アートのお値段の紹介:2018年アメリカ映画。ニューヨーク。世界的に有名なサザビーズ・オークションを6週間後に控え慌ただしい様子のアート界を追ったドキュメンタリー。サザビーズのオークショニア、エイミーは意欲にあふれていた。しかし、作品に高値が予想されるアーティストのゲルハルト・リヒターや新星ジデカ・アクーニーリ・クロスビーらは複雑な面持ちを見せる。大成功を収めているアーティスト、ジェフ・クーンズや世間から忘れられたラリー・プーンズ、人気急上昇のジョージ・コンドやマリリン・ミンターらのアーティストも自らのアート論を展開する。アートの商品化ととどまることを知らないアートバブル。そして迎えるオークション当日。あらためてアートの価値を考えさせてくれる。
監督:ナサニエル・カーン 出演:ラリー・プーンズ(アーティスト)、ジェフ・クーンズ(アーティスト)、ジョージ・コンド(アーティスト)、ジデカ・アクーニーリ・クロスビー(アーティスト)、ゲルハルト・リヒター(アーティスト)、エイミー・カペラッツォ(オークショニア)、シモン・デ・プリ(オークショニア)、エド・ドルマン(オークショニア)、ステファン・エドリス(コレクター)、ジェリー・サルツ(美術評論家)、ギャビン・ブラウン(ギャラリスト)、ポール・シンメル(キュレーター)、アレクサンダー・ネメロヴ(美術史家)ほか
映画「アートのお値段」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アートのお値段」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
アートのお値段の予告編 動画
映画「アートのお値段」解説
この解説記事には映画「アートのお値段」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アートのお値段のネタバレあらすじ:起
アートの値段なくして保護はなし。
バンクシーが140万ドルの絵を落札の瞬間に額縁にしかけたシュレッダーで細断したり、ジェフ・クーンズ作ステンレス製のウサギの彫刻が存命アーティスト最高額の9100万ドルで落札されたりと、アートオークションの話題がニュースを賑わすような昨今。
NYで最も成功している近代アーティスト、クーンズはそれでも「まだ最高傑作は作っていない」と意気揚々に語ります。
一方、茂みの中から迎え出てきたラリー・プーンズ。彼は1960年代にドットペインティングで注目されたのち、忘れられた存在でした。苦しい選択をしているようにすら見える彼に監督はなぜアーティストになったのかを問います。プーンズは「自由がいい」と答えると足早に歩き出します。到着したのは彼のアトリエ。その雨風がしのげるだけの最低限で素朴な小屋に入り奥を覗くと…すべての壁にペインティングがほどこされたアトリエがありました。息を飲むほどの色使いと躍動感に観る者を惹きつけます。
プーンズは笑いながら話します。「みんなは私が死んだと思っている」と。彼は70年代から自分のスタンスを貫き描き続きてきました。
アートのお値段のネタバレあらすじ:承
秋のサザビーズ・オークションまで6週間。
オークショニアのエイミーは緊張の面持ちでカタログの打ち合わせをしていました。多くの美術を見てきた彼女にとって、どんなにいいカタログでも本物のアートには敵わないとカタログ製作は難航します。
ジョージ・コントは広々としたアトリエで作品を手掛けながら、「作品の端をペイントするのが好きだ」と笑みを浮かべます。
また、育児をしながら作品を制作しているのはナイジェリア出身の新星アーティスト、デジカ・アクーニーリ・クロスビー。彼女ははっきりと強いまなざしで「お金は作品制作のモチベーションにはならない」と言い放ちます。
コレクターにもカメラが向けられます。ステファン・エドリスは部屋中に並べられた数々の収集された品を見せながら「作品は200点、40アーティストまでと制限を設けてから気が楽になった」と言います。そんな彼はクーンズのウサギの彫刻を保有している人のひとり。気に入った作品を所有している人に出くわすと、自分のコレクションからトレードで手に入れることもあります。
アートのお値段のネタバレあらすじ:転
オークションが4週間後に迫ってきました。
アート界は一層ざわめき立ちます。
「いい作品は常に高値であるべき」と市場の立場から話すオークショニアのシモン・デ・プリに反して、美術史家のアレクサンダー・ネメロヴは「アートは値打ちではなく、尊さだ」と話します。
ジョージ・コントの作品も出来上がってきました。NYにやってきた時に最初に会ったのがバスキアだったと、亡き天才アーティストとの思い出を語ります。最後に会った日のバスキアはとてもネガティヴで自分の描いた作品が認められないことを嘆いたとのこと。バスキアが生きていたらきっと高値は付かないだろうと皮肉たっぷりに話します。
アートのお値段の結末
ついにオークション当日がやってきました。
ジデカ・アクーニーリ・クロスビーが描いた作品は90万ドルで落札されました。その様子を見守っていた彼女は、驚きも喜びもせず冷静なままでした。以前買われた作品はすぐ売りに出されていました。しかもさらなる高値で。転売屋の存在もまたアーティストたちを苦しめるのでした。
ゲルハルト・リヒターは「コレクターの手に渡るよりも美術館で展示されるほうがいい」と言います。アートは民衆の目にさらされるべきでは?という監督の問いに、オークショニアのエイミーは美術館は墓場だと一蹴します。
今回のオークションにはずっと姿を潜めていたプーンズの作品も出品されました。
ギャラリーに飾られた彼の作品を見て、多くの人が感動し、涙する人までいました。ギャラリストたちに挨拶をするとその感動はプーンズをも震わせます。1971年から宿命に対し色で抗ってきたプーンズは言うのです。「あのときに絶大な富を得ていたら、きっと今ごろ死んでいただろう」と。
そしてオークショニアの競売の掛け声が高々に続くのでした。
以上、映画「アートのお値段」のあらすじと結末でした。
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