モスキート・コーストの紹介:1986年アメリカ映画。優秀な発明家にして国粋主義者、そして理想家であるアリー・フォックスは、国に金欲と物欲が蔓延したと感じて嫌気がさし、中米ホンジュラスのモスキート・コーストへの移住を行う。それは、物質文明への決別となり、新天地での新世界創造に成る筈だった。人間の持つ文明社会を痛烈に批判する社会派映画。ハリソン・フォード、今は亡き天才子役リバー・フェニックス競演。
監督:ピーター・ウィアー 出演者:アリー・フォックス(ハリソン・フォード)、アリーの妻(ヘレン・ミレン)、チャーリー(リバー・フェニックス)、ジェリー(ジャドレーン・スティール)、エイプリル(ヒラリー・ゴードン)、クローバー(レベッカ・ゴードン)、ハディ(コンラッド・ロバーツ)ほか
映画「モスキート・コースト」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「モスキート・コースト」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「モスキート・コースト」解説
この解説記事には映画「モスキート・コースト」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
モスキート・コーストのネタバレあらすじ1
チャーリーが尊敬して止まない父アリー・フォックスは、幾つもの特許を持つ優秀な発明家でした。二男二女を持つ彼は、使う材料には国産品しか選ばない拘りを持つ程の愛国者もありましたが、その愛国心が行過ぎて周りから煙たがれてもいました。更には常日頃周囲の物欲、消費主義を批判し、挙句終末論を口にするので変人扱いも受けていました。ある日アリーは、冷蔵庫の修理を近所の農場主から依頼されていましたが、それを無視して電気を使わない火と熱を利用した冷却装置を発明し、近所の農場主に売り込みます。しかし農場主は海のものとも山のものとも判らない機械よりも冷蔵庫を直せと言い放ちます。画期的な発明に理解が得られなかったアリーは絶望します。その帰り、農場で働く南米からの出稼ぎ農業者を見て彼は、一つの計画を思い付きます。アリーはその労働者達から話を聞き、突然家族を連れて、彼らの故郷ホンジュラス、モスキート・コートへ向かます。アメリカの文明を捨てた新世界創造へ向かう出発でした。ホンジュラスへ向かう船の中でアリー一家は伝道師一家と知り合います。アリーは宗教とも折り合いが悪く、伝道師に宗教は論争を吹っかけます。伝道師はホンジュラスに着くと、アリーに嫌悪を抱きつつも友好的に別れました。アリーはホンジュラスの港でドイツ人から町を買うという如何わしい行為をし、現地ガイド、ハディを雇い、その町へ向かいました。
モスキート・コーストのネタバレあらすじ2
その町ジェロニモはジャングルの奥地でした。喫水ぎりぎりのハディのボートで川を遡り、町に辿り着きます。しかし、町とは名ばかりでそこは、粗末な小屋と数家族が住まう集落でした。不安がる家族を尻目に、その未開、未文化な土地にアリーは大喜びでした。アリーは嬉々として村の造成計画を立て、実行に移して行きます。その夢と理想のような計画は、家族と村人達、ハディの協力で見る間に形を成し、遂には自給自足が可能な農園を持つ見事な村が誕生しました。畑には、周りに撒き散らされていたガラクタで作られた水の組み上げ装置や散水装置が用いられ、安定した収穫ができるまでになりました。そんな新世界で順調な毎日を送っていると、噂を聞きつけた伝道師がやってきます。彼は近くで布教活動もやっており、村人達も洗礼を受けていました。伝道師は最近、村人達が教会に来ない事を咎めます。すでに彼らのリーダーになっていたアリーは、神に頼る伝道師を馬鹿にします。すると伝道師は、神を受け入れないアリーに怒りをぶつけ、去っていきました。新世界は完全に姿を成し、アリーは次のステップに移る為、町に買い出しに向かいます。その間、チャーリーは村の子供達との遊びにままごとを加え、貨幣価値の勉強を始めました。息子は父親と違い、文明に未練があったのです。買出しから帰ってきたアリーは、巨大な冷却装置の建造を始めます。出来上がったそれはまるで森の中に立つモンスターでした。
モスキート・コーストのネタバレあらすじ3
火を投入した冷却装置は設計どおり氷を作り出し、その余剰機能でエアコンの役割までできました。文明のない所に文明的な装置が誕生したのです。家族や村人達は喜びますが、対照的にアリーは不安を抱き始めました。そんな時村人の一人から、未だ狩猟生活をしてまったく文明を持たない部族が奥地に居る事を聞きます。アリーはその部族に氷を見せに行く事にしました。森は深く、山は険しく、一向が運ぶ氷はどんどん解けて行きます。森の中で夜明かしをする事になりますがアリーは火を使わせません。氷が解けると言って焚き火を着けた息子を叱り、火を消させました。一昼夜掛けてその部族の村に辿り着きました。村人が出迎えてきますが友好的な雰囲気ではありません。アリーは彼らに氷を見せに来たと言いますが、肝心の氷は溶けてなくなっていました。何をしに来たか説明の出来なくなったアリーらは部族に警戒されます。まるで理解できない文明同士の衝突のようです。その内、彼らの村の奥に数人の白人がいる事に気付きます。アリーはその白人達が居る小屋に入りますが、すぐに逃げるように出てきました。そしてそのまま一行を引き連れ、逃げるように村を後にします。アリーは白人達に「逃げろ」と忠告を受けていたようでした。
