沈黙の戦艦の紹介:1992年アメリカ映画。スティーヴン・セガール主演作『沈黙』シリーズの記念すべき第1作です。退役を控える実在のアメリカ海軍の戦艦ミズーリが元CIAエージェント(トミー・リー・ジョーンズ)率いるテロリスト集団に襲撃され、元特殊部隊隊員のコック(セガール)はその秘められた格闘能力を活かしてテロ集団に立ち向かいます。
監督:アンドリュー・デイヴィス 出演者:スティーヴン・セガール(ケーシー・ライバック)、トミー・リー・ジョーンズ(ウィリアム・ストラニクス)、ゲイリー・ビジー(クリル中佐)、エリカ・エレニアック(ジョーダン・テート)、コルム・ミーニイ(ドーマー)、パトリック・オニール(アダムス艦長)、ニック・マンキューソ(トム・ブレーカー)ほか
映画「沈黙の戦艦」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「沈黙の戦艦」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「沈黙の戦艦」解説
この解説記事には映画「沈黙の戦艦」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
沈黙の戦艦のネタバレあらすじ:起
第二次世界大戦から湾岸戦争まで様々な任務に就いてきた歴戦のアメリカ海軍のアイオワ級戦艦ミズーリ。退役を間近に迎えたミズーリは艦長のアダムス大佐(パトリック・オニール)の指揮のもと、ハワイからサンフランシスコへ向けて最後の航海に出航しました。
アダムス艦長の誕生日を翌日に控え、コック長のケーシー・ライバック(スティーヴン・セガール)は腕によりをかけた料理を振る舞おうと考えていました。その一方で、副長のクリル中佐(ゲイリー・ビジー)もまたミュージシャンやダンサーを招いてのサプライズパーティーを計画していました。
アダムス艦長の誕生日当日、ライバックはかねてから折り合いの悪いクリル中佐によって厨房の保冷倉庫に監禁されてしまい、その間に総勢30名にも及ぶバンドマンやダンサーのジョーダン・テート(エリカ・エレニアック)らがヘリでミズーリを訪れました。
沈黙の戦艦のネタバレあらすじ:承
ところが、クリル中佐が招き入れたゲストの正体は元CIAエージェントのウィリアム・ストラニクス(トミー・リー・ジョーンズ)率いるテロリスト集団であり、クリル中佐はストラニクスと裏で手を組んでいたのです。ストラニクスの目的はミズーリに搭載されている核ミサイルを強奪して他国に売り飛ばすことであり、ストラニクスらは手始めにアダムス艦長を殺害、他の乗員たちを甲板下の船倉や船室に監禁してしまいました。やがてライバックの存在に気付いたストラニクスらは厨房に手下を送り込みますが、ライバックはその秘められた戦闘能力を発揮して敵を返り討ちにし、パーティー会場でケーキの中に潜んでいたジョーダンを助けて仲間に引き入れました。
一方、ミズーリの異変に気付いた海軍は、海軍大将のベーツ提督(アンディ・ロマーノ)やガーザ大佐(デイル・ダイ)、そしてCIA時代のストラニクスの上司だったトム・ブレーカー(ニック・マンキューソ)らからなる対策本部を設置、ミズーリに向けてアパッチヘリを差し向けました。
沈黙の戦艦のネタバレあらすじ:転
ライバックは船室に監禁されていた乗員たちを救出すると反撃態勢に出ました。一方のストラニクス一味は手下殺害の手際の良さからプロの仕業だとみていましたが、艦長室の中の資料からライバックの正体を知り驚愕してしまいます。ライバックは実は元海軍特殊部隊ネイビーシールズの対テロ部隊の元指揮官であり、格闘や爆弾などに精通する非常に優秀な隊員だったのですが、パナマ侵攻時の作戦ミスにより多数の部下を失い、責任を押し付けられて降格させられていたのを能力を買ってくれたアダムス艦長に拾われ、素性を隠してコックとして働いていたのです。
