夢の祭りの紹介:1989年日本映画。津軽出身の直木賞作家で映画評論家の長部日出雄の唯一の映画監督作品。柴田恭兵が津軽三味線の魅力に取りつかれた若者を演じる。『乱』(1985年)の衣裳デザインによりアカデミー賞を受賞したワダ・エミが衣装デザインを担当。明石家さんまが人形使いの芸人の役で出演。
監督:長部日出雄 出演者:柴田恭兵(健吉)、有森也実(ちよ)、佐野史郎(勇造)、織本順吉(健吉の父)、馬渕晴子(健吉の母)、佐藤慶(津村信作)、加賀まりこ(ゆき)その他
映画「夢の祭り」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「夢の祭り」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「夢の祭り」解説
この解説記事には映画「夢の祭り」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
夢の祭りのネタバレあらすじ:起・健吉の夢
小作人の息子・健吉が、父親に叱られるのを恐れて藁の陰に隠れていると、外から門付芸人の三味線の音色が聞えてくる。健吉の家の前に幼い娘のみよを連れて立っていたボサマは津軽随一の三味線の名手と言われる人だった。ボサマの三味線を借りて弾いてみた健吉は素人にしてはうまいとほめられ、三味線への情熱をかき立てられるが、貧しい彼は自分の三味線すらもっていなかった。
田んぼで働かない息子に怒り、三味線を学んだところで目の見えるお前はボサマにもなれないと言う父親。だが健吉は小作人で終わりたくないと自分の夢を語り、とうとう父親に三味線を買わせる。ところがそのまま健吉は家出してしまう。
夢の祭りのネタバレあらすじ:承・三味線競争で敗れる
健吉はボサマとみよについて旅をする。汚い身なりの芸人である彼らは時には子供たちに石を投げられることもある。しかし、三味線は我流でなくてはいけない、自分の節(ふし)をさがせという教えをボサマから受ける。やがて健吉は自分の村の近くの森に村の若者たちの助けを借りて小屋を建て、祭りの三味線競争のための稽古に集中する。そんな健吉のために握り飯をもってきてくれるのは村娘のちよだった。
ある日ちよが隣村の男たちにさらわれる。健吉がかけつけてちよを取り返すが、それは三味線競争で連覇を続ける隣村の地主の息子・勇造のさしがねだった。勇造と健吉は三味線競争の勝者がちよを自分のものにすると決める。
健吉はボサマの教えにしたがい基本を繰り返し、やがて自分の節ができてきたが、それを小屋の外で勇造がスパイしていた。本番の三味線競争では客の拍手が最大の者が優勝する。拍手が少なく客の罵声を浴びる者は舞台を降りていく。最後に勇造と健吉が残り、健吉の演奏の見事さに三味線に反対していた父も声援を送る。しかし、勇造が健吉の用意してきた節を奏で始めたために健吉は動揺し、競争は勇造の勝利に終わる。健吉はちよに、自分は旅に出て三味線の修行をすると誓い、一年間勇造のものにならずに待っていてくれと言う。
夢の祭りのネタバレあらすじ:転・津軽一の名人
健吉はボサマとみよと共に旅を続けたが、冬、ボサマが高熱を出して寝込み亡くなる。健吉はみよを彼女の母親の元に預けてから、ボサマが自分をしのぐ津軽一の三味線の名人と言う津村信作を訪ねる。積もった雪をかきわけて命からがらたどり着いた家で、津村はゆきという美しい女と生活していた。ゆきは妻でも娘でもないが、津村の三味線に魅かれて津村といっしょにいる。三味線は人を不幸せにするという理由で三味線をやめてしまった津村は雪が融けるまで健吉が滞在することを認めるが絶対三味線を弾いてはならないと言う。
しかし春になっても健吉はそこに居続け、夜こっそり外で三味線を弾くようになる。ついに10日間家を空けた津村が友人に預けていた三味線を持ち帰り、一度だけ健吉に三味線を弾いてみせる。それは確かに津軽一の三味線だった。しかし、津村は健吉に、自分が三味線を弾いているのを常に自分以上の名人が聴いていると思わなければならないと諭す。
夢の祭りの結末:三味線と生きる
再び三味線競争の日が来た。ちよや両親が観客席にいる。そして舞台の脇に津村の女のゆきがいた。今年も勇造と健吉の二人が残り、勝負はつかず水入りになる。休憩中に勇造の子分が健吉の目を盗んで三味線に細工する。競争が再開されたときに健吉の三味線の弦が次々に切れ、最後の三本目の弦も切れてしまう。その時ゆきが三味線を舞台へ投げ、それを受取って健吉は弾き始める。拍手が鳴り響き、勇造は次に三味線を弾いた後に負けを認めて舞台を去る。その後控室で健吉はちよに別れを告げる。彼は三味線の音を求めて旅を続けることに決めていた。子分が勝手に三味線の弦に切り込みを入れていたことを勇造が詫びた。勇造といっしょになることをちよに勧め、最後にもう一度舞台に上がって健吉は客たちの称賛に答える。ゆきはいつのまにか会場から消えていた。
何年かが過ぎた。年を取ってまだ旅を続ける健吉は、雪の上を過ぎていく馬そりの中に昔と変わらぬゆきの顔を認める。そりを追いかけるが、そりはもう遠くに行ってしまっていた。
この映画の感想を投稿する