死の棘(しのとげ)の紹介:1990年日本映画。狂気の果てに再生を見出そうとする夫婦を描いたドラマ作品。結婚して10年になるミホとトシオ。2人の子どもにも恵まれ、穏やかに暮らしていた一家に崩壊の危機が訪れる。トシオの浮気が発覚したのだ。トシオは心を病んでしまったミホを献身的に支え、壊れた家族の絆をもう一度結ぼうとする。原作は島田敏郎の同名小説。1990年のカンヌ国際映画祭で審査員グランプリを受賞した。
監督:小栗康平 出演者:松坂慶子(ミホ)、岸部一徳(トシオ)、木内みどり(邦子)、松村武典(伸一)、近森有莉(マヤ)ほか
映画「死の棘」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「死の棘」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「死の棘」解説
この解説記事には映画「死の棘」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
死の棘のネタバレあらすじ:妻の狂気
舞台は終戦後の日本。戦中に出会い恋に落ちたトシオとミホは、終戦を迎え結婚します。長男伸一と長女マヤを授かり、家族4人質素ながら穏やかな暮らしをしていました。ところが結婚10年目になって、トシオの浮気が発覚します。トシオは結婚直後から邦子という女性と不倫関係にありました。夫の裏切りにショックを受けたミホは精神を病んでしまいます。生涯をかけてトシオに尽くしたというのに、その報酬がこれかと詰るミホ。死のうとする彼女にトシオは淡々と、ひたすらに謝罪を繰り返します。「頭に鉄のお釜が被さって締め付けてくるの」と呟いたミホは、頭を叩いて欲しいと訴えます。トシオは言われるままにミホの頭を叩きました。
死の棘のネタバレあらすじ:夫の献身
ミホは事あるごとに「疑問が出てきたの」とトシオを尋問します。トシオの過去を根掘り葉掘り尋ね、全ての罪を暴き立てようとするミホ。その度にトシオは上手く答えられず身を小さくします。ある夜、トシオが仕事から帰宅するとミホの姿がありませんでした。近所を探すトシオは邦子の家にも行ってみます。トシオは邦子に関係を断ち切ると一方的に宣言して去りました。トシオが家に戻って少し経った頃、ミホが帰って来ました。今日こそは帰って来ないつもりだったのに、と自分を責めるミホ。翌日、夫婦は向かい合って座り話し合います。ミホは「あなたの言うことは信用出来ないのですよ」と抑揚の無い声で言い放ちました。ミホはトシオが邦子にチョコレートや下穿きをプレゼントしていたことも、入院費用を出してやったことも知っているのです。激情にかられたミホがトシオの頬を叩くと、間髪入れずにトシオもミホを叩きました。夫婦は先を争って家を出て行こうとします。10年我慢してきたのに、誰にも渡したくない、と泣き喚くミホ。トシオは謝罪し、今後10年ミホに献身的に奉公すると約束します。
死の棘のネタバレあらすじ:夫婦の狂気
トシオはあらゆる努力を払ってミホに尽くしました。どこへ行っても寄り道せず真っ直ぐに帰宅し、ミホの要望に応えて古い垣根を新しくします。そんなトシオにミホも満足している様子でしたが、いつも何かの弾みで突然尋問を始めてしまいます。何度謝っても過去を掘り返し問い詰めるミホに、トシオも苛立ち不安定になっていきました。絶叫して走り出したり、自殺を図ったりするトシオ。そんな時にはミホの方が冷静になり、自分があまりに責めるのでトシオの頭がおかしくなったと困ったように呟くのでした。そんな一家も新年を迎え、皆で凧揚げに出かけます。その帰り、落ち着いていたミホが突然駅のホームで「あいつがいたー!」と絶叫しました。トシオが考えるよりもずっとミホは邦子を恨んでいるのです。トシオはついにミホを精神科の病院へ連れて行きました。ミホは「私は病気じゃない」と激怒しますが、強制的に入院させられてしまいます。母の不在に、子ども達にも動揺が見えるようになりました。毎日のようにトシオの見舞いを要求するミホは、結局病院を抜け出し家に帰って来てしまいます。
死の棘のネタバレあらすじ:真夜中の争い
一家は自宅を引き払い田舎へ引っ越しました。ところがある夜、引越し先に邦子が現れます。トシオを諦めていない彼女は、見舞金を渡すという名目で会いに来たのでした。当然ミホは怒り狂い、自分の前で邦子を殴れとトシオに命令します。トシオは言われるまま邦子の頬を叩きました。ミホは逃げる邦子を追いかけ、庭で彼女に馬乗りになり取っ組み合いを繰り広げます。「トシオさんよく見なさい!あなたがこうしたのよ!」と絶叫する邦子。夜中の騒ぎに警察や近隣住民が現れると、2人は大人しくなりました。
死の棘の結末:再生の兆し
ミホは結局精神科の病院に入ることになりました。子ども達はミホの故郷である奄美大島の実家に預けられます。トシオはミホに付き添うため病院に残りました。夜、ミホがふいに姿を消します。どうやら非常口から外に出てしまったようでした。いくら探しても見つからず、トシオは無言で池の底を竹竿で確認します。病院に戻ると穏やかな顔をしたミホが廊下に立っていました。「トシオが泣いてたから戻って来ちゃった」とミホ。持続睡眠療法に入ったミホの病室は暗幕に覆われ、デスクライトの明かりだけがミホとトシオを照らします。ミホが眠ってしまったら寂しいと言うトシオ。ミホは「じゃあ、うんと騒いでやる」と笑い、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画死の棘のあらすじと結末でした。
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