ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏の紹介:2019年イタリア,アメリカ映画。19世紀、とある帝国の支配下にあるアフリカの辺境の町を舞台に、蛮族の来襲を理由に帝国政府から派遣された警察官僚による激しい弾圧と拷問、それに立ち向かう人々の姿を描いた作品です。ノーベル賞受賞作家J・M・クッツエーが自らの小説「夷狄を待ちながら」を基に自ら脚本を手掛け、「彷徨える河」でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたシーロ・ゲーラ監督がメガホンを執りました。ジョニー・デップが冷酷な警察官僚に扮する本作は第76回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門の正式出品作品となりました。
監督:シーロ・ゲーラ 出演者:マーク・ライランス(民政官)、ジョニー・デップ(ジョル大佐)、ロバート・パティンソン(マンデル准尉)、ガナ・バヤルサイハン(少女)、グレタ・スカッキ(マイ)、デビッド・デンシック(クラーク)ほか
映画「ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏の予告編 動画
映画「ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏」解説
この解説記事には映画「ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ウェイティングバーバリアンズ 帝国の黄昏のネタバレあらすじ:起
19世紀、とある帝国に支配されたアフリカ某国の辺境の城塞の町。この町は民政官(マーク・ライランス)の統治の下、人々は穏やかに暮らしていました。
夏のある日、この町に帝国政府から派遣された秘密警察所属の官僚・ジョル大佐(ジョニー・デップ)が派遣されてきました。この一帯には蛮族が攻めてくるとの噂が流れており、ジョル大佐は辺境の調査のために派遣されたのです。
ジョル大佐はこの辺の地理や情勢には疎いため、民政官に事情を問いました。民政官は帝国の管轄外に居住する遊牧民の実態まではわからないものの、彼らとは何ら問題なく交流していると説明しました。その後、民政官は町の住民からジョル大佐がどのような人物であるか尋ねられました。この町の住民は誰もが蛮族の噂を信じていませんでした。
翌朝、民政官はジョル大佐を連れて町を案内しました。途中、ジョル大佐はこの町に囚人を収容する牢獄があるか問いました。民政官はこの町には大した犯罪がないことを伝え、ジョル大佐を留置所代わりとしている古い兵舎に案内しました。
そこでは羊泥棒の容疑をかけられた遊牧民の男二人組が収容されていました。民政官はこの二人は盗賊ではなく、年老いた叔父が病を患う甥のためにこの町で薬を手に入れようとしていたと説明しましたが、ジョル大佐は自ら尋問したいと言い出し、民政官を立ち会わせずに自ら二人のところに向かいました。
翌朝、民政官は従兵のクラーク(デビッド・デンシック)から報告を受け、すぐさま留置所へと向かいました。遊牧民の叔父はジョル大佐の拷問を受けて死亡していました。民政官はジョル大佐に抗議しましたが、遊牧民を蛮族と敵視するジョル大佐は全く聞き入れず、甥を案内役として国境地帯に視察に出向きました。
民政官は中央政府宛てに、遊牧民の実情を知らないジョル大佐を派遣したことに抗議する手紙を書きましたが、ジョル大佐はそんなことはお構いなしに数人の遊牧民を捕虜にして戻ってきました。
捕虜となった遊牧民たちは非人道的な扱いを受け、ジョル大佐は「必要な情報を得ることができたが、ここの民政官は調査に協力的ではなかった」と告げ、いずれこの辺境地帯に大掛かりな処置が加えられることを示唆してこの町から引き揚げていきました。ジョル大佐が去った後、民政官はただちに遊牧民を解放するよう部下に命じました。
ウェイティングバーバリアンズ 帝国の黄昏のネタバレあらすじ:承
季節は冬を迎えました。民政官は町中で足の不自由な遊牧民の物乞いの少女(ガナ・バヤルサイハン)を見かけました。この町の決まりでは住民ではない浮浪者は滞在を禁じられており、民政官は少女に速やかに退去するよう命じました。
しかし、少女はこの町を出て行こうとはせず、民政官はやむなく少女を邸宅に招きました。すると、少女の両足首は傷口が化膿しており、民政官は少女の足を丁寧に洗ってあげました。少女は疲れて眠りこけた民政官を見て、初めて笑顔をこぼしました。
やがて町に帝国から正規軍の部隊が派遣されてきました。民政官は部隊長にジョル大佐の行為は遊牧民との関係を悪化させ、今なお関係は改善されていないことを訴えましたが、部隊長は蛮族から領土を奪い返すと躍起になっていました。
