Touch the Sound タッチ・ザ・サウンドの紹介:2004年ドイツ映画。パーカッション奏者として成功したグラミー賞受賞アーティスト、エヴリン・グレニーが世界的ギタリスト、フレッド・フリスとCDを制作するにあたって、彼女にとって音とはどういうものなのか探求する。
監督:トーマス・リーデルシェイマー 出演:エヴリン・グレニー、フレッド・フリス、鬼太鼓座
映画「Touch the Sound タッチザサウンド」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「Touch the Sound タッチザサウンド」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「Touch the Sound タッチザサウンド」解説
この解説記事には映画「Touch the Sound タッチザサウンド」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
Touch the Sound タッチ・ザ・サウンドのネタバレあらすじ:起・エヴリンの音
打楽器奏者のエヴリン・グレニーは、音が自分を人間たらしめていると語る。駅の構内でスネアドラム一つの演奏で拍手喝采を浴びる彼女。
彼女の周りのいたるところに音は存在している、それは道を走る車の音だたり、空調の音だったりと多岐にわたる。音楽家の彼女にとって、音の旅は興味深い体験。
ドイツのケルンで、フレッド・フリスと初共演でCDを制作することになった。机上の打ち合わせはせずに、廃工場に楽器を持ち込みながら、工場に残された様々な工具や廃材で音を出してみる二人。
打楽器奏者は叩くだけではない。もちろん他の楽器の奏者同じく、音を出すという事は、音を深みまで探しに行くという事。聞くと言うのは触れるのと同じ、届いてくる事に手を伸ばして触れる感じ。彼女にとって、音は身体で感じる物だった。
Touch the Sound タッチ・ザ・サウンドのネタバレあらすじ:承・聴力を失いつつあった頃
スコットランド、アバディーンシャーで、生まれ育ったエヴリンは、8歳の頃にピアノを習い始め、11歳で補聴器が必要と診断される程聴力が落ち、中学校は聾学校へ通うことを薦められたが、好きなことをやらせると言う方針の元、普通科の学校へ上がり、音楽に力を入れていたその学校で打楽器に出会った。壁に触るように言われ、そうしてエヴリンは耳から聞える音は減ったが、体を通して音に触れるようになった。
聾学校に教えに行ったエヴリンは、少女にドラムの振動の事を教えると、補聴器を外して音を感じたいと言う彼女にたくさんの楽器を弾いて聞かせた。
エヴリンの自宅兼事務所は、英国ケンブリッジシャーにある。彼女は音との繋がり感じるために演奏中は裸足だった。
読唇もでき、聴力が残っているにしてもどうやって音楽家になったのか、どうやって音を聞くのかという質問は絶えない。しかし彼女にとって音は体で聞くものだった。
フレッドに音楽家にとって呼吸法が大切だとした後、日本の富士市で和太鼓とのセッションの際、日本語の「生きる」は「息を練る」に通づると語る青年がいた。
Touch the Sound タッチ・ザ・サウンドのネタバレあらすじ:転・音と対極にある物
エヴリンにとって演奏中に不安はないが、日常生活で耳から入る音でバランスを崩すことがあると言う。それでも日本の居酒屋の床に缶やお皿で即席のドラムセットを作り演奏することもあった。
龍安寺の石庭を見ながら、静寂は最も大きく重い音。音の対極は静寂ではなく、静止するなにか、おそらく一番近いのは死。
アーティストは子供の頃の興奮を忘れない人間。兄の経営するグレニー農場で兄と思い出話をするエヴリンは、初めてピアノを弾いた時の事や、父がアコーディオンでスコットランドの曲を弾いていた事、母は音楽を奏でるのは好きではなかったが楽譜は読めた事、両親のおかげで音楽が自然に備わっていったと語った。兄はエヴリンには父親が関わる天性の物がある思っていた。
その父親は子供が生まれてから音楽を止めたが、クリスマスイブにアコーディオンを弾いてくれた事を、今でもエヴリン覚えている。彼女にとって父親は、静かなエネルギーであり、また自分の中にこっそり取っておきたいもの。父親は亡くなっても心の中にあり、ひらめきは彼女を前進させ、殻をも破る。
このインタビュー撮影の二日後農場は火事で焼けたが、兄と動物は無事だった。
Touch the Sound タッチ・ザ・サウンドの結末:音楽の力
いかに自分らしくあるか、何を愛しているのか。自分の役目は音のパワーをもたらす事だとエヴリンは語る。すべては消えてなくなる、音楽もなくなるけど、音は生き続ける命のように消えることがない。
崖の上で管を通り響く風の音と、崖下で砕ける波音が重なる。
美術でもダンスでも、触れると言う事が大切。耳で聞かなくても五感を使う。第六感は何かの機能が失われた時に生まれる物。もし、聴覚が完全に失われても、エヴリンは音楽家であり続けるだろう。
人間は一人一人に音があり、人それぞれ音の受け止め方が違う。多種多様で一枚の楽譜のよう。エヴリン自身もその音符の人つ。皆それぞれが、音符の一つ。
マンドリンの演奏と共に、水や風のなど自然の様々な風景が流れる。
以上、映画「Touch the Sound タッチ・ザ・サウンド」のあらすじと結末でした。
Touch the Sound タッチ・ザ・サウンドのレビュー・考察:音と接する方法
音楽演奏の他にも、街の音、生活音、自然の音、等々たくさんの音が作品の中に出てくる。それは「音楽」と銘打つ前に「音」という物がこの世にあふれていて、その一つ一つをエヴリンが感じているのだとみているこちらにも伝わってくる。また目に見えない風は草や水を波打たせ、特に水輪が広がって行く様は、音が波として伝い広がって行く様を可視化しているようにも見える。彼女が身体で音を感じるように、この作品は音を視覚的に表現している、着眼点のおもしろい音楽ドキュメンタリーだと思う。
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