モスキート・コーストのネタバレあらすじ4
アリー達が村に帰ると、村はもぬけの殻でした。残っていたのはアリーの家族だけです。事情を聞くと、伝道師が村人達を無理やり教会に連れて行ったようです。仕方がなく家族だけで農作業などを続けていくと、今度は銃を持った3人の兵士がやってきました。兵士達は富める者から奪う略奪者のように村に居座る気でした。それに怒りを感じたアリーは、チャーリーに手伝わせて兵士達を排除する計画を立てます。チャーリーは最初嫌がりましたが、略奪を許さないアリーは無理やり手伝わせます。アリーは兵士達を冷却装置に閉じ込め、凍死させようとしました。しかし兵士達は抵抗し、銃を乱射します。その弾は装置に無数の穴を空け、アリーは慌てて止めようとしますがその眼前、装置の薬剤に火が点き、大爆発を引き起こしました。装置の爆発とその薬剤の汚染で村は使いものにならなくなり、アリー一家は川を下り始めました。
モスキート・コーストのネタバレあらすじ5
一家が辿り着いた先は、漂着物で溢れた海岸でした。祖国と文明が恋しくなった一家は帰国をアリーに願い出ます。しかしアリーは頑として受け入れません。しかも、アメリカが核戦争で消えて帰れないと嘘まで吐きます。さすがのチャーリーもこれには閉口しました。アリーは、文明を捨て自然に生きる筈だった自分が自然を汚してしまった事から、そこにあった廃船を家として、更に文明を捨てた原始的な生活をこの海岸で始めます。それを聞いたハディは、この海岸は嵐に無防備だと忠告をしますが、人間不信さえ抱いているアリーは無視しました。新たな生活が始まって間もなく海岸は嵐に見舞われます。その嵐の中、船が漂流をする危機にハディが駆け付けてくれました。ハディはアリーではなくチャーリーに船の補修部品とガソリンを渡し、嵐を避けるように言います。チャーリーはアリーににハディから渡された事を隠し、部品とガソリンを渡し、船を動かして嵐から逃げました。アリーは、死んだ者は川を下り、生きる者は上流へ向かうと主張し川を上り始めます。しかし船は、暫く進んでスクリューが外れてしまいました。スクリューを取りにアリーは川に潜ります。暫くしても上がってこないので家族は命綱を引きますが、その先に父親は居ませんでした。パニックになった家族は父親が死んだと思い、アメリカに帰ろうとします。その時、アリーが戻ってきました。帰国を扇動したのが息子達だと思い込んだアリーは船にボートを係留し、二人をそこに隔離しました。その仕打ちに息子達は、次第に父への憎しみが芽生え始めました。また暫く川を上ると、今度は賛美歌が一家の耳に聞こえてきました。賛美歌を辿り、あの伝道師の教会を見付けた一家は中を覗きこみます。礼拝堂では、伝道師がテレビを使い、電話等文明の利器を例えに信仰を説いていました。そのテレビを、ジェロニモの村人達が虚ろな目で見ていました。アリーはそれを洗脳となじり、家族に船で待つように言って姿を消しました。
モスキート・コーストの結末
夜になり、伝道師一家がどこからか帰ってきました。チャーリーは伝道師の娘に助けを求めます。娘はチャーリー達を哀れに思ったのか、車の鍵をくれました。その鍵を持ってボートに戻る途中、様子を見に来た母親と出会います。チャーリーは、アリーを置いてアメリカに帰ろうと母親を説得し始めました。その時、教会から火の手が上がりました。チャーリー達が驚いて振り返ると、アリーが嬉々としてガソリンを持って立っていました。少し減りはしましたが、そのガソリンでもっと上流に向かうというアリーにチャーリーは反発し、口論を始めます。チャーリーがアリーを置いて去ろうとしたその時、アリーは逆上した伝道師に撃たれ倒れました。チャーリーは重傷を負ったアリーを連れ船に戻りましたが、彼はすでに虫の息でした。そして次男達は、父の死を望んですら居ました。そんな事も気付かず、アリーは人間の弱さ、無防備さをチャーリーに説き、自分は獣のように強くなって生きると言い、事切れました。その父親の死を看取り、チャーリーはやはり父を尊敬し、愛していた事に気付きます。今際の際、アリーに川を上っているか?と聞かれたので上っているとチャーリーは答えました。しかし、ボートは川を下っていました。
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