五人の軍隊(別題:列車襲撃大作戦)の紹介:1969年イタリア映画。革命下のメキシコを舞台にしたマカロニ・ウェスタンです。大量の砂金を積載したメキシコ軍の列車強奪を企む五人の強者たちがメキシコ革命に巻き込まれていく様を描きます。日本からは五人の使用人物のひとりとして丹波哲郎が出演しています。
監督:ドン・テイラー 出演者:ピーター・グレイブス(ダッチマン)、バッド・スペンサー(メシト)、ニーノ・カステルヌオーヴォ(ルイス)、ジェームズ・デイリー(オーガスタス)、丹波哲郎(サムライ)、ダニエラ・ジョルダーノ(マリア)、クラウディオ・ゴーラ(マヌエル)ほか
映画「五人の軍隊」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「五人の軍隊」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
五人の軍隊の予告編 動画
映画「五人の軍隊」解説
この解説記事には映画「五人の軍隊」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
五人の軍隊のネタバレあらすじ:起
革命時代のメキシコ。元サーカス団の曲芸師ルイス(ニーノ・カステルヌオーヴォ)は犯罪者としてメキシコ政府軍から追われる身でした。ルイスは雇い主のダッチマン(ピーター・グレイブス)から報酬1000ドルの仕事を持ちかけられ、各地を渡り歩いてダッチマンのかつての仕事仲間たちをかき集めました。
ルイスはこうして集めた怪力が自慢の元列車強盗メシト(バッド・スペンサー)、ダイナマイトを操る爆破のプロフェッショナルのオーガスタス(ジェームズ・デイリー)、剣の達人である東洋人のサムライ(丹波哲郎)と共にダッチマンとの待ち合わせの村へと辿り着きました。
ところが、村では政府軍による革命派の村人の処刑が執行されようとしており、ダッチマンと合流したルイスたちは政府軍の処刑部隊を急襲して村人を助け、人々から歓迎されました。
ルイスら四人はダッチマンから仕事の内容を聞かされました。それは、政府軍の軍資金である50万ドル相当の砂金を積載した貨物列車を襲撃して砂金を奪い、五人の分け前分を差し引いた砂金を革命派に資金として提供するというものでした。
ただ列車には多数の兵士が大砲や機関銃を備えて厳重体制で護衛しており、更には列車の走る路線の各所にも兵士が配置されていることから、メシトたちは無謀な計画だと躊躇しました。しかし、ダッチマンは様々なスキルを持つこの五人なら計画は必ず成功すると考えており、村人たちの協力を得て作戦を実行することにしました。
村人のひとりである若い女性マリア(ダニエラ・ジョルダーノ)はサムライにほのかな想いを抱きましたが、サムライはその想いに気付こうとはしませんでした。
五人の軍隊のネタバレあらすじ:承
その夜、ダッチマンたちは突然押しかけてきた政府軍に捕らえられ、革命派との繋がりについて尋問されました。しかし、ダッチマンらは決して口を割らず、政府軍は見せしめとしてルイスを処刑することにしました。ところが、牢に入れられたルイスたちの前にマリアが現れ、密かにサムライにナイフを差し入れました。
五人はこのナイフで拘束から逃れると牢から抜け出して爆薬庫を襲撃、この爆薬で部隊を壊滅させて脱出することに成功しました。しかし、ダッチマンらはこれ以上村人たちを危険に晒すわけにはいかないと判断、マリアたちと離れて行動することにしました。
五人は革命派の協力を得ながら政府軍の追っ手を逃れ、ようやく列車が通る路線まで辿り着きました。五人は列車が砂金を積みに向かうのを目撃すると、列車が砂金を積んで戻ってくる3日後までに準備を開始しました。五人は政府軍からトラックと軍服を奪い、列車から切り離した砂金運搬車を分離させるためのレールを作りました。オーガスタスは爆発音を極力抑えた特殊な爆弾作りに着手しました。
