泥棒成金の紹介：1955年アメリカ映画。かつては宝石泥棒で名をはせ、今は足を洗って悠々自適の生活をしていた男が、彼の手口を真似た宝石泥棒が現れたことで疑われるハメに。男は身の潔白を証明するために偽者を捕まえようと動き出す。
監督：アルフレッド・ヒッチコック 出演：ケイリー・グラント（ジョン・ロビー）、グレイス・ケリー（フランセス）、シャルル・ヴァネル（ベルタニ）、ブリジット・オーベール（ダニエル）、ジェシー・ロイス・ランディス（スティーヴンス夫人）、ジョン・ウィリアムズ（ヒューソン）、ほか
映画「泥棒成金」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「泥棒成金」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
作品紹介・キャスト
泥棒成金の予告編 動画
映画「泥棒成金」解説
この解説記事には映画「泥棒成金」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
泥棒成金のネタバレあらすじ：起・偽者をつかまえろ
南仏リビエラでは宝石泥棒が世間を騒がせていた。その手口はかつて「キャット」と呼ばれた宝石泥棒の手口に酷似していたため、警察は再び「キャット」ことジョン・ロビーの仕業かと彼のもとへ向かう。しかしジョンは以前に捕まって自由の身になって以来堅気となり、リビエラの別荘で悠々自適の生活を送っていた。身に覚えが無いにもかかわらず警察に疑われた彼は、かつての仲間に裏切り者がいるのではないかと当時の仲間ベルタニが経営するレストランを訪ねる。しかし仲間たちのほうでもジョンの仕業と考えていて、自分たちがとばっちりを受けることを恐れジョンを敵視していた。そこでジョンは偽者が盗みに入りそうな屋敷に先回りして真犯人を明らかにしようと決意する。ベルタニの指示でカンヌのビーチクラブへ行き、そこで保険会社の調査員ヒューソンに会って、宝石を持っている人のリストをもらう変わりに盗んだ宝石をヒューソンに渡す取引をする。
泥棒成金のネタバレあらすじ：承・成金母娘
手始めにジョンはヒューソンが会うと言っていたアメリカ人の石油成金スティーブンス母娘に近づく。が、盗まれたのは他の客だった。その時、ジョンは偽キャットから「深入りするな」という警告のメッセージを受け取る。そんなジョンにスティーブンス夫人の娘フランシーが興味を抱き、彼を遠出に誘う。途中、リストの中にあった貴族の屋敷に立ち寄り下見をしていると、ジョンはそこでベルタニの姿を見かけて不審に思う。フランシーはジョンの様子から彼が「キャット」だと見抜き、宝石への欲望を駆り立てようと挑発する。否定しながらもジョンはフランシーに惹かれ、2人は一夜を共にするが、その晩ついにスティーブンス夫人の宝石が盗まれる。フランシーはジョンの仕業だと決めつけて警察に通報するが、スティーブンス夫人はジョンを信じて彼を逃がし、フランシーをいさめる。
泥棒成金のネタバレあらすじ：転・現れた偽キャット？
再び追われる身となったジョンだったが、そこへ偽キャットから犯行予告が届く。今度こそ偽者を捕まえようと警察と共に張っていると、底に現れたのはベルタニのレストランで働くフサールで、彼はジョンと格闘した末海に落ちて死んでしまう。「偽キャット」がフサールだったことで一件落着したように見えたが、彼が義足だったことからジョンは偽キャットはフサールではないと考えていた。彼は下見に訪れた貴族の屋敷でパーティが開かれることを知り、そこに偽キャットが現れると確認して最終対決を決意する。
泥棒成金の結末：新旧対決
パーティの晩、ジョンは屋根の上で偽キャットを待っていると、深夜になって怪しい影が現れる。捕まえてみるとその人物はフサールの娘ダニエルだった。屋根から落ちそうになったダニエルは、黒幕がベルタニで、彼の指示でやっていたことを告白する。やっと身の潔白が証明され、平穏な生活が戻ったジョンの元にフランシーが訪れる。彼女は疑ったことを謝罪し、2人は改めて別れを口にするが、どうやらフランシーには去るつもりはないらしい。
「泥棒を捕まえたければ泥棒を使え」という格言がある。
まるでこの映画のために作られたようなフレーズだが、スリラーの神様・アルフレッド・ヒッチコック監督の「泥棒成金」は、この言葉に想を得て作られた映画に他ならない。
映画の舞台は、南仏のリヴィエラ海岸だ。
主人公ジョン・ロビーに扮するケイリー・グラントは、かつて凄腕の宝石泥棒だったが、今はこの稼業から足を洗い、優雅な独身生活を楽しんでいる。
ところが、その安眠を破るかのように窃盗事件が相次いで起こる。
しかも、その犯行は、かつて「キャット」と綽名されたジョンの手口を彷彿とさせるものだった。
保険会社の依頼を受けた彼は、嫌疑を晴らすべく、真相の探求にとりかかるのだった——-。
ヒッチコック監督自身も、「軽い話だ」と認めている通り、この映画はサスペンスとしては少し弱い。
後に、ブレイク・エドワーズ監督の「ピンク・パンサー2」のヒントとなったくらいで、謎や仕掛けも特に緻密ではない。
だが、これはとても滑らかでロマンティックなコメディ・スリラーの愛すべき作品になっていると思う。
この映画の公開当時、51歳だったケイリー・グラントの優雅さは、何度観ても素晴らしい。
加えて、背景に選ばれたリヴィエラの視覚的処理や、至るところに設けられた二重性も、ヒッチコック監督ならではの技を感じさせる。
だが、最大の二重性は、グレース・ケリーの存在だと思う。
この映画の彼女は、豪華なだけではなく、密かな獣めいた匂いさえ放っている。
クール・ブロンドの陰に潜む、猛々しいエロスを見抜いたヒッチコック監督は、さぞかしご機嫌だったことだろう。