宇宙人東京に現わるの紹介:1956年日本映画。大映が製作した本格的なSF映画。色彩指導としてクレジットされている画家の岡本太郎が宇宙人のデザインを担当し、話題となった。脚本は「七人の侍」「生きる」などの黒澤作品で知られる小国英雄。
監督:島耕二 出演:見明凡太朗(小村芳雄)、永井ミエ子(小村多恵子)、川崎敬三(磯辺徹)、山形勲(松田英輔)、苅田とよみ(青空ひかり&銀子)、南部彰三(磯辺直太郎)、ほか
映画「宇宙人東京に現わる」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「宇宙人東京に現わる」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
宇宙人東京に現わるの予告編 動画
映画「宇宙人東京に現わる」解説
この解説記事には映画「宇宙人東京に現わる」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
宇宙人東京に現わるのネタバレあらすじ:起
天文学者の小村(見明凡太朗)が駅の改札で顔見知りの新聞記者に捕まり、宇宙軒という馴染みの赤ちょうちんで一緒に酒を呑むことになります。
記者は最近新聞ダネになっている空飛ぶ円盤についてインタビューを取りたいと思っていました。しかし円盤など信じない博士はその手には乗らず、うまくはぐらかします。
空に異変が起ったのはちょうど小村がお茶漬けを食べ終えて、家に向かっている時でした。帰宅すると城北天文台に務める磯辺徹(川崎敬三)があわててやってきて、謎の物体が地球の大気圏外で静止し、そこからいくつもの飛行体が発射されたことを報告します。
宇宙人東京に現わるのネタバレあらすじ:承
その飛行物体はメキシコやインドなどで目撃され、日本でもそのひとつが東京湾に落下しました。このことが大きく報道されて、外国による新型兵器ではないかという不安が広がっていきます。
おまけにヒトデ型の奇妙な生き物を見たという通報が警察に寄せられてきたため、小村はもちろん、徹の父親の磯辺博士や小村の従兄弟の物理学者・松田(山形勲)も、一連の謎について解明に駆り出されることとなります。
やがて奇妙な生き物は小村、磯辺たちの家にも出没。そして帝都劇場でおこなわれた人気歌手・青空ひかり(苅田とよみ)のコンサートにもあらわれて、大きなニュースとなります。
宇宙人東京に現わるのネタバレあらすじ:転
実はこの生き物は異星人であるパイラ人でした。大気圏外に静止しているのは彼らのマザーシップで、落下してきた飛行体というのは視察員を乗せた円盤だったのです。
間もなく視察を終えたパイラ人はマザーシップに帰還。「自分たちの外見のせいで訪問の目的を伝えることができない」と仲間に報告をおこないます。仕方なくパイラ人のひとりが青空ひかりそっくりの姿となり、再び地球へ降下すると、記憶喪失者のふりをして日光で徹や小村の娘の多恵子(永井ミエ子)と出会います。
そして、たまたま一緒にいた松田博士とその妻は彼女を哀れに思い、銀子という名前で自分たちの家へ引き取ることを決めます。
宇宙人東京に現わるの結末
人間たちに混じって暮らし始めた銀子は、松田がウリウム元素101の方程式をノートに記しているのを見て「それは危険だ」と警告。続いて城北天文台に姿をあらわして、自分がパイラ人であることを告げます。さらに「新天体Rという星が地球にぶつかろうとしている」という驚愕の事実を小村たちに伝えるのです。
これを知った各国は最初は本気にしませんでしたが、間もなく新天体Rが肉眼でも観察できるようになり、否応なく事実であることを悟らされます。各国は持っている原水爆をRに向けて発射するものの、全く効果がありません。地球の気温は上昇し、各地で異常気象が発生します。
もはや地球は破壊をまぬがれないかと思われましたが、ギリギリになってウリウム元素101を用いた爆弾がパイラ人によって作られ、Rへ向けて発射。遊星は破壊され、地球の危機は回避されるのでした。
以上、映画「宇宙人東京に現わる」のあらすじと結末でした。
岡本太郎氏による「パイラ人」の造形(ヒトデのお化け?)はとても「キャッチー」で数多の目を引く。これを令和の世の人が見れば、「アラ、可愛いワ おしゃれなデザインね!」ってなるだろう。でも当時の日本人にとっては不気味で異様な「バイ菌」か「悪魔」の類いに映ったのではないかと思う。 このとびっきりユニークな造形は、「宇宙人東京に現る」というネーミングと相まって当時は大きなインパクトがあったはず。 冒頭のシーンでは女が手にする伝統的な「縹色(はなだいろ:淡い藍色)」に染め上げられた「蛇の目傘」がアップになる。この「縹色の蛇の目傘」と「紅の和服の女」とのコントラストがまた何とも粋で心憎い。 そして「井の頭線」の高井戸駅(劇中では新町駅だが)の改札口を出たところからこの映画がいよいよ始まる。雨が降りしきる夕暮れ時の駅前通りを慌ただしく行き交う人々の後ろ姿の哀愁(妙趣)は格別だ。 つまりここには本物の昭和中期(30年代初頭)の郊外の原風景がそのままある。 だからこの作品の素朴で叙情的な映像を見るだけでも十分満足がゆくのである。 居酒屋でのやりとりや卓上型ラジオ(真空管式)の雑音など、どれもこれもがノスタルジックでただただ懐かしい。 そんなこんなで感傷に浸り「うっかりと」していると、「空飛ぶ円盤」が天空に現れ海からは「宇宙人」が「ベロベロバア~っ!」っと出現したりもする。そうだ、この作品は当時の最先端を行く「空想科学映画」だったのだ。 この「SF映画」は私が小学生だった頃(昭和40年~45年頃)の漫画雑誌、少年マガジン・少年サンデー・冒険王などの「世界観と完全にリンク」している。この手の少年雑誌では、「空飛ぶ円盤」や「宇宙人」などが記事やマンガの中心だったからだ。 ところで小村家のお茶の間に宇宙人が現れるシーンでは、異形の怪物を見て恐怖に顔を歪ませる小村多恵子(永井ミエ子)の表情がとても印象的だった。この光景(映像)はまるで 挿絵画家(イラストレーター)の最高峰、石原豪人(別名:林月光)が描く「デフォルメされた劇画の世界」そのものなのである。このシーンは、とにかく新人女優の永井ミエ子の初々しい演技が最高なのだ。だからこそこの映画のポスターになっているのも充分に納得できる訳だ。 映画com.によると、岡本太郎はパイラ人のデザインだけではなく色彩などの指導もしていたそうだ。岡本太郎と言えば中平康監督の「誘惑」(1957年日活)に出演したりと、日本映画にも少なからず貢献しているようだ。 この「宇宙人東京に現る」はプロットもセットも演出もしっかりとしている。そんな中でもとりわけ特撮を含めた撮影全体がとても素晴らしかった。全編を通して「ノスタルジックで甘美で美麗」なのである。 私は今回幸運にも【最高画質版】を手に入れたので、今後も事あるごとにこの作品を繰り返し鑑賞したいと考えている。