五人の軍隊のネタバレあらすじ:転
全ての準備が整った頃、いよいよ獲物の列車が近づいてきました。ダッチマンらはレール切り替え作業を担当するメシトを残して政府軍に紛れ込み、まんまと停車中の列車に潜入しました。ルイスとサムライは予め用意していたパチンコで次々と兵士を倒し、大砲と機関銃のある車両を制圧しました。
ダッチマンは機関車を制圧、計画は順調に進んでいるかのように見えましたが、サムライは列車から転落してしまいます。それでもサムライは全速力で列車に追い付きましたが、今度はオーガスタスが用意した爆弾2個のうち1個を紛失してしまいます。それでもダッチマンのアイデアで残った爆弾を有効に使い、何とか車両を切り離すことに成功しました。
そしてメシトは背後に政府軍が近づくなか、辛うじてレールの切り替えに成功、こうして五人は砂金を積んだ車両を奪うことに成功、砂金をトラックに乗せて村人たちが待つ村へと向かいました。ところが、いざ砂金を山分けしようとしたその時、突然ルイスが裏切り、砂金を独り占めにしようとしました。
ダッチマンは断固として報酬以外の砂金は渡さないと告げ、この砂金は予定通り革命派に引き渡すと宣言しました。
五人の軍隊の結末
ダッチマンはこれまで決して語られることのなかった自らの過去を語り始めました。それは、数年前に故郷を追われたダッチマンがメキシコの人々に助けられ、妻を娶って幸せな日々を過ごしていた頃でした。その時、突然政府軍が革命派を弾圧し始め、それにより妻を失っていたのです。
ところが、語り終えたダッチマンらの元に政府軍が近づいてきました。五人は物陰に隠れて政府軍に銃弾を浴びせ、全滅させることに成功しましたが、五人は砂金を巡って対決しました。
その時、村の周囲に多数の革命派が現れ、五人が砂金を奪ってくれたことに歓喜の声を上げました。これにはさすがに五人は苦笑いするしかなく、結局全ての報酬を諦めることにしました。
サムライの元にはマリアが駆け付けて再会を喜び合い、五人は村人や革命派から英雄として担ぎ上げられました。
以上、映画「五人の軍隊」のあらすじと結末でした。
この「五人の軍隊」は、殺しと流血の暴力描写で全世界で一大ブームを巻き起こした、マカロニ・ウエスタンの痛快娯楽作ですね。
イタリア製西部劇の”マカロニ・ウエスタン”は、まがいもの、殺しと流血の暴力礼讃映画だと言われながら、本場のアメリカ映画界において、正当派の西部劇が衰退していく中で、その存在価値を全世界に広めていったのです。
映画は娯楽で、ましてや、それが西部劇ならば、派手なドンパチに残酷のスパイスをたっぷりふりかけたマカロニ・ウエスタンは、イタリア映画の重要な海外マーケットである中近東や南米、アフリカ諸国の他、本場のアメリカにまで拡散し、この国の貴重な外貨獲得の手段になったのだった。
そして、商売になるとわかったら、なりふりかまわず突き進む、イタリア通俗娯楽映画の真骨頂がここにあるのだと思います。
アメリカで言うところの、”スパゲッティ・ウエスタン”という言葉には、もの珍しさと蔑称のニュアンスが込められている気がしてならないのだが、アメリカも、その存在をもはや無視できなくなってきたことは時代の流れ、趨勢でもあったのだろう。
「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」などのマカロニ・ウスタンを撮った、セルジオ・レオーネという世界的に通用するマカロニ・ウエスタンの監督が誕生し、この監督がクリント・イーストウッドやロッド・スタイガーやチャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーンといった本場アメリカの有名俳優たちを次々と起用し、作品も興行的に成功したことから、このイタリア製西部劇のマカロニ・ウエスタンは、単なるイミテーションから、それ自体のものとして認められたとも言えるのだ。
