エレニの旅の紹介:2004年フランス,ギリシャ,イタリア映画。物心ついたときから難民のエレニは愛する者と土地を転々としていた。やがて否応ない時代の奔流に飲まれた彼女に訪れた結末とは。テオ・アンゲロプロス監督の「20世紀三部作」の一作目。
監督:テオ・アンゲロプロス 出演:アレクサンドラ・アイディニ(エレニ)、ニコス・プルサディニス(アレクシス)、ヴァシリス・コロヴォス(スピロス)、ヨルゴス・アルメニス(ニコス)、エヴァ・コタマニドゥ(カッサンドラ)、ほか
映画「エレニの旅」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「エレニの旅」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「エレニの旅」解説
この解説記事には映画「エレニの旅」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
エレニの旅のネタバレあらすじ:花嫁は花婿の息子と逃げた。
1919年、オデッサから逃れた最後のギリシア難民、その中に孤児のエレニがいた。彼女を育てたスピロスは、妻の亡き後、エレニを妻に迎えようとしていたが、彼女は息子のアレクシスの子供を身ごもってしまう。スピロスの親戚の女性に付き添われ病気だと偽って、テサロニキの病院で双子を出産しそのまま裕福な夫婦に預け、もとの村へ帰ってきた。結婚式を前に家族は音楽隊を呼び主演を開いた。その中にはアコーディオンを弾くアレクシスの姿もあった。彼は家のそとからエレニの部屋に呼び掛けた。そして、窓越しに村を流れる河の始まりを見に行こうという約束を交わした。 結婚式の当日、エレニはアレクシスと音楽隊の仲間の自動車に乗って町まで逃げた。案内されたのは避難民のキャンプになっている劇場で、皆ボックス席を寝床にしていた。 村では、娘のように育てたエレニを妻にできないとなだめられ、河のほとりで花嫁のベールを見つけたスピロスは打ちひしがれるもあきらめきれず、二人を追って町の劇場までやってくる。逃げるなら今のうちだという手引きに劇場から出ようとする二人に、その娘は私の妻だと、結婚式の場で恥をかかされたスピロスの叫びが聞こえた。
エレニの旅のネタバレあらすじ:アメリカに馳せる夢
アレクシスはアコーディオンのニコスに腕を買われて、音楽のたまり場と呼ばれる倉庫で仕事をもらうようになった。そんな彼はいつかアメリカに行きたいとエレニに夢を語った。そんな折、彼は近くの町まで巡業に誘われが、行ってみると、演奏するはずの店は閉店していた。芸人のような生活にうんざりしていた彼に、大物のマルコスに演奏を聴いてもらう機会がやってくる。早速彼を訪ね自作の曲を披露すると、アメリカへの巡業に誘われた。それを聞いていたエレニは、捨てられるのではないかと波止場で一人過ごした。もちろんアレクシスは彼女を見捨てるつもりなどなく彼女を波止場まで迎えに来た。 ほどなくして、エレニは二人の息子に再開する。彼らはヤニス、ヨルゴスと名付けられていて、最初こそ打ち解けられなかったけれど、次第にエレニをママと呼ぶようになった。 しかし、時代はファシズムが台頭。町には憲兵が反政府の演説を行う者を取り締まっていた。そんな中、音楽のたまり場の旅芸人たちは町の祭りを開いても憲兵に怯えるだけだと中止しようかと迷ったが、酒場でささやかなダンスパーティーを催した。やってきた大勢の町の人の中にスピロスの姿あった。彼はアレクシスにアコーディオンを弾かせエレニと踊った。そして、帰ろうとした廊下で倒れ絶命した。アレクシスは自分が殺したと自らを責めた。
エレニの旅のネタバレあらすじ:スピロスの埋葬と帰郷
