運命を分けたザイルの紹介:2003年イギリス映画。アカデミー賞ドキュメンタリー長編賞を受賞したケヴィン・マクドナルド監督が、ベストセラー・ノンフィクションの「死のクレパス アンデス氷壁の遭難」を完全映画化。若き英国人の登山家が体験した、信じがたいほど過酷な奇跡のサバイバル。本人達の語りと共に、俳優達のリアルな再現映像で見事に描かれている。
監督:ケヴィン・マクドナルド 出演者:ジョー・シンプソン(本人)、サイモン・イェーツ(本人)、リチャード・ホーキング(本人)、ブレンダン・マッキー(ジョー・シンプソン)、ニコラス・アーロン(サイモン・イェーツ)、オーリー・ライアル(リチャード・ホーキング)ほか
映画「運命を分けたザイル」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「運命を分けたザイル」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「運命を分けたザイル」解説
この解説記事には映画「運命を分けたザイル」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
運命を分けたザイルのネタバレあらすじ:起
「登山は楽しい。楽しいから登る。それだけだ」―― そう語るのは、若き英国人登山家ジョー・シンプソン。世界中の山に登るのが楽しくて仕方がなかったと言う彼が、過去に体験した壮絶な遭難事故を振り返ります。1985年。当時25才だったジョー・シンプソンは、同じく英国人の登山家で21才のサイモン・イェーツとタッグを組み、標高6400メートルの未踏の西壁、南米のシウラ・グランデ峰に挑みます。これまでアルプスで何度も登頂を達成していた彼らでしたが、大いなる未知の世界や新ルートに挑むことに喜びを感じていました。シウラ・グランデ峰といえば、未踏の中でも最大の難関。ジョーの興奮はいやがおうにも高まります。ロバに乗り、登山口のキャンプ地まで向かった2人は、同行者のリチャードにキャンプの留守番を頼みます。リチャードはサイモンがリマでたまたま出会った一人旅中の若者で、山登りに関してはほとんど素人でした。ジョーとサイモンの登山法は、アルパイン・スタイルと呼ばれるものです。ベースキャンプを起点に、着替えや用具を持って一気に登るというこの方法。シンプルな反面、小さなミスが命とりになるため失敗は許されません。
運命を分けたザイルのネタバレあらすじ:承
1日目。ピッケルで氷壁を削り、ジョーとサイモンが一歩一歩着実に上がっていきます。驚異的なスピードで300メートルを登った2人は、互いの体をザイルでつなぐという複雑なスタイルに挑戦します。もしも相手が落ちれば、自分も必ず落下する。相手を信頼しきれなければ決してできないことだと、ジョーは言います。2日目。前日があまりに順調だったため、2人は成功への自信に満ち溢れていました。ところが予想外に脱水が激しく、かといって雪を解かすガスも不十分です。吹雪と寒さの中、なんとか標高6100~6200メートル地点に到達します。3日目。雪崩により、雪のひだができた雪壁。滑り落ちる危険が高く、2人は緊張を強いられます。一瞬、頂上へ行くのは無理だと考えたと、当時を振り返ってジョーが笑います。頂上で広大な景色を楽しんだのも束の間、問題は下山です。遭難の80%が下山中に起こっているためです。急な雪のひだにサイモンはショックを受けます。2人は1時間以内でルートを見失い、さらに上部で起きた雪崩が彼らをかすめて落ちて行きます。その夜、水分補給のための飲み物を作っている最中、ガスが切れてしまいます。
運命を分けたザイルのネタバレあらすじ:転
4日目。今回の登山に勝利を感じていた2人。しかし、稜線を分断する絶壁から落下したジョーは、右足を骨折して悲鳴をあげます。サイモンはジョーに鎮痛剤を与えますが、ジョーは自分は置き去りになるだろうと悟ります。しかしサイモンは、45メートルのザイルを2本結んで90メートルにし、ジョーと自分を繋ぐことで下山するという手段に出ます。体感温度が零下約60度の中、ザイルを結んでは解き、ジョーを下ろすサイモン。急に傾斜がきつくなり、ジョーは悲鳴を上げて落下します。しかし強風のためサイモンは気づきません。ジョーが下を見ると、クレパスが口を開いています。1時間半が過ぎ、周囲はすっかり暗くなります。ついに決断したサイモンはナイフを取り出し、ジョーとつながれていたザイルを切断。ジョーはそのまま約45メートルもクレパスに落下します。切れたザイルで、ジョーはサイモンの意志を知ります。冷たい空間の中、孤独を感じたジョーは子どものように泣きじゃくります。5日目。ジョーはひたすらサイモンの名を呼びますが、サイモンはジョーの死を確信して荷物をまとめ、罪悪感に駆られながら氷河を下ります。しかし、キャンプ地でサイモンを迎えたリチャードは、少しも彼を責めませんでした。
運命を分けたザイルの結末
クレパスの底にいたジョーが上を見ると、太陽光が降り注いでいます。あれが脱出口だと感じたジョーは、激痛を堪えながら足をひきずり斜面を進みます。ついに外へ出た時、ジョーは安堵感のあまり笑い出します。6日目。ジョーは迷路のようになった雪道をひたすらキャンプ目指して進みます。用具を捨てて荷物を軽くし、折れた脚をマットで補強し立ち上がります。一方、サイモンとリチャードは翌朝キャンプを発つ準備を始めます。7日目。ジョーは回想します。孤独感と見捨てられた寂しさが、自分を前に進ませたと。しかし、岩場の水をすすった途端、活力がみなぎります。足をひきずり進むと、リチャートとサイモンの足跡を発見します。すでに2人はキャンプを去ってしまったかもしれないという考えが頭をよぎり、サイモンの名を叫ぶジョー。彼の精神は混乱をきたし、なぜかボニーMのポップな曲が頭の中で鳴り響きます。ジョーは何度もサイモンの名を叫び、絶望に泣き続けます。真夜中、テントの中にいたリチャードとサイモンはついにジョーの声を耳にします。まさかと思いながら暗闇の中を探し回ると、キャンプから200メートル離れたところでジョーを発見します。ジョーは体重が3分の2に落ち、2年と6度の手術を経て再び登山を始めます。サイモンはザイル切断で山岳界からバッシングを受けますが、ジョーは彼を擁護し続けています。
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