キングダム/見えざる敵の紹介:2007年アメリカ映画。1996年6月26日のホバル・タワー爆破事件、2003年5月12日のリヤド居住区爆破事件というサウジアラビアで発生したテロ事件をモチーフにした社会派サスペンス映画です。サウジアラビアの外国人居住区爆破事件を捜査するためにアメリカから派遣されたFBI捜査官たちは現地警察と手を組み、国際テロ組織が関与する事件の命がけの捜査に挑んでいきます。
監督:ピーター・バーグ 出演者: ジェイミー・フォックス(ロナルド・フルーリー)、ジェニファー・ガーナー(ジャネット・メイズ)、クリス・クーパー(グラント・サイクス)、ジェイソン・ベイトマン(アダム・レビット)、アシュラフ・バルフム(アル・ガージー大佐)、アリ・スリマン(ハイサム軍曹)、ジェレミー・ピヴェン(デーモン・シュミット)、リチャード・ジェンキンス(ロバート・グレイスFBI長官)、フランシス・フィッシャー(エレイン・フラワー記者)、ダニー・ヒューストン(ギデオン・ヤング司法長官)、カイル・チャンドラー(フラン)ほか
映画「キングダム/見えざる敵」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「キングダム/見えざる敵」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
キングダム/見えざる敵の予告編 動画
映画「キングダム/見えざる敵」解説
この解説記事には映画「キングダム/見えざる敵」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
キングダム/見えざる敵のネタバレあらすじ:起
サウジアラビアの首都リヤドのアル・ラマー外国人居住区では、石油会社の社員一家たちが平和な日々を過ごしていました。
そんなある日、警官隊を装ったテロリスト集団が外国人居住区を襲撃、銃を乱射して多くの死傷者が出ました。テロ集団はさらに自爆テロを仕掛け、現地にいたFBI捜査官のフラン(カイル・チャンドラー)は、ワシントンD.C.で小学校の父母参観日の最中であった同僚のロナルド・フルーリー捜査官(ジェイミー・フォックス)に電話を入れて助けを求めましたが、その直後にフランは命を落としてしまいました。このテロ事件による死者は100人以上、負傷者は200人以上に上りました。
FBIワシントン・オフィスでは、法医学調査官のジャネット・メイズ(ジェニファー・ガーナー)、爆発物専門家のグラント・サイクス(クリス・クーパー)、情報分析官のアダム・レビット(ジェイソン・ベイトマン)らによる事件の分析が行われていました。
フルーリーはFBI長官ロバート・グレイス(リチャード・ジェンキンス)やメイズと共に捜査官をリヤドに派遣する許可をギデオン・ヤング司法長官(ダニー・ヒューストン)に要請しましたが、テロの要因がサウジアラビアにいるアメリカ人であるとの認識から要請は受け入れられませんでした。
そこでフルーリーは知人でワシントンポスト紙事件記者のエレイン・フラワー(フランシス・フィッシャー)の協力でサウジアラビア大使に面会することに成功、サウジアラビア王室の寄付金がテロ組織に流れているとの疑惑で大使館に揺さぶりをかけ、サウジアラビア側からFBI捜査チームの受け入れを認めさせることに成功しました。
キングダム/見えざる敵のネタバレあらすじ:承
FBIはリーダーのフルーリー、メイズ、サイクス、レビットからなる捜査チームの派遣を決定、5日間の期限付きで彼らをサウジアラビアに向かわせました。一方、サウジアラビアでは、テロ事件で犯人を射殺した地元警察のハイサム軍曹(アリ・スリマン)が国家警備隊のアブドゥルマリク将軍(マフムード・サイード)から犯人グループへの関与を疑われて尋問されていました。
その一方で、ハイサムの上司であるアル・ガージー大佐(アシュラフ・バルフム)はアフマド・ビン・ハーリド王子 (オマル・ベルドゥーニ)からFBI捜査官一行の警護を命じられました。テロ事件の捜査はアブドゥルマリクが担うことになり、アル・ガージーはアブドゥルマリクは適任ではないと訴えましたが却下されました。
サウジアラビアに到着したフルーリー一行はアル・ガージー大佐(アシュラフ・バルフム)の出迎えを受けました。フルーリーらは事件の首謀者はアルカイダの一員であるアブ・ハムザ(ヘズィ・シッディーク)の可能性が高いのではないかと探りを入れますが、明確な答えは返ってきませんでした。
翌日、フルーリー一行は事件現場を訪れました。フルーリーらの世話役を命じられたアメリカ大使館首席公使のデーモン・シュミット(ジェレミー・ピヴェン)は一行をビン・ハーリド王子に紹介しますが、フルーリーらに帰国するよう促してきました。
