ヴァチカン美術館4K3D 天国への入口の紹介:2013年イタリア映画。ヴァチカン美術館の成り立ちと歴史、その源流を、所蔵作品をそのエピソードと共に古代美術から現代美術まで解き明かす。
監督:マルコ・ピアニジャーニ 出演:アントニオ・パオルッチ、パオロ・カシラギ ナレーション:石丸謙二郎
映画「ヴァチカン美術館 天国への入口」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ヴァチカン美術館 天国への入口」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ヴァチカン美術館 天国への入口の予告編 動画
映画「ヴァチカン美術館 天国への入口」解説
この解説記事には映画「ヴァチカン美術館 天国への入口」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ヴァチカン美術館 天国への入口のネタバレあらすじ:起・ヴァチカン美術館の成り立ち
人の指、水,塵のイメージを背景に、ヴァチカン美術館は500年以上の歴史があり、でき代の教皇による収集品で構成されていることが語られる。教皇は人によるすべてのものを保管しようと、芸術家の想像する作品を収集し残そうとした。その始まりはローマ郊外で発見されたラオコーン群像。この彫刻が展示されたことがこの美術館の起源。ヴァチカン美術館はどの美術館よりもグレコローマンの彫刻の古代コレクションが多い。それは、教皇が古代文明の後継者である事を示す意味もある。古代彫刻の復元も行っており、その中で、ミケランジェロに依頼された復元は、ミケランジェロ本人が辞退し、トルソーの形のまま今に伝わっている。けれど、彫刻群が彼に与えた影響は大きく、彼はのちに、絵画と彫刻で成功を収める。その最初がピエタ。ミケランジェロの署名が残る唯一のもので、署名の理由はミケランジェロの作ではないと間違われることが多かったから。その他にもレオナルド・ダ・ヴィンチは未完のヒエロニムスを書き、先駆者のジオッドは髪を人間に近づけ感情をその中に描いた。それは後のカラヴァッジオのキリストの埋葬まで続いてゆく。路上の人々をモデルに描きながら清らかさを失わないのは、画家が深い信仰を持っていた証拠ではないだろうか。
ヴァチカン美術館 天国への入口のネタバレあらすじ:承・二つの転換期
ヴァチカン美術館には二つの転換期がある。1506年、ラオコーンから古代彫刻の収集が始まった年。そして1973年、モンティーニ家のパウロ6世が現代宗教美術コレクションで教会と現代美術の隔たりから、カトリック教会と美術の和解を計った。マリアがまるで農民のような、ゴッホのピエタ。シャガールの赤いピエタはの赤は二次大戦のイメージの赤。ルーチョ・フォンターナの聖母は顔以外は粗削りで定まっていない。天国は信仰持つ人間の中にあると言ったダリは、信仰なく死ぬことを恐れていた。彼は反教会主義者だったが晩年宗教画を書いている。そのキリストの磔刑には十字架はなく、顔は見えない。他の作品と強く繋がるそれらは、時を超えた祈りでもある。
ヴァチカン美術館 天国への入口のネタバレあらすじ:転・ラファエロとミケランジェロ
ラファエロは署名の間のため、ミケランジェロはシスティーナ礼拝堂のために両冠された。ラファエロはミケランジェロとダヴィンチの融合させようと試み、アテネの学堂では哲学者の顔に芸術家を宛てた。また、聖ペテロの解放では美術史初の夜景が描かれ、天使の光と月の光が照らしている。ラファエロとミケランジェロは、同志であり、ライバル。二人は野心的な作品を生み出し続けた。ミケランジェロは、絵画が彫刻より劣るとみなしながらも挑戦し、ひとりで300人以上の人物を四年がかりで20メートル上の天井に描いた。黴に弱いフレスコ画は書き上げてから剥がれ落ちることもあり、また教皇との対立もした。その結果、彫刻のような人体が主役の天井画が完成、絵は大成功したが、ミケランジェロは身体が曲がり視力が衰えた。そんな彼は30年後もう一度呼び寄せられることとなる。 ラファエロは、キリストの変容を遺作として残し、後世の画家はラファエロの作品を研究し模写するようになった。ミケランジェロはライバルを失い孤独の中で完璧を追い求めていた。
ヴァチカン美術館 天国への入口の結末:ミケランジェロの傑作、そして今
60歳のミケランジェロにシスティーナ礼拝堂の祭壇画の依頼が来る。当時のルターの改革が始まっており、カトリック教会とルター派に融合点を求める思想に傾倒していたミケランジェロは最後の審判を描くことにした。完成した祭壇画には天井画での遠近法はなく、天使にも翼がない。美術史における転換期でもあった。美術館は生きている、成長し年月と共に変化する。それがヴァチカン美術館。1506年のユリウス二世のラオコーン群像を起源とし、1771年にクレメンス14世が一般公開を始めた。現在は毎年500万人以上の来場者を誇る。
以上、映画のあらすじと結末でした。
ヴァチカン美術館 天国への入口のレビュー・考察:神の創造、人の創造
この作品に時折挿入されるイメージに、人の手や塵がある。それは人が塵から生まれ塵に還ると言う聖書の文言をなぞっていると同時に、その塵から生まれた人が石や何もないカンバス、壁に作品を創造し生み出すと言う行為に重ねているように見える。それは塵の中から彫像が現れるシーンでよくわかる。人が生み出したものを収集し保管すると言う行為は、どこか、神が混沌の中から世界を作った世界を保管しているようにも見える。それは、ここがヴァチカンというキリスト教の総本山としての機能も併せ持っている場所で、そこにある美術館の機能としては十分納得できる。この作品の演出や構成も、塵や人の手、水などを象徴的に扱っており、ドキュメンタリーでありながら、どこか神秘的な片鱗を残している。
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