山桜の紹介:2008年日本映画。藤沢周平の同名短編小説を映画化した時代劇です。藤沢作品によく登場する架空の小藩・海坂藩を舞台に、望まぬ結婚生活を送る主人公の女性がかつて縁談があった侍との再会を通じて人生に希望を見出していく姿を描きます。
監督:篠原哲雄 出演者:田中麗奈(磯村野江)、東山紀之(手塚弥一郎)、篠田三郎(浦井七左衛門)、檀ふみ(浦井瑞江)、富司純子(手塚志津)、北条隆博(浦井新之助)、南沢奈央(浦井勢津)、高橋長英(磯村左次衛門)、永島暎子(磯村富代)、千葉哲也(磯村庄左衛門)、村井国夫(諏訪平右衛門)、並樹史朗(保科忠右衛門)、石原和海(堀井甚兵衛)、松澤仁晶(治平)、村尾青空(さよ)、綱島郷太郎(吾助)、伊藤幸純(さよの祖父)、森康子(うめ)、樋浦勉(源吉)、鬼界浩巳(肴屋)、江藤漢斉(住職)、藤沢玲花(たか)ほか
映画「山桜」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「山桜」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「山桜」解説
この解説記事には映画「山桜」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
山桜のネタバレあらすじ:起
江戸時代後期、東北の小藩・海坂藩。山桜が満開の季節を迎えた春のある日、磯村野江(田中麗奈)は生涯独身のままこの世を去った叔母の墓参りに行きました。帰り道、野江は山桜の枝を折って持ち帰ろうとしたところ、通りかかった侍の手塚弥一郎(東山紀之)と出会いました。
野江はかつて手塚と縁談の話があったのですが、野江の方から断っていたのです。野江がそのことを詫びると、手塚は今は幸せかと声をかけました。野江は「はい」と答えるしかありませんでした。その後、実家の浦井家に立ち寄った野江は、母の瑞江(檀ふみ)から手塚がまだ独身であることを聞かされました。
野江は最初の夫に病で先立たれ、下級武士の磯村庄左衛門(千葉哲也)と再婚していました。ところが庄左衛門は父・左次衛門(高橋長英)や母・(永島暎子)共々金に汚く冷酷な人物であり、野江に対していつも辛く当たっていました。
野江の弟・新之助(北条隆博)は手塚から剣術を習っており、その誠実な人柄を熟知していました。新之助は野江に、なぜ手塚との縁談を断ったのかと問うと、野江は自分には剣の達人の妻は務まらないと思ったと答えました。
新之助は野江に実家に戻って来るよう勧めましたが、野江は自分が出戻りすれば新之助や妹・勢津(南沢奈央)の縁談に差し支えるとして断りました。しかし、野江はいつしか手塚にほのかな想いを寄せるようになっていきました。
山桜のネタバレあらすじ:承
海坂藩はここ数年で凶作が続き、百姓たちは貧困に喘ぎ、藩の財政は危機的な状況にありました。そんな中、藩の重臣・諏訪平右衛門(村井国夫)はその地位を利用して農政を思うがままに操り、有力な大百姓からの賄賂で私腹を肥やしていました。
諏訪にはおこぼれに預かろうと目論む取り巻きたちがついており、高利貸しで荒稼ぎする庄左衛門も諏訪の取り巻きのひとりでした。野江の父・七左衛門(篠田三郎)ら藩の者たちはそんな諏訪に不満を抱いていましたが、誰一人として諏訪に異を唱える者はいませんでした。
諏訪は藩の重臣たちに、新たに5,000石の新田を開墾する案を提示しました。藩には開墾の余力はなく、諏訪は自らの息がかかった大百姓に事業を請け負わせようと考えていました。重臣の中には大百姓が潤うだけだと反対する者もいましたが、諏訪は藩の財政立て直しを名目としてはねつけました。
諏訪はさらに、開墾の間は旧来の田からの年貢を引き上げると決定しました。良識ある藩の重臣のひとりである米倉(安藤一夫)は開墾に駆り出される百姓たちは田を手放さざるをえなくなり、諏訪はタダ同然でその田を我が物にしようとしていると反対しましたが、諏訪の息のかかった重臣たちに一蹴されてしまいました。
