映画「パブリック 図書館の奇跡」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
パブリック 図書館の奇跡の紹介：2018年アメリカ映画。記録的な大寒波に見舞われたアメリカ・シンシナティを舞台に、行き場をなくした数十人のホームレスたちが地元の公共図書館を占拠する様を描いた社会派作品です。本作で監督・脚本・製作・主演を務めたエミリオ・エステベスはある公共図書館の元副理事がロサンゼルス・タイムズに寄稿したエッセイを基に構想を練り上げ、11年の歳月を費やして完成にこぎつけました。
監督：エミリオ・エステベス 出演者：エミリオ・エステベス（スチュアート・グッドソン）、アレック・ボールドウィン（ビル・ラムステッド）、クリスチャン・スレーター（ジョシュ・デイヴィス）、ジェフリー・ライト（アンダーソン）、ジェナ・マローン（マイラ）、テイラー・シリング（アンジェラ）、ジェイコブ・バルガス（エルネスト・ラミレス）、ガブリエル・ユニオン（レベッカ・パークス）、リチャード・T・ジョーンズ（トム・エドワーズ）、マイケル・ケネス・ウィリアムズ（ジャクソン）、チェ・ライムフェスト・スミス（ビッグ・ジョージ）、キー・ホン・リー（チップ）、スザンナ・トンプソン（マーシー・ラムステッド）ほか
この解説記事には映画「パブリック 図書館の奇跡」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
真冬のアメリカ・オハイオ州シンシナティ。この街にある公共図書館には朝から沢山のホームレスたちが行列を作っていました。誰でも無料で利用できる図書館はホームレスたちにとっては憩いの場であり、雨風やこの時期は冬の寒さをしのげる場所となっていました。
この図書館で働く職員のスチュアート・グッドソン（エミリオ・エステベス）はいつものように顔馴染みのホームレスたちを出迎えました。そこに同僚の女性職員マイラ（ジェナ・マローン）が遅れて現れ、スチュアートは遅刻したことを注意しました。
図書館にやってきたホームレスたちはリーダー格のジャクソン（マイケル・ケネス・ウィリアムズ）を筆頭に、アメリカ史にやたらと詳しいシーサー（パトリック・ヒューム）、突然全裸になってジョニー・ナッシュの「アイ・キャン・シー・クリアリー・ナウ」を歌い出す者など個性豊かな面々ばかりでした。この日は新顔として誰とも目を合わさないビッグ・ジョージ（チェ・”ライムフェスト”・スミス）という巨漢の男も来ていました。
マイラと共にホームレスたちの対応に追われていたスチュワートは、館長のアンダーソン（ジェフリー・ライト）から会議室に呼び出しを受けました。スチュワートは同じく呼び出しを受けた警備員のエルネスト・ラミレス（ジェイコブ・バルガス）と共に会議室に入ると、そこに来ていた群検事のジョシュ・デイヴィス（クリスチャン・スレーター）がスチュワートとエルネストが告訴されていると告げました。
実はスチュワートとエルネストは10週間ほど前、体臭を理由にあるひとりのホームレスを追い出したことがありました。追い出されたホームレスは権利を侵害されたとしてスチュワートとエルネストを相手取り訴訟を起こしたのです。アンダーソンはスチュワートとエルネストを擁護しましたが、デイヴィスは和解金を払って早く解決するよう命じました。デイヴィスは近々行われる予定のシンシナティ市長選への出馬を目論んでおり、面倒な揉め事を抱えたくなかったのです。
その頃、シンシナティ市警察の刑事ビル・ラムステッド（アレック・ボールドウィン）は署長に休暇がほしいと掛け合っていました。ビルには麻薬中毒で放浪癖のある息子マイクがおり、現在所在不明になっているマイクを探そうとしているのです。しかし、署長は人手不足を理由に休暇を却下、ビルは同僚にマイクを探してくれるよう頼みました。
一方、すっかり疲れ果てたスチュワートが自宅アパートに戻ると、部屋にはアパートの管理人アンジェラ（テイラー・シリング）がいました。互いに恋人もいないスチュワートとアンジェラは意気投合し、そのままベッドで一夜を共にしました。翌朝、アンジェラは図書館に顔を出したいと言い出し、スチュワートは喜びました。
この日もいつも通りに出勤したスチュワートは相変わらずのホームレスたちの対応に追われました。そして閉館の時間が近づいた頃、ジャクソンはスチュワートに「今日はここに泊まらせてほしい。ここを占拠する」と告げました。この日は記録的な大寒波がシンシナティに到来しており、市が用意した緊急避難用シェルターも既に満杯になっていました。このままでは凍死してしまうと危機感を募らせた、行き場のない約70人のホームレスたちが図書館に一晩泊まることを決意したのです。
スチュワートはアンダーソンに、ホームレスたちに寛大な措置を取るよう求めましたが、アンダーソンは告訴の件で評議会がスチュアートをクビにしたがっているとし、あまり目立つマネをしてくれるなと消極的でした。スチュワートは独断でホームレスの願いを聞き入れることにし、3階のエリアにバリケードを築いて立て籠もることを決意しました。
