ワイルド・ギースの紹介:1978年イギリス映画。傭兵フォークナーは、さる筋からアフリカ大陸の某国元大統領救出作戦を依頼される。それは、過去にフォークナーが護衛契約を受ける筈の人物だったが、現在は独裁政権下で監禁されていた。彼は戦友達と作戦を立案、傭兵部隊を組織し救出作戦を実行に移すが、裏では薄汚い陰謀がうごめいていた。実在の傭兵をモデルにした戦争映画。
監督:アンドリュー・V・マクラグレン 出演者:アレン・フォークナー(リチャード・バートン)、ショーン・フィン(ロジャー・ムーア)、レイファー・ヤンダース(リチャード・ハリス)、ピーター・カーツィー(ハーディ・クリューガー)、ほか
映画「ワイルド・ギース」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ワイルド・ギース」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ワイルド・ギース」解説
この解説記事には映画「ワイルド・ギース」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ワイルド・ギースのネタバレあらすじ:第1幕
動乱に揺れるアフリカを飛ぶ渡り鳥のように戦場を渡り歩いたフォークナーは、銀行家のエドワード卿に招かれロンドンへやってきました。エドワード卿は、アフリカ大陸某国の元大統領リンバニの救出を依頼してきました。リンバニは過去に、フォークナーが護衛する予定がありましたが、拉致され死んだ事になっていました。フォークナーはその依頼を受け、リンバニの捕らえられている収容所の情報と、相棒のレイファーとショーンを探し出す事を要求しました。エドワード卿は、レイファーはともかく、ショーンを使う事には反対しましたが、フォークナーはそれを押し切りました。そのショーンは、ある男のパーティーに乗り込んでいました。ショーンは運び屋家業を行っていましたが、主義に反する麻薬を運ばされて激怒していました。しかもそれは粗悪で、誤って使ってしまった少女が死亡し、彼はその落とし前を付けさせに来たのでした。依頼人の若者はある大物権力者の息子でしたが、ショーンはお構いなしに運んだ麻薬を大量に飲ませ、ショック死させました。レイファーは、一人息子とクリスマス休暇の相談して平穏に浸っていました。そこにフォークナーが尋ねてきます。フォークナーはリンバニを助ける機会を得たと、レイファーに作戦立案を求めます。レイファーは今は画商だと最初断りますが、稀有な人格者を救出する為とフォークナーに説得され、仕方なくフォークナーが持参した図面から作戦を考え始めます。
ワイルド・ギースのネタバレあらすじ:第2幕
フォークナーに、組織がショーン殺害の協定を敷いた事が報告されます。フォークナーはショーンの隠れ家を探し出し、愛人に匿われていた彼と会います。そこに殺し屋達がやってきて戦闘になりましたが、彼等はエドワード卿がフォークナーの依頼で協定を破棄させた事を知ると、直ぐに退散して行きました。暴行を受け、でたらめを伝える事で彼を助けた愛人との別れを惜しむショーンを連れ、フォークナー達は隠れ家を出ます。フォークナーは、エドワード卿達に立案した作戦を聞かせます。その作戦は承認され正式に契約されますが、期間がクリスマス休暇に掛かり、レイファーが複雑な表情をします。レイファーは寄宿学校の息子を訪ね、クリスマスに一緒に過ごせなくなった事詫びます。息子は母親が先日、新しい男を連れて訪ねてきた事に傷付いていました。フォークナーは、部隊メンバーを集めます。訓練の為に古い友人であるサンディに会いに行きました。サンディは快く出迎えてくれてましたが、サンディの妻はフォークナーを見るや、嫌悪を丸出しにします。サンディはそんな妻を余所に、フォークナーの誘いを二つ返事で受けました。仕官として、ショーンは知人のピーターに声を掛けます。彼は南アフリカに帰る為に喜んで参加しました。他、一般兵士を募ります。戦争に人生を捧げた男達が集まり、フォークナーの傭兵部隊は訓練を開始しました。サンディのしごきに耐えた後、士官達は作戦の詳細を詰めます。収容所に配備されている兵士達をガス等で容赦なく排除する計画を立てているフォークナー達に、ピーターは黒人と言えど無関係な者達は殺したくないと眉をひそめます。リンバニ救出の意義を説くフォークナーに、主張を残し合う為に殺し合うのは馬鹿馬鹿しいと言ってのけるピーターをフォークナーは危険視します。訓練は続きましたが、リンバニの生存が洩れ、処刑が早まったのに合わせ、作戦も前倒しされました。フォークナーはサンディの任を解きますが、彼は妻よりリンバニの為にもフォークナーと作戦に参加する事を選びました。兵隊達は遺書を書き、作戦前の慰安の為に町へ繰り出していきました。レイファーは、自分に万一の事態が起き時は息子を頼むとフォークナーに約束させました。