百姓たちは藩邸に出向き、自分たちの窮状を訴えましたが、重臣たちに追い払われてしまいました。米倉は部下の磯貝に密書を託し、参勤交代で江戸にいる藩主に届けるよう命じましたが、磯貝は諏訪の手下によって抹殺されてしまいました。
山桜のネタバレあらすじ:転
検地の任に就いていた手塚は、貧しい百姓の吾助(網島郷太郎)とその娘・さよ(村尾青空)に出会いました。手塚は握り飯をさよに与えようとしましたが、さよは遠慮して受け取ろうとしません。
それでも手塚は穏やかな表情で再度食べるよう促し、ようやくさよは握り飯にありつきました。しかし、吾助の家には病床にある老いた母・うめ(森康子)に食べさせてあげるだけの食糧すらも満足にありませんでした。
やがて海坂藩にも秋が訪れました。この年も長雨の影響により米は不作でした。吾助は年貢を収められないことを理由に田を没収されてしまいました。手塚は農地の見回りをしていた際、栄養失調で亡くなったさよとうめの墓で嗚咽する吾助の姿を見かけ、ある決心を固めました。
手塚は城に乗り込み、諏訪と取り巻きたちの前に立ちはだかりました。刀を抜いた手塚は峰打ちで取り巻きたちを倒すと、諏訪を斬り殺しました。手塚はその足で大目付の屋敷に出頭し、事態を知った米倉は手塚に深々と頭を下げました。
その夜、庄左衛門は憤慨したまま帰宅してきました。庄左衛門は野江に手塚が諏訪を斬ったことを伝え、一銭の得にもならんのにと手塚の行動を非難し、手塚は切腹は免れないと吐き捨てました。
野江は感情を露わにして「言葉を慎みなさいまし」と言い放ちました。激昂した庄左衛門は野江に刀を向け、駆け付けた富代は野江にこの家から出ていけと命じました。野江は庄左衛門と離縁し、ひっそりと実家に戻りました。
山桜の結末
諏訪の死により年貢は元に戻され、新田の開墾も中止されました。即刻切腹と思われた手塚でしたが、藩の世論は百姓たちを救った手塚に味方しており、処遇を決めかねていた藩は春に藩主が戻って来るのを待って沙汰を下すことにしました。
冬になり、やがて年が明けました。野江は獄中の手塚を思い、神社にお百度参りをして無事を祈り続けました。野江は新之助や勢津の身を案じ、家を出て自活しようとしましたが、瑞江は心から幸せになれる道を見つけた時に出ればいいと諭しました。
やがて春が訪れ、山桜が咲き誇る季節がやってきました。野江は瑞江と共に叔母の墓参りへ行き、瑞江から叔母が独身だったのは許婚が祝言の直前に急死したからだと聞かされました。瑞江は野江に「あなたは少し回り道をしているだけ」と声をかけ、その言葉に背中を押された野江は桜の枝を持って手塚の母・志津(富司純子)の元へ向かいました。
手塚は早くに父を亡くし、志津と二人暮らしをしていました。志津は野江の来訪を心から喜び、息子の事件後にこの家を訪ねたのは野江が初めてだと語りました。野江は志津の言葉に胸が詰まり、この日をきっかけに度々志津の家を訪れては親交を深めていくようになりました。
手塚は獄中から桜を見つめ、野江のことを想っていました。そして海坂藩に藩主が戻ってきました…。
以上、映画「山桜」のあらすじと結末でした。
「山桜」感想・レビュー
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我が息子の結婚と山桜が重なり涙が止まりませんでした!感動しました!
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良い映画です。田中麗奈は数少ない本物の俳優です。殿さんが籠の中で手塚弥一郎を助ける算段に頭を悩ましている姿が目に浮かびます。
この映画に限らず最近の時代劇は着物が体に馴染んでいないと言うか、衣装丸出しで体に馴染んでいませんね。着ているというより着せられている。
時代の雰囲気が伝わりません、所詮コスプレ現代劇です。