東京のえくぼの紹介:1952年日本映画。書類に判子を押すだけの、名ばかりの社長さんは毎日の業務にうんざりしていました。思い切って逃げ出してみても、すぐに見つかってしまい、あげくの果てにはスリに間違えられてしまいます。しかも、被害者の女性は新しく会社に入った社長秘書でした。
監督:松林宗恵 出演者:紀の國屋文太郎(上原謙)、河上伸子(丹阿弥谷津子)、河上大作(柳家金語楼)、巡査(小林桂樹)、婦人警官(高峰秀子)ほか
映画「東京のえくぼ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「東京のえくぼ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「東京のえくぼ」解説
この解説記事には映画「東京のえくぼ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
東京のえくぼのネタバレあらすじ:起
満員の通勤バスの中、会社の面接へ向かう途中の女性・河上伸子の鞄から財布が盗まれます。バスの運転手はお客達の騒ぎを聞いて、すぐさま交番にバスを止めました。警察によって、全員の鞄の中身を確認されていくと、一人の男性の鞄の中から女物の財布が見つかり、早くも調査はお開きとなります。男性は交番の中にしょっぴかれ、事情聴取を受けますが、飄々とした態度を崩さず、いっこうに自分がやったとは認めません。警察は一応、本人の財布かどうか確認するため、いくら入っていたかを教えるよう、伸子に言います。大体の金額でいいからという警察に、伸子はお札や硬貨の数までぴったりと答えてみせ、一同を感心させるのでした。それから財布を受け取ると、「面接に落っこちたらあんたのせいだから」と言い残し、伸子は面接会場へ急ぎます。
東京のえくぼのネタバレあらすじ:承
一方、引き続き取り調べを受けている男性は、依然として罪を認めず、とうとう拘留されてしまいます。ハットを被り、眼鏡をかけ、ちょび髭をはやし、きっちり正座して待機する男性は留置所で異質な感じがします。実はこの男性も被害者で、真犯人に財布を入れられ、罪をなすりつけられたのでした。伸子は見事、紀の國屋物産の試験に社長秘書として合格します。ところが、肝心の社長が行方不明らしく、大捜索が始まってしまいます。社長の失踪は新聞にまで取り上げられ、新聞の顔写真をみた交番の警察は、まさに拘留中のスリ犯ではないかと驚愕します。慌てて紀の國屋物産に連絡をすると、会社の重役達が社長・紀の國屋文太郎を留置所に迎えにくるのでした。ところが、社長室に戻っても文太郎はぶすっとして、少しも嬉しそうではありません。それもそのはず、社長とは名ばかりで、実際はロボットのように書類に盲判をつき、事業内容や人事には少しも関われずにいたからです。そんな中、やっと社長秘書・伸子と対面します。二人はお互いの顔を見て驚きましたが、黙って仕事に戻ります。その日一日、社長のスケジュールについていき、仕事を覚えることになった伸子。様々な会合や、祝賀会や追悼式などで挨拶やスピーチなどをこなし、食事をする暇もない社長。会社の顔というだけでいろんなところに連れ出され、引っ張り回される社長を見て、伸子はなんだか不憫に思えてきました。
東京のえくぼのネタバレあらすじ:転
ある日の食事時、社長室で二人きりになった文太郎は、伸子に名ばかり社長である空しさをこぼします。毎日盲判をついてばかり、先代の社長たちにならって、ちょび髭をはやし、目が悪いわけでもないのに眼鏡をかけさせられ、まるで自分らしさがない。趣味であるトランペットが吹きたいが仕事が追ってくると愚痴る社長に、伸子は邪魔が入らないよう「ついうっかり」と社長室の受話器をはずたままにし、内側から鍵をかけて社長にトランペットを吹くよう促します。しかし、たったそれだけで社内は大混乱です。盲判作業は滞り、専務からおしかりの言葉を受けてしまうのでした。しかし、伸子はまたもや社長の脱走計画に手を貸します。ひげを剃るためのカミソリを渡された社長は、トレードマークのひげと眼鏡を脱ぎ捨て、こそこそと社長室を出て行くのでした。
東京のえくぼの結末
外で落ち合った文太郎と伸子。伸子は社長を家へかくまうことに決めました。家でうっかりと「社長さん」と呼んでしまわないように、偽名で「左千男さん」ということにして、家の二階で下宿することにしたのです。身分を隠したまま、伸子の家族とも親しくなり、人の暖かみに触れながら、思いっきりやりたいことをやる毎日が続きます。そんなある日、伸子の父親・大作がおせっかいを焼いて、自分の勤めている会社に文太郎の働き口を作ってきてしまいます。そこはこともあろうに、紀の國屋物産の子会社なのでした。文太郎は言われるままにそこで働き始めます。一方、本社はもちろん混乱を極めています。社長のたった一つの判子がないばかりに、数々の取引先から契約解消の申し出が殺到し、重役たちは頭を抱えるのでした。その影響は文太郎が働く子会社へも伝わります。まじめに働く従業員達の困り果てようを見て、文太郎は部下達を省みず、信頼せずに逃げ出していたことを悔やみ、自ら社長室へ戻ります。そして、伸子と共に溜まりに溜まった書類に判をつき、会社を通常運転に戻していきます。やっと全ての書類に判をつき終わったとき、文太郎は伸子に一枚の書類を渡します。それは伸子に妻になってほしいという書類でした。伸子は「私の盲判ね」といって、書類を承諾し二人で微笑みあうのでした。
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