ワイルド・ギースのネタバレあらすじ:第3幕
作戦は開始され、高高度空挺降下で部隊は作戦区域に入り、部隊は損害無く収容所に辿り着きます。幸いながら警備はゆるく、難なく内部に侵入し、兵を排除して行きますが、救出が来た事に勘付いた監視兵がリンバニを撃ちます。幸い傷は深手ではありませんが、彼の持病である心臓病が深刻な状態でした。フォークナーは、別働隊のショーンに飛行場を抑えるように指示を出します。リンバニはピーターが運ぶ事になりましたが、南アフリカ出身の彼は黒人に良い感情は持っておらず、リンバニを侮蔑します。フォークナー達は、牢屋の鍵を他の収監者達に渡し、収容所を後にしました。ショーンが難なく空港を制圧してくれたお陰で、後は迎えの輸送機を待つだけとなりました。しかしその頃エドワード卿は、現政権側と何かしらの契約を結び、チャーリーワンという暗号を口にし、各国の大使館にも通達させます。飛行場では輸送機が着陸して、兵士達は作戦終了を目前に歓声を上げます。しかしパイロットに無線でチャーリーワンが告げられると、輸送機は部隊を見捨てて離陸していきました。残された兵士達は呆然とそれを見送ります。フォークナーはそれがすぐにエドワード卿の仕業だと察し、裏切られた事を兵士達に伝えます。レイファーは脱出プランを練り、リンバニの生まれ故郷へ向かい、クーデターを起こす計画を提案しました。その頃エドワード卿は、現政権側と結ばれた鉱山開発計画の祝杯を挙げていました。フォークナーは陸路でリンバニの故郷に向かいます。途中航空機の対地攻撃で死傷者を出し部隊は分断されます。フォークナーはレイファー達を先行させ、輸送車両を失った自分とピーターは徒歩でリンバニ共に追いかける事にしました。傭兵は捕虜として正当な扱いがされずなぶり殺しに合う事が多い為、フォークナーは動けない重傷者に止めを刺し、出発します。歩けないリンバニを背負う事になったピーターは、彼と差別について論じます。ピーターは南アフリカで黒人と戦って居ました。唯帰りたい彼に、リンバニは、アフリカの未来を据えて行動しろと言います。二人は白人と黒人、どちらがアフリカを背負って来たかを言い争い、リンバニは、人種隔てなく強調しなければ、いずれ白人が去って行った後、今度は黒人同士が殺し合うと主張します。リンバニは白人を赦す、だから協調して国を作って行きたいと言います。ピーターは、それに理解を示し始めました。先行するレイファーは、村に入ります。するとその村に居た宣教師がレイファーを見るなりすぐに出て行けと指図します。その宣教師とは顔馴染みでしたが、立場から犬猿の仲でした。休憩しているフォークナー達に、追跡隊が追い付いて来ました。フォークナー達は何とか追跡を逃れようとしますが、一人、また一人と倒れていきます。そして、リンバニを背負っていたピーターも倒れてしまいます。そこにサンディが迎えに来て、ピーターの亡骸を置いてリンバニを村に連れて行きました。
ワイルド・ギースの結末
部族を巻き込みたいくないというリンバニは、部族の長達と話し合います。宣教師は、内戦を誘発させようとしているフォークナーを批判し、彼が乗ってきた輸送機と引き換えに村を出て行けと提案します。リンバニは、自分は戻ってくると長達に約束し、国を出る事を決意していました。フォークナーはパイロットから輸送機を奪い取り、脱出の準備を整えます。そして防衛陣地を引き、追撃隊を迎え撃つ準備を整えました。追撃隊は程なくして襲撃を掛けてきました。負傷兵が出る中、輸送機のエンジンに火が入ります。襲撃をかわしながらリンバニを輸送機に乗せる事に成功したフォークナー達は、少しずつ陣地を引き払って撤退を開始します。ショーンは、輸送機を陣地に出来るだけ近付けて兵士を拾い上げ、滑走路に出ます。フォークナーは、しんがりのレイファーを呼びます。しかし、輸送機に乗り掛かったレイファーは被弾し、落ちてしまいます。負傷で走れなくなったレイファーは、フォークナーに殺してくれと訴えます。フォークナーは躊躇いながらもレイファーを撃ち、殺しました。