こうして、1960年代後半から1970年代初期にかけて、アメリカは進んでマカロニ・ウエスタンを買い付け、その英語版を世界に配給し、あるいは資本を投下して製作に関わっていくことになる。ロケ地は、スペインの荒野や山岳丘陵地帯、スタッフ、キャストにイタリア人やスペイン人を使うという按配だ。
これは、日本におけるマカロニ・ウエスタンの配給が、それまでもっぱら、東宝東和や日本ヘラルドといった邦人系の配給業者によっていたものが、1970年を境にアメリカのメジャー会社にとって代わられていくことでも如実にうかがえる。
もちろん、もうひとつの背景としては、日本側が香港映画の活劇、カンフー映画などへ、その買い付け方針を変更していったということもあるが、1970年代以降の日本公開のマカロニ・ウエスタンは、その大半がアメリカのメジャーの配給会社によるものであることは注目していいように思われます。
アメリカは過去にもすでに、やはりイタリア映画に資本投下をして、史劇を送り出したことがあるが、かくて歴史は繰り返されていくのだ。
そして、出演者たちも、もうハリウッドで食いっぱぐれたセコハン・スターたちではなくなり、現役の人気も知名度もあるスターが駆り出され、作品のセールス・ポイントになっていく。こうして、マカロニ・ウエスタンのアメリカ化、国際化が始まっていったのだ。
さて、この「五人の軍隊」は、「サスペリア」などのイタリアの鬼才監督・ダリオ・アルジェントが脚本に参加している一編だが、MGMの配給で監督はアメリカの俳優出身で「荒野の愚連隊」や「第十七捕虜収容所」などに出演し、その後、監督に転じて「新・猿の惑星」や「オーメン2/ダミアン」や「ファイナル・カウントダウン」を監督したドン・テイラー。
そして、出演俳優は、TVの人気ドラマ「スパイ大作戦」のリーダー、フェルプス役で有名なピーター・グレイブス、ジェームズ・ダリー、バッド・スペンサー、ニーノ・カステルヌオーボ、そしてわが日本の丹波哲郎。
丹波哲郎の外国映画への出演は「太陽にかける橋」「第七の暁」「007は二度死ぬ」に次いで4本目の出演作になる。
物語は、この五人が、メキシコに列車で運ばれてくる砂金を奪い、革命軍に寄与するというもので、リーダーのダッチマン(ピーター・グレイブス)に報酬1,000ドルで雇われる”サムライ”(丹波哲郎)は、剣と手裏剣の名手、ジェームズ・ダリーは、爆薬専門の脱走兵、バッド・スペンサーは、牛泥棒にして鉄道の線路の操作がうまく、ニーノ・カステルヌオーボは、身の軽さが身上というプロたち。
各々がそれぞれ特技を持っているのは、「荒野の七人」にもみられるように、この種の映画のお約束のパターンになっている。
五人は革命の闘士を処刑しようとしていた兵隊たちを皆殺しにしたり、いったんは捕まるものの、村娘の機転で脱走に成功し、列車を奇襲して目的を達するのだ。ここで、四人は砂金を分けようとするが、ダッチマンの阻止と彼らを革命の英雄と持ち上げる村人の歓呼に、あっさりと砂金はおろか報酬金まで彼らに提供してしまうのだ。
これはいかにも”アメリカ映画”的で、こんなことは初期から黄金期のマカロニ・ウエスタンでは考えられない行為である。
この作品の公開が、1969年であることから、マカロニ・ウエスタンの変質がうかがえると思います。
尚、メキシコの将校役として、ジャコモ・ロッシ・スツアルトが顔を出しているのは拾いもので、丹波哲郎は「野獣暁に死す」の仲代達矢に続いて、イタリア西部劇に出演した二番目の日本人スターということになり、”サムライ”という役名で、無口な役柄で刀を振りかざしての活躍はまさに、”日本人ここに在り”を示していたと思います。