白い恋人たち/グルノーブルの13日 の紹介:1968年フランス映画。フランシス・レイ作曲の美しいテーマ曲でも名高い、グルノーブル冬季オリンピックの記録映画。しかし、競技の記録ではない。ルルーシュとレシャンバックを中心とする撮影クルーが会場とその周辺で13日間、カメラを通して体験したできごとが差し出される。ピエール・バル―作詞の歌が映像への注釈の役割を果たしている。
監督:クロード・ルルーシュ、フランソワ・レシャンバック 出演者:オリンピックに集った人々
映画「白い恋人たち/グルノーブルの13日」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「白い恋人たち/グルノーブルの13日」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「白い恋人たち/グルノーブルの13日」解説
この解説記事には映画「白い恋人たち/グルノーブルの13日」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
白い恋人たち/グルノーブルの13日 のネタバレあらすじ:起・開会まで
聖火がフランスに来た。ある者は雪道を走り、ある者は自転車で、ある者は水上スキーで、ある者は雪の上でスキーをこぎ、少年が、少女が、大人が聖火をリレーする。そして開会式のリハーサルが始まる。一方で雪を踏みしめて会場を設営する人たちもいた。選手たちはトレーニングを続けるが、オリンピックを直前にして転倒して負傷する不運なスキーヤーもいる。カメラはリラックスしている日本選手団の様子も記録している。
開会式の日が来た。小さなパラシュートを付けたオリンピック旗が多数会場に舞い落ちる。選手が入場しドゴール大統領による開会宣言、そして聖火が点灯され13日間のオリンピックが始まる。
白い恋人たち/グルノーブルの13日 のネタバレあらすじ:承・ジャン=クロード・キリー
30秒ごとにスタートし超高速で山を滑り降りる滑降競技、アイスホッケーで負傷退場する選手、試合を終え疲れ切り栄養を補給する選手たち。屋外リンクで競われるスピードスケート、フィギュアスケートの規定演技を見守る審判たち。競技が続く一方街ではコンサートやパーティーが開かれる。そして街角ではカメラマンが見たものをすべて記録するかのように歩き回る。
この大会の最大のスターはフランスのアルペンスキー選手、ジャン=クロード・キリー。まず滑降で百分の何秒の戦いを制する。彼は今、時間の征服者、支配者だ。彼自身が気づいているように、いつか別のヒーローに取って代わられるとしても。栄光の頂点に立ち、他の競技場でもサインをせがまれる。
白い恋人たち/グルノーブルの13日 のネタバレあらすじ:転・ペギー・フレミング
一人の女子滑降の選手の滑りをストックなしでスキーに乗ったカメラマンが追いかける。優勝するオルガ・パールはタイムを知って他の選手と喜びを分かち合う。
フィギュアスケート女子。アメリカ代表のペギー・フレミングは大会の華だった。彼女をスターにしたてる周囲に商業主義を感じるとしても、ピエール・バル―の歌は彼女の演技を称賛せずにいられない。
白い恋人たち/グルノーブルの13日 の結末:お祭りとその終わり
ジャン=クロード・キリーが自分の金メダルを増やす一方、競技をしている横でお尻をそりにして楽しむ大人や子供。ジョニー・アリディ―のコンサートに熱狂する人たち。
そりの入念な準備とイメージトレーニングの後、助走をつけてから滑り始めるボブスレーの選手たち。メダルに輝いた選手たちの陰に、そりがひっくりかえってしまった選手たちがいる。
走り続け疲れ切ってゴールしたバイアスロンやクロスカントリースキーの選手たちの汗と鼻水。スピードスケートの選手に声援を送る人々。フィギュアスケートの会場で活躍する電子計算機。電光掲示板を見て歓喜する選手としょげる選手。
アルペンスキー女子回転では地元フランスのマリエル・ゴワシェルの優勝に会場がわく。キリーも彼女を祝福する。そのキリーが雪で視界不良の中、男子回転で彼の大会三つ目の金メダルを手にする。一方、街には次々とスターが訪れる。ファッションショーもある。陽気に飲み食べ騒ぐ人がいる。でも新聞はベトナムでの戦争も伝えている。
アイスホッケーのソ連・チェコスロバキア戦。勝利したチェコスロバキア代表が試合後控室で騒ぎ喜ぶ。
ジャンプ競技の前に立小便をする選手。パンをかじりながら競技を待つ観客。競技が始まると次々選手たちは空に飛び出す。
閉会式。13日の大騒ぎが終わり、フランスは元の姿に戻ろうとしているのだった。
“主観的詩情に基づく記録映画の先駆けとなったクロード・ルルーシュ監督、フランシス・レイの黄金コンビによるドキュメンタリー映画の傑作「白い恋人たち」”
この映画「白い恋人たち」は、1968年にフランスのグルノーブルで開催された第10回冬季オリンピックの模様を収めたドキュメンタリー映画の傑作で、原題は「グルノーブルの13日」とあっさりした題名ですが、邦題を「白い恋人たち」とした事で、この映画の持つ特性をよりシンボリックに表現していると思います。
やっぱり、フランス映画の名作「男と女」のクロード・ルルーシュ監督の映画は、もう溜息が出るほど素晴らしく、いつも映画を観る歓びを満たしてくれます。
いや、ルルーシュというより、彼が紡ぎ出す流麗な映像感覚と、彼のパートナーの映画音楽家フランシス・レイの甘美で心の琴線を震わすリリカルなメロディーとの相乗効果が生み出す、輝くばかりの流麗な映像世界に魅了されるのかも知れません。
この映画は、そんなルルーシュとレイという黄金コンビが作り上げた第10回冬季オリンピックの、形の上では一応、記録映画の体裁をとっていますが、ルルーシュはこの祭典の記録性を一切無視し、いわば、”主観的詩情に基づく記録映画”というジャンルを作り上げたのだと思います。
スキーの三冠王ジャン=クロード・キリーはヒーローとして、フィギイア・スケートの妖精ペギー・フレミングはヒロインとして描かれ、レイの甘美な曲と共に、まさにもう一つの「男と女」のストーリーになっているような気さえして来ます。
キリーのダイナミックでシャープな滑降を、ひたすら追うフランソワ・レシャンバックの撮影によって、さながらアクション映画顔負けの迫力が映像に満ち溢れています。
そして、小気味のいい編集による、この祭典を楽しむ街の人々や、会場の裏方の人々のスケッチの、”詩情豊かな積み重ね”こそ、”人間賛歌としてのオリンピック精神”にのっとり、これこそがむしろ、オリンピックの記録映画として、正しい方法論なのではないかと感じさせてくれます。