ニューヨーク1997の紹介:1981年アメリカ映画。1997年、犯罪増加に伴い巨大な刑務所になったニューヨークマンハッタン。そこにエアフォース1が墜落し、大統領が取り残される。警察は、その時偶然収監された元英雄のプリスキン、通称スネークに大統領救出を依頼する。意外に強い影響力を残したカーペンター、カート・ラッセルの黄金コンビが贈る、カルトSFアクション映画。
監督:ジョン・カーペンター 出演:カート・ラッセル(スネーク・プリスキン)、リー・ヴァン・クリーフ(ボブ・ホーク)、アイザック・ヘイズ(デューク)、ドナルド・プレザンス(合衆国大統領)、ほか
映画「ニューヨーク1997」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ニューヨーク1997」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ニューヨーク1997」解説
この解説記事には映画「ニューヨーク1997」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ニューヨーク1997のネタバレあらすじ:第1幕
1988年、犯罪が爆発的に増加したアメリカは、ニューヨークマンハッタンを巨大刑務所にし、そこに終身刑を課せられた重犯罪者を収監し始めました。島を取り囲む巨大な壁を乗り越えて脱走するものは、容赦なく射殺されました。そこ管理棟に、右目に眼帯をつけ、皮のジャケットを着込んだ男が、厳重に拘束され移送されてきました。管理棟のアナウンスは、ここで死刑を選択する事も出来ると告げます。マンハッタンの管理責任者ホーク本部長に、飛行禁止区域に近付いている航空機の報告が来ます。その航空機はエアフォース1で、テロリストにハイジャックされていました。大統領は手錠でアタッシュケースを繋ぎ、脱出ポットに乗り込み一人脱出します。エアフォース1は墜落させられ、大統領はマンハッタンに取り残されました。救助隊が編成され、脱出ポットの降下地点に向かいますが中は無人でした。そこに囚人の一人がやって来て、30秒以内に立ち去れと忠告、血染めの腕時計を見せます。大統領の危機と判断した救助隊は、一旦退きます。ホークは副大統領に相談、要求を待っている余裕はないと主張し、先程収監された囚人を呼び出します。囚人はプリスキンと呼ばれます。しかし彼は即座にスネークと呼べと訂正させます。この男は元アメリカ軍特殊部隊の英雄でした。ホークはスネークに、無罪放免と引き換えに24時間以内に大統領を救出しろと取引を持ちかけます。大統領には重要な国際会議が控えており、それに出席しなければなりませんでした。依頼には、重要なレポートが記録されたカセットテープの回収も含まれていました。無罪と引き換えという事でスネークは引き受けます。そんな彼にホークは、銃器や発信機などの装備の他に、超小型爆弾を注射し、時間内に戻れば解除すると約束しました。
ニューヨーク1997のネタバレあらすじ:第2幕
ホークの指示でスネークは、グライダーでマンハッタンに侵入し、ワールドトレードセンターの屋上に着陸します。ギリギリで着陸したグライダーを残し、スネークは大統領の持つ発信機を追い、劇場に入って行きます。その劇場では囚人達が戯れにミュージカルを演じていましたが、その観客の一人がスネークに気付き、ファンを自称して後を追います。スネークは彼を無視して更に奥に進みます。襲ってきた囚人達を叩きのめし、その先で大統領の腕輪を持っていた酔っ払いを見つけます。スネークはそれを腹いせに叩き壊し、ホークに大統領じゃなかった事を報告します。そして帰還すると言いますが、ホークは大統領の捜索を続行させ、戻ればグライダーを撃墜すると脅してきました。スネークは脱出ポットの所に向かい、手掛かりを捜します。しかし誰かが警鐘のようにパイプを鳴らし始め、徐々に人が集まってきました。スネークは用心して何処かに店に入ります。そこに潜んでいた女が話し掛けて来て、彼等は食料を捜していると教えてくれました。そして彼等が襲ってきます。女は地下に引き摺り込まれ、スネークは逃走を図ります。