日の名残りの紹介:1993年イギリス映画。2017年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの同名小説を映画化。第一次世界大戦と第二次世界大戦の狭間で、淡い恋に揺れ動く執事の哀切を描く。アメリカ人の富豪に仕える老執事スティーブンスは、人手不足に悩んでいた。かつて共に働いた有能な女中頭ケントンから手紙を受け取った彼は、彼女に職場復帰を促すため休暇を得て旅に出る。その道すがら、スティーブンスは主人に忠実であり過ぎたために生まれた過ちと、失った愛の可能性を確認していくのだった。
監督:ジェームズ・アイヴォリー 出演者:アンソニー・ホプキンス(ジェームズ・スティーブンス)、エマ・トンプソン(ミス・ケントン)、ジェームズ・フォックス(ダーリントン卿)、クリストファー・リーヴ(ルイス)、ピーター・ヴォーン(ウィリアム・スティーブンス)ほか
映画「日の名残り」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「日の名残り」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「日の名残り」解説
この解説記事には映画「日の名残り」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
日の名残りのネタバレあらすじ:老執事の旅
舞台は1950年代のイギリス、オックスフォードシャー。ベテラン執事ジェームズ・スティーブンスは、現在アメリカの政治家ルイスの家に仕えています。ルイスは近々政界を引退して、家族をイギリスの邸宅に呼び寄せるつもりでいました。人手不足に悩むスティーブンスの下へ、ある女性から手紙が届きます。差出人はベン夫人、旧姓はケントン。彼女は20年前、女中頭としてスティーブンスと同じ主人に雇われていました。優秀な彼女に職場復帰を提案するため、スティーブンスは休暇を使い彼女の住むクリーブドンへ向かいます。車を運転するスティーブンスの脳裏に蘇る昔の思い出。2人の出会いは英国貴族ダーリントン卿の邸宅、通称ダーリントン・ホール。卿の死後、ルイスが買い取って住んでいる屋敷です。かつて屋敷は外交の場として使用され、多くの客人と使用人が集っていました。
日の名残りのネタバレあらすじ:執事と女中頭
約20年前、スティーブンスの父と同時期に女中頭として雇われたケントン。スティーブンスは使用人に何よりも品格を求め、自分の感情をほとんど表に出さず執事の職務に没頭していました。勝気なケントンははじめスティーブンスと馬が合わず、喧嘩腰になってしまうこともありました。そんな折、ダーリントン・ホールで国際会議が開かれ各国から身分の高い客人が集まります。そこには若き日のルイスの姿もありました。主にドイツの今後について話し合いが持たれ、ヨーロッパ諸国は再軍備も視野に入れたドイツとの友好関係を約束します。危険を覚えたルイスは出席者に対し「あなた方は皆 アマチュアだ」と言い放ち、プロの政治家に任せなければ世界は大変なことになると警告しました。そんな中、以前から体調を崩していたスティーブンスの父が死去します。仕事を抜けられないスティーブンスはケントンに父のことを頼み、彼女も快く引き受けてくれました。スティーブンスは悲しみを押し殺し仕事を続けます。
日の名残りのネタバレあらすじ:危険な思想
ダーリントン卿の周囲には次第に親独派が集まるようになりました。スティーブンスはダーリントン卿を心から尊敬していましたが、その主義主張には敢えて関心を持たないようにしています。間違いだと感じることはあっても、主人に対し口答えするなど彼には考えられないことでした。しかしダーリントン卿はナチスの思想に影響されるようになり、ユダヤ人という理由だけでメイドを2人解雇してしまいます。スティーブンスからそれを聞いたケントンは激怒し、2人を解雇するなら自分も辞めると言い出します。しかし帰る家もない彼女は結局辞職しませんでした。自分は臆病者だと恥じるケントンに、「この屋敷に必要な方です」と慰めの言葉をかけるスティーブンス。2人は次第に惹かれ合っていきます。
日の名残りのネタバレあらすじ:告げられなかった愛
職務に全てを捧げるあまり、スティーブンスは愛に関して非常に奥手でした。ケントンを口説くどころか好意を示すことすら出来ません。一方でケントンは、昔同じ職場に勤めていたベンから求婚されていました。彼女はスティーブンスへの淡い恋心を抱え思い悩みます。そんな折、ダーリントン・ホールで秘密の会合が開かれようとしていました。どんな客かはスティーブンスすら知らされていません。その夜、やってきた客人は英国首相と外務大臣、そしてドイツ大使でした。ダーリントン卿は高貴な志を持ってドイツと協定を組もうとしていましたが、ドイツ側はその善意を利用しようと企みます。明らかな過ちを犯そうとしている主人を見ながら、スティーブンスは普段通り仕事に没頭しました。そんなスティーブンスに、ケントンはベンと結婚して町を去ることを告げます。スティーブンスは顔色を変え動揺しますが、それも一瞬のことで、すぐに儀礼的な祝福をして仕事に戻りました。スティーブンスに引き止めて欲しい気持ちを抱えていたケントンは泣き伏します。
日の名残りの結末:それぞれの人生
昔を思い返しながら、スティーブンスはクリーブドンを目指していました。途中で何度かダーリントン卿の名前を聞きましたが、その度に自分は無関係だと嘘をつきます。ダーリントン卿は英国を戦争に巻き込んだナチ擁護派の貴族として非常に嫌われていました。1人の青年にだけ真実を明かしたスティーブンスは、ダーリントン卿は亡くなる前自分の過ちを認めていたと語り、「立派な方でした」と呟きます。やがて待ち合わせ場所で再会したスティーブンスとケントン。20年ぶりの再会に落ち着かない様子です。スティーブンスは職場復帰を提案しますが、ケントンは娘の妊娠を理由に断りました。再び彼女と働けるかも知れないという淡い期待は消え、スティーブンスは戻らない時間を痛感します。ケントンも時々人生を誤ったと思うことがあると後悔を口にしました。やがて別れの時間がやって来ます。ケントンはバスの中で泣きながらスティーブンスを見つめていました。スティーブンスは「さよなら!」と叫びます。スティーブンスがダーリントン・ホールに戻り、この映画も終幕を迎えます。
以上、映画日の名残りのあらすじと結末でした。
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