エレニとアレクシスは二人の息子を伴って、スピロスの葬儀のためにいかだで故郷の村へ帰った。その村には以前のような活気はなかった。村人は皆引きこもって彼らを見守り、スピロスの持ち物だった羊は皆、家の横の木につるされていた。エレニたちが家に入ると、どこからともなく石が投げられ窓ガラスは割られてしまった。その夜、嵐で川があふれ村は水没、エレニたちの家も一回まで水が来ていた。翌実船で近くの丘まで逃げるが、村人は誰一人声をかけてはくれなかった。ただ彼らの前で立ち止まった一団が、忌まわしき呪いはどこまで広がっていくのかとボヤいた。エレニたちが町に返ってくると、町にも人がおらず、ニコスが「民主主義は自殺した。ファシズムが欧州を覆う。もう逃げ場がない」と嘆いた。波止場で楽器を弾いていると、銃声が聞こえ、家に逃げ込んだエレニたちが見たのは銃弾に倒れたニコスだった。彼はアメリカに発つアレクシスに別れを言いたかっただけだった。マルコスの一団は遅れているアレクシスにボートを残して先に船に向かった。波止場でアレクシスは二人の息子にエレニを頼み、エレニは編みあがらなかった残防寒具を差し出した。アレクシスはその糸の端をもってボートに乗り込んだ。ボートが離れると編み物が溶けてゆき、やがて二人をつなぐ意図もとぎれてしまった。時が立ちアメリカについたアレクシスからの手紙には、入国審査の書類がなかなか通らず半死半生でたどり着いたと便りが来た。それを読んでいたエレニのもとに警察がやってきた。彼女は眠る息子たちに別れも告げられぬまま、反逆者隠匿の角で投獄されてしまった。アメリカから届く手紙で、アレクシスはギリシアの大戦への参戦を嘆いていた。
エレニの旅のネタバレあらすじ:釈放されたエレニを待っていたもの
数年後、釈放されたエレニは、息子が二人とも兵士なので司令部で消息を聞くようにと言われ、さらに太平洋戦線でアレクシスと思われる米兵の遺体から見つかった四年前の手紙を渡された。一人牢獄から出たものの、ショックのあまり倒れてしまう。汽車でとある河辺の戦場に連れてこられる婦人たち、その中にエレニの姿もあった。彼女は河の縁で死んでいるヤニスに声をかけた。その場で倒れたエレニは昔の村人の家へ運ばれた。寝言で水、石鹸、息子に手紙を書くための紙を求めるエレニ、そして、自分はどこにいても難民、三歳の時に河辺で泣いていた所を拾われたのだと語った。 大戦後も内戦のギリシア、立入禁止区域に連れて行ってもらったエレニはそこが戦場だったこと、政府軍と反乱軍の境目だったことを教えてもらう。そしてそこはかつて政府軍と反乱軍に分かれたヤニスとヨルゴスがエレニが牢獄でボロボロになって死んでしまったと話した場所でもあった。エレニを連れてきた女性は、息子さんはこの先の廃屋で眠っているというので、止められつつも堤を越えるとそこには、昔水没した村のような光景が広がっていた。水辺にあった船で廃屋までたどりついたエレニはそこで死んでいるヨルゴス見つけた。 釈放時に渡された手紙で、アレクシスは自分はケラマにいて、オキナワは地獄だと書き綴っていた。しかしそれと同時に、エレニからの手紙がギリシアから沖縄まで来たことを喜びもしていた。彼は夢の中で、エレニと河の始まりの草原へ行ったと語った。夫も二人の息子も亡くしたエレニは、もう思う相手が誰もいないと泣き叫んだ。
以上、映画エレニの旅のあらすじと結末でした。
エレニの旅のネタバレあらすじ:アリアドネになれなかったエレニ
波止場でアレクシスを送り出す件で、糸をもってアメリカ行きの船に向かうシーンは、ギリシア神話のアリアドネとテーセウスの一節を彷彿とさせる。クレタの迷宮から糸を手繰ってアリアドネのもとに一度は帰ったテーセウスが彼女を置き去りにしたように、アレクシスはエレニの元には戻らなかった。そして船に向かうアレクシスの持つ糸が途中で途絶えてしまったことで、アレクシスとエレニの波止場のシーンは二人がつかの間の再会さえできない事を暗示しているように思えてならない。
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