このまま引き下がるつもりのないフルーリーたちでしたが、「証拠品に触らない」「イスラム教徒の遺体に触れない」「アル・ガージーの前で質問を行う」などといった様々な制約を課されたがために思うように捜査は進まず、フルーリーは苛立ちを募らせていきました。その一方でサイクスは爆破地点から起爆装置とみられる破片を回収していました。
キングダム/見えざる敵のネタバレあらすじ:転
インターネット上に犯行時の映像がアップされ、フルーリーはアル・ガージーに頼んで映像が撮影されたとみられる付近のビルの捜査に乗り出しました。
その夜、フルーリーらはビン・ハーリド王子の夕食会に招かれ、現場で見つけた起爆装置をアル・ガージーの手柄として王子にその操作能力の高さを認めさせました。フルーリーらは王子から全面協力の確約を得、捜査範囲も広げられて思い通りの捜査をすることができるようになりました。
メイズは遺体に付着していた証拠品の中からビー玉のようなものを発見、サイクスは犯行に使われた車両がファハド国王病院から盗まれた救急車であることを突き止めました。フルーリーはアル・ガージーの手引きでかつてビンラディンに味方し、今では恩赦されて社会奉仕活動に従事している人物の元を訪れました。
フルーリーはその人物から、起爆装置はアメリカ軍の物であり、特定の人物しか入手できない代物であることを教えられますが、入手した人物の手がかりまでは得られませんでした。しかし、入念な捜査の過程で首謀者はやはりアブ・ハムザである可能性が高まりました。
救急車が盗まれた病院には自爆犯の兄弟が勤めていることが判明、アル・ガージーらは兄弟の家を襲撃して殺害しました。しかし、首謀者の特定にまでは至らず、フルーリーにとってはこれで事件が解決したとは到底思えなかったのですが、とうとう期日が来てしまったため帰国せざるを得ませんでした。
キングダム/見えざる敵の結末
フルーリー一行は帰国するため空港へ向かいましたが、途中でテロリストの襲撃に遭い、レビットを連れ去られてしまいました。フルーリーらはテロリストの後を追ってアジトのビルに突入、激しい銃撃戦の末にレビットを救出しました。
その際、メイズはビル近くの子供を怖がらせてしまったお詫びとしてキャンディーを渡し、引き換えに子供からビー玉を渡されました。それは遺体に付着していた物と同じ物でした。
アル・ガージーはビル近くにアブ・ハムザ本人がいることに気づきましたが、近くにいた青年に撃たれてしまいました。フルーリーはアブ・ハムザと青年を射殺しましたが、アル・ガージーは帰らぬ人となってしまいました。
フルーリーはアル・ガージーの息子の元を訪れ、父は勇敢な人物だったと称えました。その後、フルーリー一行はハイサムに別れを告げて帰国、グレイス長官から労いの言葉をかけられました。フルーリーはフランの死を悲しむメイズに、必ずテロリストを皆殺しにすると誓いの言葉をかけました。一方、アブ・ハムザもまた死の間際に孫たちに仲間が必ずアメリカ人に復讐してくれるだろうと語りかけていました。
以上、映画「キングダム/見えざる敵」のあらすじと結末でした。
イスラム過激派によるテロを題材にしたアメリカ映画「キングダム/見えざる敵」は、国際情勢に向き合う社会派映画というよりは、衝撃と緊迫感あふれるアクションシーンで見せる娯楽作品に仕上げていると思います。
サウジアラビアの外国人居住地区で、銃の乱射と大規模な自爆テロ事件が発生し、現地に駐在していたFBI捜査員も巻き込まれてしまった。
ワシントンでこの悲報を聞いた上司のフルーリー(ジェイミー・フォックス)は、現地捜査を願い出るが、司法長官の政治的判断で退けられてしまう。
テロ組織への資金流出をネタに、駐米サウジアラビア大使と取引したフルーリーは、5日間の捜査の許可を得て、3人の部下を連れて現地へ乗り込んだ。
ただ、現地の国家警察に徹底的に監視され、活動を規制されたFBIチームの捜査は一向に進まなかった。
そこで、業を煮やしたフルーリーは、王子に直接訴えるという行動に出るのだ。
当初、対立を繰り返した国家警察のガージー大佐とも次第に共鳴し、テロ組織の深部へと迫っていくのだった——–。
主人公のFBI捜査官、現地警察の大佐、そしてテロ首謀者のいずれの背後にも、家族、特に子供の存在を描き込んだところが、この映画のミソだと思います。
アメリカ映画らしい発想といえばそれまでだが、信仰や立場が違う人々の間に、共通項を示したところに工夫が見られると思います。
1996年にサウジアラビアで実際に発生した爆破事件をヒントにしたというものの、映画の設定は、アメリカでの3.11同時多発テロ以降の国際情勢を踏まえた上での展開となっているのは明らかだ。
アメリカなど西側諸国とイスラム世界との対立というデリケートな問題を、エンターテインメントのモチーフにしてしまうところに、アメリカ映画界のしたたかさを感じざるを得ない。