輸送機は銃撃を受けながらも離陸します。コクピットに被弾した際、弾が貫通してショーンは足を負傷します。そんな彼の横、副操縦士席にフォークナーがやって来て、ローデシアに向かう事を決断、レイファーを撃った事を告げます。ショーンは燃料が足りるか判らないので、不要物を全て投棄するするよう指示を出します。ショーンは出血を抑える為に足を縛り、痛みをこらえて操縦を続けます。移動中も負傷者から死者が出る中、輸送機はローデシア国境に近付きます。リンバニが搭乗している事は告げましたが、ローデシアでは越境を許可しません。フォークナーは、持病で息も絶え絶えなリンバニに、身の証が出来ないか訪ねます。リンバニはフォークナーに、過去に出席した秘密会談の出席者の名を上げ力尽きます。フォークナーはそれをローデシアの管制官に伝えました。ローデシアは越境と国内飛行場への着陸を許可します。輸送機は片肺飛行になりましたが、ショーンは何とか着陸させました。しかしその直後、倒れてしまいました。エドワード卿は、屋敷で鉱山開発に関する面会を済ませ、執務室で一息吐きました。しかしそこへ、忍び込んでいたフォークナーが姿を現していました。フォークナーは、面会を盗み聞きしていて裏事情の全てを理解していました。その上で、エドワード卿に銃を向け、帰還した部下達と遺族の為に報酬を要求します。エドワード卿は、金庫から出した大金をフォークナーに渡し、彼に差し向けた殺し屋も引かせると約束します。更に後から半額を渡すとも言いました。フォークナーは、これ以上の取引は、死んで行った仲間達が浮かばれないとエドワード卿を撃ち殺しました。フォークナーは、車で待機していたショーンと共に屋敷を後にしました。レイファーの息子の所にレイファーが会いに来ました。彼は優しい顔で父親の事を話はじめした。
「ワイルド・ギース」感想・レビュー
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この映画「ワイルド・ギース」は、アフリカ大陸の動乱を背景に、白人傭兵が大活躍する戦争冒険アクション映画の痛快作だ。
そして、この映画の最大の見どころは、何と言っても、リチャード・バートン、ロジャー・ムーア、リチャード・ハリス、ハーディ・クリューガーという映画好きにはたまらない、超豪華な重量級四大スターの競演だ。
黒人大統領が軍部のクーデターで逮捕され、利権の確保が目的のイギリスの大銀行家スチュワート・グレンジャーに雇われた戦争屋の元アメリカ将校リチャード・バートンが、ロジャー・ムーア、リチャード・ハリス、ハーディ・クリューガーをスタッフに50名の白人傭兵を集め、訓練するまでを、たっぷりと時間をかけ、それぞれの環境と人間描出を行なうところが、まずこの映画の前半で大いに楽しめる。
ムーアは、麻薬に絡んでギャングに狙われている名パイロット、ハリスは子供を寄宿学校に入れて、侘しく暮らしている作戦の名人、クリューガーは元南アフリカの警官で弓術の名人という設定で、アンドリュー・V・マクラグレン監督は、この映画であくまでも”アクションと冒険の面白さ”を打ち出そうとしているので、流血の氾濫や残虐シーンに節度のある描き方をしていると思う。
そして、後半は、幽閉されているアフリカ某国の黒人大統領リンバニを救出するため、バートン指揮の傭兵たちが落下傘で降下し、戦闘を繰り広げながら血路を開いて行くという、かなり強引で無茶とも思える冒険アクションシーンが描かれていく。
黒人大統領を救出し、作戦は成功するかに見えたが、雇い人の銀行家がクライマックスで、政治状況の変化により傭兵たちを裏切ってしまう。
そのため、救出した大統領を抱えた傭兵たちが、独裁軍事指導者の将軍の指揮下にある黒人兵たちと闘うことになってしまう。敵味方の動きや戦闘シーンの時間経過、戦闘場面の地形などが、適確に描かれているのは、さすがに長年に渡って、西部劇映画を撮り続けて来たマクラグレン監督、さすがだ。
また、スケールの大きいアクションシーンも数多くの見せ場の連続で、アクション映画の模範になるような出来栄えだ。
四大俳優の中では、ハーディ・クリューガーが、役としておいしいもうけ役で、強い印象を残していたと思う。
けっこう悲惨な作品である。マターソンは己の利益のために平気で傭兵たちを見殺しにするし、傭兵は4分の3くらい死んでしまう。一番悲惨なのはフォークナー自身がレイファーを射殺したこと。一体フォークナーはレイファーの息子になんと説明したのだろうか。