その際無線機を落とし、破損してしまいました。路地を抜けるとスネークの目の前にタクシーが止まります。運転手は先ほど劇場に居た男ギャビーで、スネークを助けその場を後にします。スネークは、ギャビーに銃を突きつけながら大統領を捜していると聞くと、デュークと名乗る男がさらって行ったと教えてくれます。スネークは、デュークに会わせろと言います。ギャビーはテープでジャズを掛け、スネークの頼みだと引き受けました。ギャビーが連れて来たのはブレインという男のアジトでした。彼はデュークと取引していて、様々な物を作っていました。ギャビーを出迎えたマギーは、スネークを連れて来た事に驚きます。誰もが死んだと思っていた男でした。案内されブレインに面会します。すると彼とスネークはお互い驚きました。彼は以前、スネークと組んで仕事をし、彼を置いて逃げてた事が過去にありました。スネークは大統領の居場所を聞きます。脅しめいた事をしても答え無いので、グライダーで取引をします。しかしブレインは、全員釈放の要求を出したと言い出します。そこでスネークは、大統領は既に死んだ事になっていると嘘をつきました。
ニューヨーク1997のネタバレあらすじ:第3幕
ブレインは、デュークにガソリンを作る代わりに、壁付近の69丁目の橋で地雷敷設図の製作を協力させていました。ブレインはデュークの計画をスネークに話ます。そこにデュークが一団を率いてやってきました。スネーク達はその一団を襲います。しかし、それは失敗し逆に追われ逃げる嵌めになります。逃走に成功したスネーク達は、大統領の監禁場所まで行き、彼を助け出そうとしますが、今度も失敗してしまいました。警察のヘリが偵察を行いますが、妙に静かでした。ホークは何か企んでいると様子を見ます。その頃デュークは、大統領を射的の的にして楽しんでいました。その内、デュークの弾がアタッシュケースの留め金を壊し、中身が零れ落ちます。デュークの側近は、その中からテープを取り出し、胸ポケットにしまいました。警察のヘリは、食料投下地点に囚人が集まっているのを確認します。囚人はヘリが近付くと逃げ去り、そこにはアタッシュケースが残されていました。その中には、69丁目の橋から釈放しろという要求書とスネークの持ち物が入っていました。スネークは、釈放期限までの暇つぶしにデスマッチに借り出されます。その頃、スネークのグライダーが何処にあるか思い付いたブレインは、デュークの側近を殺して大統領を奪取していました。スネークの方は、辛くもデスマッチに勝利します。その時スネークへの歓声が沸き、彼は英雄になります。旗色が悪くなったデュークに、ブレインが大統領を奪取した報告が入ります。デュークはブレインを追い、スネークもまたブレインの所に向かいます。
ニューヨーク1997の結末
ブレインに合流したスネークですが、彼等は既に追い込まれていました。そこはワールドトレードセンターの屋上で、グライダーは目の前でした。しかしそのグライダーは、デュークの配下に落とされました。仕方がなくスネークは、ブレインから敷設図と大統領を奪い、ビルを降ります。しかし大統領はテープを持っていない事を告げます。そこでブレインは、テープの在り処を知っているので連れて行けと取引を持ちかけます。下に行くとデュークの配下が待ち伏せしてましたが、そこにギャビーのタクシーが助けに来ます。スネーク達はそれに乗り込み、逃走を図ります。タクシーの中でブレインにテープの在り処を聞くと、ギャビーが持っていました。帽子と交換していたのです。ギャビーの持つジャズのテープと同じメーカーのテープを掛けると、中身は放射能等のレポートで間違いありませんでした。タクシーは一目散に69丁目の橋に向かいます。それをデュークも車で追います。敷設図を見ながらブレインは指示を出し、地雷をかわして行きます。しかし指示を聞き間違え、地雷でタクシーが真っ二つになってしまいました。そこでギャビーが死にます。走って逃げるしかなくなったスネーク達ですが、敷設図が間違っていてブレインも吹き飛ばされます。ブレインの屍を前に立ち尽くすマギーは、スネークに銃を要求します。彼は銃を渡し、大統領を連れて先を行きます。マギーは迫ってくるデュークの車に銃を向け、発砲します。