怒りの葡萄の紹介:1940年アメリカ映画。ジョン・スタインベックの代表作の映画化。撮影監督グレッグ・トーランドによるドキュメンタリーのようなモノクロ撮影が絶賛を浴びた。ジョン・フォードが2度目のアカデミー賞監督賞を受賞。
監督:ジョン・フォード 出演:ヘンリー・フォンダ(トム・ジョード)、ジェーン・ダーウェル(トムの母)、ジョン・キャラダイン、チャーリー・グレープウィン、ドリス・ボードン、ほか
映画「怒りの葡萄」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「怒りの葡萄」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「怒りの葡萄」解説
この解説記事には映画「怒りの葡萄」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
怒りの葡萄のネタバレあらすじ:起
オクラホマの寂しい田舎道を1人の男が歩いてきます。彼の名前はトム・ジョード。幸い、雑貨屋の前に止まっていたトラックに乗せてもらうことが出来ました。運転手に聞かれるまま、自分が殺人罪で刑務所にいたことを答えます。トラックを降りた場所からしばらく歩くと、知り合いのケーシーという元牧師と出会います。彼と一緒に自分の家族の住んでいた農園へ歩いてゆくトム。しかし、そこは誰も住んでいる気配がありません。家に入るとそこに隠れている男がいました。この近辺で農業をやっていたミューリィです。彼によると、このあたりの農家は皆立ち退きを強いられ、トムの一家も伯父の家に厄介になっているとの事。トムが伯父の家にゆくと幸い一家は無事でいました。
怒りの葡萄のネタバレあらすじ:承
翌朝に一家はオンボロのトラックに家財一切を積み込んでカリフォルニアに向けて出発。身寄りのないケーシーも一緒にゆきます。出発間もなく、祖父が心臓病で他界。仕方なく、家族たちは彼を路傍に埋めます。金も足りなくなり、ろくに食事もできません。そしてカリフォルニアから出てきた人間によると、行ってもいい仕事は見つからないとの事なのです。それでも一家の目的地はそこだけ。カリフォルニアに入るところで祖母まで死にました。
怒りの葡萄のネタバレあらすじ:転
やっと一家は移民キャンプに到着。貧しい人でごった返しています。そこでは保安官が彼ら貧民を虐待していて、平気で彼らに銃を向けたりします。結局はそこを離れ、一家は別の場所へ。人手を求めている農場を見つけた一家。さっそくそこへ腰を落ち着け、安い賃金で桃の取り入れ作業をやります。しかし、そこで売っている食べ物は高いため、手元には現金が残りません。食事のあと、散歩に出るトム。ケーシーがストを計画している農民たちと一緒にいるところに出くわします。やがて農園の管理側の手がまわってケーシーは殺され、トムはその男を殺してしまいます。
怒りの葡萄の結末
一家はトムを匿って農園を脱出。そして国営のキャンプにたどり着きます。そこでは今までと違って生活も快適ですが、周りの民営農場の経営者たちが安い労働力確保のためそこを襲おうとします。この計画を未然に防ぐトム。さらに彼は皆への迷惑を避けるため、キャンプを立ち去ります。
翌朝になって綿を摘む作業に出発する一家。しかし仕事はありません。さらに仕事を求めてトラックは走ってゆきます。
「怒りの葡萄」感想・レビュー
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この映画「怒りの葡萄」は、文豪ジョン・スタインベックのピューリッツァー賞受賞の小説を、ジョン・フォードが監督した作品だ。
凶作と資本主義の歪みの中で、たくましく生きるアメリカ農民の姿を描き、アメリカ映画の新境地を開いた、社会派リアリズム・ドラマの名作だと思う。
名カメラマン、グレッグ・トーランドによる際立ったモノクロ映像と、ジョン・フォード監督ならではの力強いタッチで、1930年代のアメリカの小作農の惨状を、見事に浮き彫りにしている。
仮出所で刑務所を出て、4年ぶりに故郷のオクラホマの農場に帰ってきた、ヘンリー・フォンダ扮するトム・ジョード。
そこで彼が見たのは、荒れ果てた大地と飢えに苦しむ農民たちの姿だった。久し振りに再会したトムの家族も同じ有様だったが、母親のマアのたくましさのおかげで、貧しいながらも元気でいた。
だが、土地はすでに人手にわたっていた。そこで、ジョード一家は、オンボロ車でカリフォルニアへと向かう。
だが、希望の土地カリフォルニアで彼らを待っていたのは——-。トムに洗礼を授けた、元説教師のジョン・キャラダイン扮するケイシーは「自分達はただ一生懸命素直に生きたいと思っているだけなんだ」と、みんなに説く。
そして彼が、暴徒に殺された後は、トムがその気持ちを引き継いでいくことになる。最初に殺されたケイシーは、いわばキリストであり、そうして、その教えを守っていくキリストの使徒を演じたのがトムではないかという気がします。
この映画は、未曽有の不況の時代において、キリストに対するひとつの気持ちのすがりまでも描いた作品だと思う。
土地を追い出され、期待したカリフォルニアでの生活はもっとひどく、地主の搾取で奴隷同然で働かされ、行くあてもない家族に心が痛む。
トムは労働者の団結を決意し一人離れるけど、残された家族たちはまた期待し、仕事を求めて最初に戻るのを繰り返すようなラストに絶望した。
ケーシーの言ってる事は深いと感じた。