民政官はなおも少女を邸宅に住まわせ、面倒を見ていました。しかし、邸宅の家政婦マイ(グレタ・スカッキ)やクラークらは民政官が少女と男女の関係にあるのではないかと噂していました。
そんな時、民政官は少女の目元に傷があることに気付き、この少女は以前ジョル大佐から拷問を受けていたことを知りました。民政官は部下からこの少女に関する報告がなかったことに衝撃を受け、少女から事情を聞きました。すると、少女の背中にも拷問を受けた傷跡があり、民政官は少女を元の部族に戻してあげようと決心しました。
同行を命じられた兵士たちは戸惑いましたが、命令に従い民政官や少女と共に町を出発しました。民政官一行は帝国が把握してきれていない辺境の地をひたすら進み続け、やがてとある遊牧民の一団と遭遇しました。
民政官は少女に、部族に戻るか町に戻るかは自分で決めるよう告げると、部族の長と交渉に臨みました。部族の長は少女の身柄は引き取るが帝国の身勝手な振る舞いは許さないと告げ、民政官一行は少女に別れを告げて町へと戻っていきました。
ウェイティングバーバリアンズ 帝国の黄昏のネタバレあらすじ:転
町に帰還した民政官一行は正規軍の兵士に出迎えられました。民政官は正規軍を率いるマンデル准尉(ロバート・パティンソン)と対面し、マンデル准尉から今回の旅の目的を問われました。マンデル准尉は、民政官が帝国の許可もなく、少女を連れて旅をしたことは敵と通じているのではないのかと疑いを抱きました。
やがて町にジョル大佐率いる討伐部隊が遊牧民の捕虜たちを捕らえて町に凱旋してきました。町の住民が歓声をもって出迎えるなか、ジョル大佐は公衆の面前で捕虜たちに暴力を加え始めました。ジョル大佐を止めようとした民政官はマンデル准尉に殴られ、捕らえられて収監されました。
民政官はジョル大佐とマンデル准尉の尋問を受けました。ジョル大佐らは民政官が敵と通じている証拠として、以前民政官が発掘した古代の木簡を提示しました。ジョル大佐らから木簡を読むよう命じられた民政官は、木簡の文字が解読不可能な失われた文字であることを逆手に取り、この文章はジョル大佐ら帝国に虐げられた遊牧民たちの苦しみと怒りの声だと読み上げました。
そして民政官は文章の一節を引用し、このいち文字は「戦争」とも「復讐」とも、そして「正義」とも読み取れると告げ、帝国の終焉も近いと皮肉を言い、改めてジョル大佐らの蛮行を強く非難しました。
民政官は職務を解任され、女性用下着を着せられて町の広場の木に吊るされて晒しものにされました。かつての部下や町の住民たちはそんな民政官を嘲り笑いました。
ウェイティングバーバリアンズ 帝国の黄昏の結末
ジョル大佐は討伐軍を率いて辺境の地に向かって以来、一向に戻って来る気配はありませんでした。地位を失った民政官は町の清掃員として働き、もはやかつての部下も民政官を相手にしようとはしませんでした。
そんな時、かつての家政婦だったマイから粗末な食事を受け取った民政官は、かつて民政官が面倒をみていた少女は時々泣いており、民政官が彼女を不幸にしたのだとマイから告げられました。民政官はその言葉の意味を考えていました。
民政官は部下とトランプ遊びをしていたマンデル准尉に絡まれました。マンデル准尉は、もはや帝国から忘れ去られた民政官など逮捕して裁判にかける存在ですらないと言い放ち、自由の身にしてやると告げました。民政官はなぜ人を拷問した後で平然としていられるのかとマンデル准尉を問い詰め、激怒したマンデル准尉は民政官を追い払いました。
その時、町に部隊の帰還を告げるラッパが鳴り響きました。ところが、町に着いたのは正規軍兵士の死体が縛り付けられた1頭の馬だけでした。恐れをなしたマンデル准尉は、一時的に町から正規軍を撤退させると告げ、必要最小限の人員のみを残して撤退を開始しました。正規軍の兵士たちは町の住民から略奪を働き、町から去っていきました。
民政官は誰もいなくなった執務室に入りました。ある夜、民政官の元に帝国兵士が現れ、ジョル大佐が馬を求めていると伝えました。町の広場には遊牧民との戦いに敗れて逃げ帰ったジョル大佐の馬車がありました。民政官とジョル大佐は何も語らず視線だけを交わし、町の人々は逃げ去るジョル大佐の馬車に石を投げつけました。
ジョル大佐が去った後、民政官は城塞の門を閉めました。民政官はあの少女が今頃どうしているのか気になりました。それから程なくして、遊牧民は大規模な騎馬部隊を率いて町に迫ろうとしていました。
以上、映画「ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏」のあらすじと結末でした。
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