顔たち、ところどころの紹介:2017年フランス映画。ヌーヴェルヴァーグの祖母と呼ばれ女性映画監督の先駆者であり、2015年にはカンヌ映画祭で史上6人目のパルム・ドール名誉賞受賞者のアニエス・ヴァルダ。そして大都市から紛争地帯、東日本大震災直後の日本でも、そこに住む人々のポートレートを貼り出す参加型アートプロジェクト「Inside Out(インサイド・アウト)」で知られる正体不明のフランス人アーティストJR(ジェイアール)。そんな2人がフランスの田舎を旅しながら人々とのあたたかい触れ合いを通じて作品を作り出していくドキュメンタリー。監督・出演:アニエス・ヴァルダ、JR
映画「顔たち、ところどころ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「顔たち、ところどころ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
顔たち、ところどころの予告編 動画
映画「顔たち、ところどころ」解説
この解説記事には映画「顔たち、ところどころ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
「顔たち、ところどころ」のネタバレあらすじ:起
ツートン・マッシュルームカットの可愛いおばあちゃんアニエス・ヴァルダはヌーヴェルヴァーグの祖母と呼ばれ女性映画監督の先駆者でもある巨匠。彼女と一緒に作品を作るのは自らを「フォトグラファー+グラフィティアーティスト」と称し、ケニアのゲットー、ブラジルの貧民街、パレスチナの分離壁、そして東日本大震災後の日本など各国の壁を展示場所として人々の巨大ポートレートを貼り注目されている謎のアーティストJR(ジェイアール)です。作中で87歳と33歳という、54歳差の2人が出会い共に作品を作ることにしました。アニエスはJRがどんなときも決してサングラスを取らないことに気が付きます。それを軽やかにかわすJR。どちらともなく一緒に何かをやるべきだと意気投合し、JRのスタジオ付きトラックで旅に出ます。
「顔たち、ところどころ」のネタバレあらすじ:承
フランスの村々をめぐる旅が始まりました。まず2人の呼びかけに集まってきた人々にバケットを渡し、かぶりついて写真へ納めます。こうして壁一面に並べられた写真はまるで1本の長いバケットをみんなでかぶりついているようです。炭鉱労働者が住む街では昔の炭鉱作業員の写真を引き延ばして貼ったり、取り壊しが決まっている炭鉱労働者アパートでは最後の住人であるおばあちゃんを写真に納めたりと、その地にある想いは写真へ込められ貼られていきます。また、ある農村ではヤギが喧嘩をして傷つけ合わないよう角を焼いてしまうことが多い中で、角を切らずに飼育することを信条とする養牧者や、たった1人で800ヘクタールもの畑を耕す孤独な農夫とも出会います。みながカメラに収められるときには人生に裏付けられた笑顔を見せてくれました。
「顔たち、ところどころ」のネタバレあらすじ:転
旅は続き、とあるゴーストタウンに出くわします。建設の途中で放棄され、何十年も放置されたままの廃墟の村で、2人はピクニックを開きました。幼少の頃からどんどん廃れていく村を悲しく見ているだけしかできなかった村の人々は、好奇心で次々にモデルを名乗り出てくれます。ゴーストタウンだった村は隣の村からも次々と人がやって来て壁に張られたポートレートの作品を写真に収めていき、あっという間に活気で命を吹き返していきます。その後も、アニエスが慕っていた写真家ギイ・ブルダンとの思い出の海岸へ行き、崖から落ちた要塞にアニエスが1954年に撮影したギイ・ブルダンの写真を貼りました。翌日、この写真は海にさらわれてしまいますが「作品はいずれなくなるもの」と2人は気にも留めません。その後もJRの100歳の祖母に会いに行ったり、アニエスの親友であるゴダールが映画『はなればなれに』で作ったルーヴル美術館の最短記録を塗り替えたりと、計画しないことを条件にした旅は続いていきました。
「顔たち、ところどころ」の結末
だんだんと見えづらくなるアニエスの目、そして決してサングラスを取ろうとしないJR、時に歌い、時に険悪になりながら旅はだんだん終わりに近づいていきます。人と出会い、顔を貼ることでみんなを忘れない。そんなアニエスの夢を叶えてくれたJRに彼女はあるプレゼントを考えます。以前JRが会いたいと言っていたゴダールに会わせてあげようと、長年の友人であるゴダールの家を訪ねる約束を取り付けたのです。2人ははやる心を抑えゴダールの住む家へ訪れます。しかし、ゴダールは現れませんでした。代わりに、アニエスへ宛てたたった2行のメッセージがガラス窓に書かれていました。"ドアルヌネの人々へ"、"コート=ダジュールの方へ"と。ドアルヌネはかつてアニエスの夫であったジャック・ドゥミとゴダールが常連だったレストランの名前でした。"コート=ダジュールの方へ"はアニエスの1958年の作品名です。アニエスは「ジャックが死んだ時も彼は"ドアルヌネの人々へ"と書いてきたわ。私を苦しめたいのね」と嘆き肩を落としました。「こんなの面白くも何ともない」と言いつつも、それが彼だと涙を流すアニエス。JRは、ああすることでゴダールは映画の脚本を書き足してくれたんだと励ましました。そして、さらにアニエスを慰めようと、初めてサングラスを外し自分の瞳を見せました。アニエスは言いました。「優しいのね。よく見えないけれど、人柄は見えるわ」と。2人はそっと寄り添い、湖を見つめるのでした。
以上、「顔たち、ところどころ」のあらすじと結末でした。
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