海を飛ぶ夢の紹介:2004年スペイン映画。四肢麻痺のラモンは尊厳死を求めて公に裁判を起こしていた。そんな彼の最後の二年間に起きた希望と絶望を描く。実在の人物ラモン・サンペドロの手記「レターズ・フロム・ヘル」を基に描かれる真実のドラマ。
監督:アレハンドロ・アメナーバル 出演:ハビエル・バルデム(ラモン・サンペドロ)、ベレン・ルエダ(フリア)、ロラ・ドゥエニャス(ロサ)、クララ・セグラ(ジェネ)、マベル・リベラ(マヌエラ)、セルソ・ブガーリョ(ホセ)、タマル・ノバス(ハビ)、ジョアン・ダルマウ(ホアキン)、フランセスク・ガリード(マルク)、ほか
映画「海を飛ぶ夢」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「海を飛ぶ夢」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
海を飛ぶ夢の予告編 動画
映画「海を飛ぶ夢」解説
この解説記事には映画「海を飛ぶ夢」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
はじめに:スペインは現在も公に尊厳死、安楽死は認められていません。自殺ほう助にあたります。また、スペインは政教分離をしていますが、敬虔なカトリック教徒の場合、命は神様の物であり自殺は禁忌にあたると言うのが背景にあります。
海を飛ぶ夢のネタバレあらすじ:起・「尊厳死」望むラモンの周りの人々
海で首の骨を損傷して以来26年間四肢麻痺で寝たきりのラモンは、公に尊厳死を求め裁判を起こしていた。そんな彼の元に尊厳死を求める団体のジェネは片脚の不自由なフリアという弁護士を連れてきた。
フリアはラモンになぜ自分が尊厳死を求めるのか尋ね、家族にもそれを聞いた。ラモンのために自宅の農作業に精を出している兄や、宗教を理由に父親は彼の尊厳死に反対、その一方で兄の妻のマヌエラは彼の願を尊重したいと言う意見だった。
テレビに出演し、自分が笑顔でいるのは涙を隠す方法だと言うラモンの言葉に感銘を受けた、工場で働くロサはらラモンの家に訪れた。そこで、ラモンの友達になり生きることを説得しようとしたロサを、友人なら尊重すべき、ロサはここを逃げ場所にしてると言って彼女を追い出した。ロサはDJをしている地方のラジオ局で曲を流しラモンに詫びた。
海を飛ぶ夢のネタバレあらすじ:承・ラモンの夢
裁判用のテープを作るために、事故に遭うまでは船員として世界を旅していたと言うラモンだったが、彼にとっての未来は死のみだった。彼にとって首を損傷した海は特別な存在だった。彼にはそれまで恋人がいたが、この状態で愛する事ができないからと結婚を求められた時に別れたとも話した。
そこへロサが子供を連れてやって来た。彼女はもう励ましに来たわけではなく、二人の子供を見せに来ただけだと言った。
席を外したフリアに、マヌエラはラモンが書いた詩の入った箱を見せた。大量のそれを呼んでいる間はラモンに海に散歩をしに行ったと伝えるように言った。それを聞いたラモンは窓から飛び出し海を歩くフリアと抱き合い口づける空想をした。
フリアは、ラモンの書いた詩を出版するべき、ラモン自身の声だから裁判にも有利だと勧めた。そんなフリアにラモンは、味方になってくれると思ったのに過去を掘り返してかき乱すばかりだとなじった。煙草を求めるラモンに取りにフリアは、階段で倒れてしまった。けれどラモンには助けることはできなかった。
海を飛ぶ夢のネタバレあらすじ:転・フリアの不治の病
フリアは脳血管性痴呆で足の感覚だけでなく、次に発作を起こしたら視力を失うかもしれない、どうなるかわからない状態に不安を抱いていた。失意の彼女の元にラモンから、詩を手直しして甥に清書してもらい始めたと言う手紙を受けた。それに歩くリハビリを始めたと彼女は変身した。
そんな中、尊厳死を求める訴えは却下され、テレビでは彼が尊厳死を望むのは家族の愛情が足りないからだと、お門違いの神父からコメントが付けられた。件の神父はラモンの家まで来て説得しようとしたが、愛情が足りないと言われたことを怒っているマヌエラに、あなたはやかましいと言って追い出された。
そして、工場が閉鎖されたとやって来たロサに、尊厳死の計画に手を貸して欲しいと頼むが彼女がやりたいのは看病だった。
リハビリを終えたフリアが、妊娠中のジェネとやって来て、ラモンとフリアを二人きりにした。フリアは、自分の病を告げ、いつか植物状態になる前に命を絶つ、一緒に旅立とうと、ラモンに口約束をした。その一つの期限は本の出版だった。
二人の間にはいつしか愛が芽生え、フリアは出版のために、ラモンは証言をするためにそれまで滅多に使う事のなかった車椅子を手直しした。
海を飛ぶ夢の結末:裁判の結果
ジェネが出産し、ラモンは裁判所に出向いた。バルセロナではフリアが出版の手続きを進めていた。公に尊厳死を求めた初めてのスペイン人としてマスコミ注目され、裁判所の前ではデモ隊た「尊厳を!」と叫んでいた。
けれど、弁護人が裁判長にラモンからの証言を求めても認められず、証拠事実は全て出されたとされ、28年待ったラモンの訴えは、理解はできるけれどそれを助けるのは犯罪だと言う結果が出された。
そして、詩集の日門が届いた日、ラモンはそこに挟まれたメモを見て、夜中に泣いた。
ラモンに愛情を抱いていたロサは、愛する人は死をくれる人という言葉に、ラモンの計画を聞き、ラモンは家族ともめたが手伝う事にした。ラモンはジェネに自分の件から手を引くように連絡し、マヌエラと甥に別れを告げロサの所へ行き、ビデオレターを残し、青酸カリの入った水を飲み、死亡した。
後日、フリアに会いに行ったジェネ。彼女は夫と暮らしていたが、ラモンの事はもう覚えていなかった。
以上、映画「海を飛ぶ夢」のあらすじと結末でした。
海を飛ぶ夢のレビュー・考察:「命」は誰のものか
個人の物か、神の物か。生きることが自由ならば、死ぬことは自由なのか。ラモンの最期に確実に向かっているはずなのに、作品に悲壮感は漂わない。けして「自死」を薦めている作品というわけではなく、それはラモンが死という答えに至った理由、それまでの彼の生き様、そして、彼と関わり生きる姿が余すことなく描かれていたからだと思えてならない。
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