車はマギーを撥ね飛ばし、残骸に突っ込みます。ホークに壁に車が2台接近している事が報告され、彼はスネークが帰ってきた事を知り、ワイヤーを降ろさせます。デュークが迫る中、大統領が引き上げられました。次はスネークの番ですが、デュークが追い付き飛び掛ってきます。スネークはデュークを殴り倒し、ワイヤーを手に取りますが、デュークはまだ諦めていません。しかしそんな彼を誰かが射殺します。発砲したのは大統領で、今までの恨みを晴らしたかのようでした。引き上げられたスネークは爆弾の処理を要求しますが、ホークはテープが先だと譲りません。スネークはテープを渡し、ホークは爆弾の処理を行わせました。一件落着し、大統領はスネークに礼を言い、報酬を聞きます。対してスネークは、救出の為に沢山の人間が死んだ事を問いました。大統領の返答は、国家の為に必要な犠牲だという事でした。その場を去ろうとするスネークに、ホークが俺を殺すのかと聞きます。スネークは疲れたのでまた今度だと答えました。ホークはスネークに組まないかと聞いてきます。するとスネークは、プリスキンと呼べと答えました。大統領の演説が中継で始まります。そして彼はテープを掛けさせますが、流れてきたのはジャズでした。去っていくプリスキンは、演説のテープをカセットから引き出し、そこら辺に放り捨てました。
巨大都市・ニューヨークが監獄都市となる。この設定がまず衝撃的でした。マンハッタンは川の中州から発展しましたのでなるほど、包囲するには好適な条件なのでしょう。この映画が公開された1981年当時は未だ東西冷戦の只中であり、70年代からの社会問題が一気に吹き出してアメリカ社会が混沌としていました。当地のニューヨークも確かに治安が悪化して犯罪多発都市の汚名を着せられていましたから、そういう当時の社会情勢を踏まえてみたら本作がより一層楽しめるはずです。大統領専用機がテロリストにハイジャックされて監獄都市に墜落してしまう。この発想が無かったら本作は制作されていなかったでしょう。犯罪者達の自治による都市運営。これも絶妙ですよね。社会から不要の烙印を押された連中が蠢きひしめき合う悪夢の都市空間。外国の凶悪犯専用の刑務所では実際に囚人達の手による自治に近い(放置?)運営がなされているようですが、世界で最も栄えた都市の中心が監獄棟だらけとなるのは身の毛のよだっことです。大統領は専用カプセルでからくも脱出にはせいこうするもののあえなく囚人達の手によって拉致されてしまい、囚人の解放を条件とする交渉道具にされてしまいました。これからが重要です。アメリカという超巨大国家が救出を第一に考えたのは大統領ではなく、彼が国際会議で演説する予定のテープであったということ。大統領は巨大な政治統治システムの表の顔に過ぎないということですよね。まあ、超巨大人型ロボットの顔とでも言いましょうか。条件に見合うだけの資質の持ち主なら誰でも務まるということ。政権側からすれば副大統領をはじめにいくらでも代わりの人材がいるという冷徹な現実。建て前の上では国民の信任を得て就任した行政府の代表が、実際にはシステムの、それでもいつでも交替可能な部品の一つに過ぎないということを痛烈に教えてくれました。さて、その大統領救出の大役を仰せつかったのはテロリストより始末の悪い、反逆者である元・軍人でした。元々は非常に優秀な資質のある彼は作戦遂行上のトラブルから軍を追われ、それからは国家に対して恐るべき敵となったのです。一筋縄でいかない元軍人は当然その要請を拒否しますが、体内に時限爆弾を埋め込まれて止む無く要請に従うことに。彼は苦労して監獄島への潜入に成功し、幾多の曲折を経て無事に任務に成功します。そして予定のスピーチの場面。演説が流れるはずなのに、聴こえてきたのは軽快な音楽でした。脱出行に協力してくれた囚人である仲間の一人が持っていたテープと元軍人がすり変えたのでした。「世界平和のために」と前置きした得意満面の大統領の笑みが瞬時にして困惑したのには笑えましたが。小難しい単語の羅列よりもこちらの方が確かに粋ですよね。続編として『エスケープフロムL.A.』も制作されましたが、こちらの方の紹介は日を改めてからにしたいと思います。