警備員は警察に通報し、ビルは警官隊に交じって図書館に急行しました。騒ぎを聞きつけたマスコミ、そしてデイヴィスも図書館に向かいました。ビルに要求を訊かれたスチュワートは、ホームレスのための避難場所を提供してくれるのなら占拠を解除すると返しました。そしてスチュワートは自分を罵倒するデイヴィスに、上着を脱いだ状態で5分間外に寝そべるよう要求しました。
デイヴィスは仕方なく要求を呑み、ジャケットを脱いで道路に横たわっているところを地元テレビ局のリポーターのレベッカ・パークス（ガブリエル・ユニオン）に取材されました。デイヴィスは苛立ちながら「精神的に不安定な図書館員が約70名の利用客を監禁し、我々の大切な施設を混乱に陥れている」と吐き捨てました。
マスコミはあたかもスチュワートが拉致犯であるかのように報じ、図書館に駆け付けていたアンジェラはスチュワートを心配して電話をかけました。アンジェラは自分に図書館内の様子を撮影して送ってくれれば自分がマスコミに説明すると言い出しました。
そんな時、ホームレスの一人が発作を起こし、スチュワートはビルに救急車とホームレスのための差し入れを要求しました。ビルはスチュワートにマイクの写真を渡し、もしホームレスの中にマイクがいたら教えてほしいと伝えました。
その頃、警察はスチュワートの過去の経歴を調べていました。その結果、スチュワートはかつてアルコール依存症によりホームレスとなった過去があり、万引きなどの軽犯罪歴もあることが明らかになりました。アンダーソンは、スチュワートは酒を断ち、一生懸命勉強して司書の資格を取って今の地位を掴んだのだと説明しました。
一方、スチュワートはスマホで、暖房の効いたエリアで思い思いに過ごすホームレスたちのありのままの姿を撮影していきました。スチュワートはそれらの動画データをアンジェラを通じてレベッカに渡しましたが、デイヴィスの発言を真に受けてスチュワートを危険視しているレベッカは悪意のある報道をしてしまいました。
思わぬ形で自分の過去が世間に明るみになってしまったスチュワート。アンジェラはレベッカに対し、スチュワートは危険人物ではないと説明しました。スチュワートはレベッカの電話インタビューに応じ、図書館占拠の理由を訊かれると“アメリカ文学の巨人”ジョン・スタインベックの代表作『怒りの葡萄』の一節を引用しながら語り出しました。
スタインベックを知らないレベッカはスチュワートの意図を理解できず困惑していると、スタインベックの大ファンであるマイラが「小学生になったら必ず読む本よ」と説明しました。
アンダーソンは意を決してスチュワート側につくことにし、自らもホームレスの輪の中に加わりました。一方、スチュワートはホームレスの群れから離れて過ごしているマイクの姿を発見、「君には心配してくれる家族がいる」と呼びかけましたが、マイクは突然スチュワートに殴りかかってきました。ビルはスチュワートにマイクの存在に気付きながらも隠していたのかと問うと、スチュワートは「図書館利用者のプライバシーを守るためだ」と答えました。
図書館の外ではホームレスに共感した市民たちが続々と救援物資を持って駆け付け、マイラはその対応に追われました。一方、長期戦を避けたい警察側は、デイヴィスが何度も要請していた強行突入に踏み切る決意を固めました。警察の突入は時間の問題だと考えたスチュワートは一計を案じ、自分は目からレーザービームを出して見つめた相手を殺してしまうのだと信じて疑わないビッグ・ジョージに自分がかけているメガネを渡し、これなら相手を殺すことはないと語って納得させました。そしてスチュワートはビッグ・ジョージに肩車してもらい、館内の監視カメラを塞いでおきました。
ホームレスたちの動向が掴めなくなったビルら警官隊は遂に突入しようとしたその時、何と図書館側の方から封鎖が解かれました。中から出てきたのは、スチュワートを筆頭に全員全裸姿となったホームレスたちでした。スチュワートやホームレスたちは全員で「アイ・キャン・シー・クリアリー・ナウ」を合唱、警官隊はあっけにとられました。それでもビルはスチュワートにマイクを見つけてくれたことへの感謝の意を伝えました。レベッカはこれはとても生中継では流せないと嘆きました。
スチュワートは逮捕され、他のホームレスたちも続々と護送車に乗せられていきました。スチュワートはエルネストに「君を訴えることはしない」と声をかけ、先に身柄を確保されていたアンダーソンに騒動に巻き込んでしまったことを謝罪しました。アンダーソンは「後悔はしていない」と返しました。アンジェラは護送車の窓越しに「面会の時には服を持っていくわ」とスチュワートに告げ、スチュワートは微笑み返しました。
以上、映画「パブリック 図書館の奇跡」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する