や軍事工場などに駆り出され、前線でも銃後でも、人々が大量破壊兵器の脅威にさらされました。作中の村の人々としては、中央のイングランドが始めた戦に巻き込まれ、多くの若者が戦争に取られ地域が傷ついたと感じているわけです。こうした地域性、時代背景を考えると、傷ついた心を立て直そうとする村人の気持ちが痛いほど伝わってきます。
ウェールズの山のネタバレあらすじ:のどかな描写で、回想形式を用いて表現
こんな辛い背景を秘めた物語ですが、表現のトーンはのどかです。おじいちゃんが孫に思い出を語って聞かせる、という回想シーンから始まり、のどかな村のできごととして物語が進みます。登場人物の会話やナレーションにもユーモアが感じられます。村人のキャラクターも多彩で、不真面目な人や消極的な人も魅力的に描かれています。音楽にも悲壮感はありません。押しつけがましくない表現が、かえって見る人の共感を呼ぶ演出です。
この映画の感想を投稿する