クリスタル殺人事件の紹介:1980年イギリス映画。ロンドン郊外で起こった殺人事件に、数々の難解事件を解決した推理好きの老婦人ミス・マープルが挑みます。世界的に有名なアガサ・クリスティが作り出した名探偵ポアロに続くメインキャラ、ミス・マープルの活躍を描いています。
監督:ガイ・ハミルトン 原作:アガサ・クリスティー 出演:アンジェラ・ランズベリー(ミス・マープル)、ジェラルディン・チャップリン(エラ)、トニー・カーティス(マーティ)、エドワード・フォックス(クラドック)、ロック・ハドソン(ラッド)、キム・ノヴァク(ローラ)、エリザベス・テイラー(マリーナ)、ピアース・ブロスナン、ほか
映画「クリスタル殺人事件」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「クリスタル殺人事件」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
クリスタル殺人事件の予告編 動画
映画「クリスタル殺人事件」解説
この解説記事には映画「クリスタル殺人事件」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
クリスタル殺人事件のネタバレあらすじ:起
イギリスの片田舎セントメアリリードに住むミス・マープル(アンジェラ・ラズベリー)は、お喋り好きなその老婦人の姿の裏に、数々の難事件を解決してきた名探偵の顔がありました。
静かな村に大女優マリーナ・グレッグ(エリザベス・テイラー)が撮影のためにやってきます。夫で監督のジェイソン・ラッド(ロック・ハドソン)と共に引っ越してきて、盛大なパーティーを開きます。マリーナと犬猿の仲のローラ(キム・ノヴァク)もやってきて、マリーナは一瞬凍りついた表情になりますが、その直後カクテルを飲んだ中年女性ヘザー(モーリン・ベネット)が死んでしまい、悲劇の幕は上がります。
怪我をしてパーティーを欠席したミス・マープルもマープルの甥であるクラドック警部(エドワード・フォックス)とやってきて事件に挑むことになりました。
クリスタル殺人事件のネタバレあらすじ:承
ヘザーの死因は毒殺、しかもそれはマリーナが飲むはずだった事が分かります。長々とマリーナと喋っていたヘザーがカクテルをこぼしたので、代わりにマリーナが渡したカクテルをヘザーが飲んだ直後、死んでしまったのです。マリーナが標的にされている、そんな疑念が浮かび上がります。
その後、捜査も前に進まず、映画の撮影もマリーナとローラの仲違いもあり難航してしまうのでした。マリーナは過去に風疹を患ったおかげで障害児を産んでしまい、長く映画から離れていたので、今回の復帰に並々ならぬ意欲を注いでいたのです。そこに、過去にラッドをマリーナに略奪され、マリーナを殺そうとまでしていたローラがプロデューサーの夫の力を使い、作品に割り込んできたのです。
ラッドの秘書のエラもまたマリーナに私怨のある人物でした。密かにラッドを愛していたエラは、マリーナを疎ましく思っていたのです。
クリスタル殺人事件のネタバレあらすじ:転
マリーナ宛に脅迫状が届いたとクラドックが知ったその後、撮影現場でエラがマリーナに入れたコーヒーに毒が混入されていると騒ぎになります。実際、毒は混入されていました。その夜、容疑のかかったエラが何者かに毒殺されてしまいます。その後の調査で、エラがカクテルに毒を入れたのを見たと、その日いた人達に電話していた事が分かりました。
ミス・マープルは考えをまとめていきます。あの時マリーナが一瞬固まったのは何故か?あの時何を話していたのか?一つずつ紐解いていくうちに、ある結論に達したのです。
ある結論に至ったミス・マープルは再び調査を開始します。亡くなったヘザーはマリーナの大ファンで、彼女の舞台を風疹にかかっているのにも関わらず見に行ったのです。そして舞台裏でサインをもらい、感激のあまりマリーナにキスしてしまいます。
クリスタル殺人事件の結末
マリーナは妊娠中に風疹にかかった事が原因で障害のある子供を産んでいたのですが、どこでうつされたのか検討もついていませんでした。
あのパーティでヘザーが過去にあった事を得意気に話したときに、マリーナの中で全てが繋がりました。目の前にいるヘザーが全ての不幸の元凶だ、そう考えたマリーナは強行に走ったのです。
真相を確かめようとミス・マープルとクラドック警部はマリーナの家に向かいますが、ラッドがマリーナに会わそうとしません。事件の真相はミス・マープルが推理した通りでした。ラッドも全てを知っていたようです。そしてマリーナの飲む飲み物に大量の睡眠薬を入れたと告げます。