ストラニクスは密かに用意していた脱出用の潜水艦に核弾頭を移す作業に入る一方、船倉にスプリンクラーの水を流して乗員たちを水死させようと目論みましたが、ライバックは救出した仲間たちとともに敵を倒しながらスプリンクラーを止めました。しかし、ストラニクスらは対策本部が差し向けたアパッチヘリを対空ミサイルで撃ち落とし、対策本部は核ミサイルの流出阻止を優先すべくミズーリをミサイルで沈める決断を下しました。
沈黙の戦艦の結末
ライバックはジョーダンや仲間たちの助けを得て潜水艦の作業を妨害させ、そのうえでミズーリの主砲を動かし、潜水艦をクリル中佐ごと撃沈することに成功しました。そして手下を全員殺され、追い詰められたストラニクスは最後の手段としてとうとう核ミサイル2発をホノルル目がけて発射しました。1発はスクランブル発進した戦闘機によって撃破されましたが、もう1発はそのままホノルルへ飛んでいきました。
ライバックはストラニクスとの一騎打ちに挑み、壮絶な死闘の末に葬り去ると対策本部に連絡、核ミサイルの解除コードを聞き出し、ミサイルをホノルル着弾寸前で空中で自爆させることに成功しました。ミズーリはようやく解放され、乗員の誰しもがライバックを称えるなか、ライバックはジョーダンとキスを交わしました。その後、アダムス艦長の葬儀ではライバックらミズーリ乗員一同が参列、艦長に最後の敬礼を贈りました。
タイトルのネーミングにセンスが無いということは誰しもが思うことです。映画の内容としては善かっただけに余計に腹が立つのです。興行という性格上、注目を集める(はず)のタイトルとなることに理解は出来ても…ということですよね。戦勝国の特権は勝利のシンボルを堂々と誇示できること。映画の舞台となった戦艦「ミズーリ」は対日戦での輝かしい象徴として現在でも真珠湾にその勇姿を現しています。本作でも姿を当然見せていますが、派手なアクションシーンは別の記念艦である「アラバマ」で撮影されました。両艦は中央部の構造の外見こそ似た部分がりますが、建造のコンセプトが違うため、長さを含めて相当に異なっていることにも御留意を。まあ、上手く編集および撮影をされていますから、この差異は大した問題にも感じないのですがね。老朽化のために退役するとはいえ、現役の戦艦を乗っ取る。現代的な艦船とは異なる時代の装甲を施された艦は実に頑丈に造られており、テロリストの携行する小火器程度では破壊工作は期待しにくいのですけれど、見事に裏切り者の加勢もあって人質を取って強奪に成功する。ヒロイン役の登場を含めて、テロリストがパーティのために呼ばれた芸人に扮して乗り込むという手法はまずまずでした。しかし主人公の手際が鋭い。彼は特殊作戦を遂行する海軍部隊のエリートの一人でしたが、作戦遂行上のトラブルから問題を引き起こし、現場から追放されて、本艦の艦長の好意によって一コックとして勤務していた。こういう設定に目新しさはありませんけど、誰しもが受け入れてくれる筋書きです。訓練から遠ざけられていても鍛え上げられた彼は艦内で起きている異変に一早く気付き、体得した技術で敵を次々に倒して行く。アクション映画の見本ですよね。テロリストの手で発射された核巡航ミサイルの始末が簡単過ぎたのは失笑物でしたけれど。私が一番印象に残っているのは、強奪された戦艦に救い主が偶然にも乗り合わせていて縦横無尽の活躍をして見せたのに、奪還失敗の暁には全ての責任をヒーローに負わせてしまうための根回しが最高司令部の中で行われていたことでしたが。まあ、現実はこんなも物なのでしょうな。この真相を知ったら、今度こそヒーローはミズーリを爆沈させてしまったかも。でもさすがに殺された艦長の葬儀で正装したコックの彼の凛々しい軍服姿は様になっていました。一連の「沈黙シリーズ」の幕開けとなった作品の、本当の姿に気付いてもらいたいのです。戦艦の主砲の内部と砲弾の装填、さららに発射シーンを見るだけでも十分に満足できた作品でした。