インサイダーの紹介:1999年アメリカ映画。名俳優であるアルパチーノとラッセルクロウが共演をした会社の汚職をリークしようとした男と会社との戦いを描いた作品で、彼らの骨太な演技が観られます。
監督:マイケル・マン 出演:アル・パチーノ(ローウェル・バーグマン)、ラッセル・クロウ(ジェフリー・ワイガンド)、クリストファー・プラマー(マイク・ウォレス)、ダイアン・ヴェノーラ(リアン・ワイガンド)、フィリップ・ベイカー・ホール(ドン・ヒューイット)、リンゼイ・クローズ(シャロン・ティラー)ほか
映画「インサイダー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「インサイダー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「インサイダー」解説
この解説記事には映画「インサイダー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
インサイダーのネタバレあらすじ:ある情報を入手した男
CBSテレビ局の番組制作者であるローウェルはあるとき、タバコ産業に関する極秘資料を入手します。そして、彼はこの資料に対して調査する価値があると考えます。のちにアメリカの企業であるブラウン&ウィリアム社のウィンガードと接触を果たします。
インサイダーのネタバレあらすじ:秘密を持っている男
彼は自社企業のタバコが人体に有害な物質を加えているという秘密を握っていましたが、会社の人間は彼の退職手当、家族の健康に関する手当について彼が不誠実なことを起こせば告訴すると脅し、幅広い内容の秘密保持契約についてサインをします。ローウェルはウィンガードの家を訪問し、彼と話しをしますがヴィンガードはローウェルに語ろうとはしませんでした。彼は以前働いていた誠実な会社であるヘルスケア会社と現在のタバコ会社を比較し、秘密をどうにかしようとするも、家族のことを思うと決断ができずにいたのです。
インサイダーのネタバレあらすじ:様々な嫌がらせ
ウィンガードに対してその後、彼と彼の家族に送られた死を促す内容の電子メールや、郵便受けで弾丸が見つかるなど会社の嫌がらせが続きます。ヴィンガードはこの件を連邦捜査局に通報しましたが、捜査担当者は彼に敵対的な態度をとり、ヴィンガードが銃を所持していないかを調べるとともにコンピュータを没収してしまいます。
インサイダーのネタバレあらすじ:番組へ出演する決意
当局と会社が彼に圧力をかけてくる中、彼は苦悩しますが、自らの信念を曲げることができない彼はついにローウェルへ連絡をし、ローウェルの番組である60ミニッツへ出演し、その中で彼は法廷で証言することを誓います。そして無事に番組収録は終了し、すべては順調と思えた矢先、番組制作会社の上層部はヴィンガードの会社であるタバコ産業との衝突を避けるために、ヴィンガードの出演シーンをカットし、そして番組制作者であるローウェルを解雇させます。
インサイダーの結末:新聞社へのリーク
しかし、ローウェルはそれにへこたれず、このタバコ産業とテレビ局上層部に関しての事件をウォールストリートジャーナルにリークします。そして改めて番組は放送され、世間にタバコ産業の悪意を晒し出すことに成功したのでした。
“自分を信じ自分を貫こうとする男の美学をクールに熱く語る、マイケル・マン監督の社会派ドラマ「インサイダー」”
「ヒート」、「コラテラル」のマイケル・マン監督が放つ、男同士の死闘をクールに描いた骨太の社会派ドラマです。
静けさの中にもほとばしる熱気、マイケル・マン監督の抑制された演出が、男達の生きざまを輝かせます。自分を信じ、自分を貫こうとする男の美学が、我々観る者の心を激しく揺さぶります。
アメリカのCBSの人気報道番組「60ミニッツ」の舞台裏で実際に起きた事件を描く、実録社会派ドラマで、「60ミニッツ」の敏腕プロデューサー、ローウェル・バーグマン(アル・パチーノ)とタバコ会社の不正を内部告発した、ジェフリー・ワイガンド(ラッセル・クロウ)という二人の実在する男達の熱い戦いを実録タッチで描いています。
2時間38分と長い上映時間ですが、マイケル・マン監督の工夫を凝らした演出がピリピリするような緊張感を持続させてくれます。
まず、実話に基づいている事もあって、手持ち撮影によるドキュメンタリー・タッチが実に効果を上げているなと思います。更に、クローズ・アップやスローモーションで画面にメリハリをつけ、バーグマンのジャーナリストとしての信念と、ワイガンドの迷える複雑な心情を鮮やかに映し出していると思います。
このワイガンドが内部告発をする段になって、様々な圧力がかかり、身の危険や家族崩壊の危機にさらされる事になります。凄まじいまでの葛藤と戦い、ワイガンドは強固な正義心を貫こうとします。
現実問題として、このような過酷な試練にさらされた時、人間は理想というものを貫き通せるものであろうか? 人間は本来は、もっともっと弱いはずだし、このワイガンドの勇気を我々は現実のものとして、受け止められるであろうか?—-と、自問自答せざるを得ません。
様々な脅迫に耐えられず、夫から離れていったワイガンドの妻は、現実的な人間らしさを象徴するキャラクターでもあります。ただ、残念ながら、この女性は丁寧に描かれていたとは言い難く、このドラマの枠外へと追いやられてしまっています。こう考えてくると、結局のところ、ワイガンドの正義心を前へと突き動かしているのは、”男と男の信頼関係”だったのだと思います。
バーグマンの信念、それは、自分の情報源になってくれる人間を守ってやる事。これがジャーナリストの鉄則だと信じているのです。CBSがタバコ会社の圧力に負けて放送が中止になれば、新聞社へ情報を流し、あらゆる手段を使ってでも、この内部告発を世間に伝えようとするのです。
ワイガンドの勇気に報いるために、バーグマンもまた、組織の中での自分の立場を顧みる事などしないのです。この二人の男の稀有な勇気と信頼が、長く険しい道のりの果て、真実の公開へとたどり着かせるのです。
我々が日頃、享受している「言論の自由」や「報道の自由」は、これら多くの犠牲や努力の上に成り立っているのだと、あらためて痛感させられます。
バーグマンとワイガンドが命を懸けて示してくれた大きな理想。これは、まぎれもなく、れっきとした事実なのです。
なお、この映画は1999年度のLA批評家協会の最優秀作品賞、最優秀主演男優賞(ラッセル・クロウ)、最優秀助演男優賞(クリストファー・プラマー)、最優秀撮影賞を受賞し、また、同年の全米批評家協会の最優秀主演男優賞(ラッセル・クロウ)、最優秀助演男優賞(クリストファー・プラマー)を受賞しています。