ミス・マープル達がマリーナの部屋に行くと、夫に殺人をさせたくない妻の最後の優しさでしょうか、自ら毒を飲んで自殺した大女優の姿がそこにありました。
以上、映画「クリスタル殺人事件」のあらすじと結末でした。
「クリスタル殺人事件」感想・レビュー
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「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」で、アガサ・クリスティー原作のミステリーを、豪華キャストで映画化すれば大ヒット間違いなしというやり方が定着したのか、その第3弾がこの「クリスタル殺人事件」ですね。
しかし、それにしても何とセンスのない邦題なのか。本当に安っぽい題名になっています。
時流に便乗というか何というか、アガサ・クリスティーを愛する一ファンとしては、苦情を言わずにはいられない気持ちになります。これでは、原作の邦訳名の「鏡は横にひび割れて」のほうが、どれだけいいかわかりません。
いつもセンスの良い、素敵な邦題を付けていた東宝東和とも思えぬ、”悪題”ですね。それはともかく、今までの2本がエルキュール・ポアロ物だったのに対して、今度の作品はアガサ・クリスティーのミステリーを代表するもう一人の名探偵、ミス・マープルの登場です。
セント・メアリー・ミードという英国の小さな田舎町から一歩も出たことがないという老嬢ミス・マープルが、その鋭い”人間観察”を通して事件を鮮やかに解決していきます。
その平和な田舎町へ、映画のロケ隊がやって来て、もう、てんやわんやの大騒ぎ。
そして、その歓迎パーティの席上で殺人が起きてしまいます。この映画を原作を未読の人が見たら、どう思うのでしょうか?
原作をそれこそ深く知っている私としては、その辺の判断がつきません。しかし、往年の人気スターを集めて、この田舎町へ乗り込ませたアイディアは実に楽しい。
エリザベス・テイラー、キム・ノヴァク、ロック・ハドソン、トニー・カーティス。この顔ぶれを観ていると、リズとロック・ハドソンは「ジャイアンツ」で夫婦役で共演していたなとか、キム・ノヴァクはヒッチコック監督の「めまい」で妖艶な魅力があったなとか、トニー・カーティスはジャック・レモンとのコンビでの「お熱いのがお好き」での女装がなかなか良かったなとか、様々な映画の思い出が走馬燈のように、次々と脳裏をよぎってしまいます。
かつての美男美女が、今やどこかうさんくさい、一癖ありそうな風貌となって、いかにも誰もが犯人らしく見えてくるから愉快です。
それから、忘れてはならない女優として、ジェラルディン・チャップリンが秘書役でなかなか好演していると思います。そして、肝心の主人公のミス・マープルはアンジェラ・ランズベリー。
エルキュール・ポアロのアルバート・フィニー、ピーター・ユスティノフもそうですが、こういうよく親しまれた名探偵というのは、誰もが自分なりのイメージを持っていますから、どうしても違和感があるのはやむを得ないことだと思います。
私個人の好みとしては、エルキュール・ポアロは断然、アルバート・フィニーが良かったですね。芸達者なアンジェラ・ランズベリーですから、決してミス・キャストではなく、好演していると思いますが、私のイメージから言えば、多少派手すぎる感じがしないでもありません。
この映画の舞台となるセント・メアリー・ミードの村は、よく雰囲気を出して作られていて、名手クリストファー・チャリスのカメラも実に美しい。
ただ、監督が007シリーズのガイ・ハミルトンというのが観る前に気になっていて、その不安はどうも半ば的中してしまいました。
英国ミステリーの、生活感のあるムードがどうにも出て来ないのです。そして上映時間が1時間45分というのも、はっきり言って短かすぎると思います。
ここはやはり、2時間以上かけて、じっくりと描き込んでもらいたかった。
大体、アガサ・クリスティーの作品は、世界中でかなりよく知られているのですから、話がわかっている観客をも、楽しませるように作ってくれなくては困るのです。せっかく、お金をかけ、豪華な役者も集めたのに、何ともったいないことかと、つくづく思います。
確かに、顔ぶれの楽しさ、原作の骨組みの確かさで見せてくれますが、アガサ・クリスティーの大ファンとしては、文句なしに面白かったと言えないのが残念です。
エラが殺害される理由をもう少しし具体的に描いて欲しかった。