水と権力 特別篇:盗まれた資源の紹介:2017年アメリカ映画。カリフォルニア州では水の操作によってロサンゼルスもサンフランシスコも広大な農業地帯も成立した。しかし、ロマン・ポランスキー監督の『チャイナタウン』の物語の背景を成した水問題は今も続いている。持てる者が貴重な水資源を金に換え、普通の人々が干ばつや地盤沈下に苦しむ。ポランスキーやロビン・ウィリアムス等の伝記ドキュメンタリーで知られるマリナ・ゼノヴィッチが、ジャーナリストや環境活動家の活動を追いつつ、水ビジネス側の人へのインタビューも交え、水と権力の秘密に迫ったドキュメンタリー。2017年のサンダンス映画祭ドキュメンタリー部門にノミネートされ上映された後に劇場公開される。日本でも動画配信されている。
監督:マリナ・ゼノヴィッチ 出演者:マーク・アラクス、ほか
映画「水と権力 特別篇:盗まれた資源」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「水と権力 特別篇:盗まれた資源」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
水と権力 特別篇:盗まれた資源の予告編 動画
映画「水と権力 特別篇:盗まれた資源」解説
この解説記事には映画「水と権力 特別篇:盗まれた資源」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
水と権力 特別篇:盗まれた資源のネタバレあらすじ:起・3年に及ぶ干ばつ
2015年、カリフォルニア州サン・ホアキン・ヴァレー。3年以上の干ばつでトゥーレアリ郡の各戸の貯水槽は空っぽになり、人々はペットボトルの水に頼っている。
ある女性はメキシコの暴力に満ちた貧困地帯から豊かな生活を求めて移民してきたのにアメリカの生活は悪夢だった。彼女にとって、干ばつ対策センターから水のペットボトルをトラックで運んでくるボランティアの女性は天使である。
若いカップルはシャワーを浴びるために街に住む友人の家に行ったり、シャワーを貸してくれる人をインターネットで捜したりしなければならない。ところが、そんな状況なのに農場ではたっぷり水を使い、州の農業収穫量は増え続けていた。
水と権力 特別篇:盗まれた資源のネタバレあらすじ:承・水をめぐる争い
水の乏しい西部では昔から水は力だった。カリフォルニアでは降水量の3分の2が北部に集中するが、人口の3分の2は南部に住む。さらに州中央部の盆地が耕作のために水を必要とする。パット・ブラウン知事が20世紀後半に行ったダム開発によりロサンゼルスに飲み水が供給されると共に、砂漠だった州中央部に巨大な農業地帯が出現した。
しかし1980年代の干ばつで水不足が起こる。都市住民と農業従事者で水の供給について対立が起きる。そこで1994年にカリフォルニア州モントレーで、公衆に知られることなく、水供給をめぐる当事者の代表の会議が開かれ協定が結ばれる。
その中で、地下水をくみ尽したカーン郡地下の空洞を貯水池にして降雨量が多いときにそこに水をため、干ばつ時にはそこから水を取り出すカーン水銀行の構想がまとまる。農業従事者たちは良いアイデアだと思ったが、民間企業が水銀行の管理者となることで弊害が生じる。
水と権力 特別篇:盗まれた資源のネタバレあらすじ:転・私物化された水銀行
カーン水銀行は公的機関だが、実情は一つの農業法人、パラマウント・ファーミングが私物化している。パラマウント・ファーミングはビバリーヒルズに住む億万長者のレズニック夫妻がカーン郡の広大な、耕作に不向きな土地に投資して作った会社である。
カーン水銀行の水でその不毛の土地が耕作地として蘇えった。レズニックのワンダフル社はそこで作られたザクロのジュース等を売って巨万の富を得た。夫妻は民主党、共和党を問わず政治家に献金をして影響力を強めた。結局、干ばつの緩和というカーン水銀行の本来の目的はないがしろにされてしまった。
レズニック夫妻は、移民たちを安く使ってもうけていると批判されたので、自社の労働者の町で慈善事業をするが、彼ら賃金は低く、しかも彼らの使う水道水は汚くて誰も飲まない。
カリフォルニアの水制度に批判的な環境活動家たちは州のおざなりな環境調査に関して訴訟を起こしてカーン水銀行をレズニック夫妻から取り返そうとがんばっている。
水と権力 特別篇:盗まれた資源の結末:地下水をめぐる争い
カリフォルニア州の水の80パーセントが農業で消費されている。とりわけアーモンド栽培は水を大量に必要とし、干ばつの要因ともみなされている。だが、アーモンドはほとんど輸出用であり、カリフォルニアで栽培しなければならない必然性はない。
干ばつにより、カリフォルニア州の農場は水の60パーセントを地下水から得るようになった。地下水の使用権は土地の所有者にあり、土地をもっていれば誰でも好きなだけくみ上げることができる。その結果地表を支えていた帯水層の水が枯渇し、地盤沈下が進んだ。そして地下水にもレズニック夫妻ら大企業や水ブローカーの手が伸びる。地下水の権利を求めて、帯水層の上に建てられた小規模のワイン醸造所を大企業が次々と買いあさっている。
しかし、長引く干ばつにより、レズニックのワンダフル社の農場ですら、水不足のために、健康なアーモンドの木を重機でつぶさざるを得なくなった。2016年、とうとうカリフォルニア州で初めて地下水くみ上げについての規制が成立する。しかし、法律施行まで20年かかる。大企業はそれまでに水から利益を得ようと土地を買い続ける。
水不足、地下水の枯渇はカリフォルニア州に限らず地球全体の問題である。干ばつに苦しんでいたトゥーレアリ郡の一部の家に臨時の給水タンクが支給され、住民はやっと水道が使えるようになるが、「水のあるのを当たり前と思うな」と私たちに警告を発する。
以上、映画「水と権力 特別篇:盗まれた資源」のあらすじと結末でした。
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