拝啓天皇陛下様の紹介:1963年日本映画。第二次世界大戦前後の時代を舞台に、漢字も読めずカタカナしか書けなかった天涯孤独の男と、軍隊で出会った戦争嫌いで作家志望の男との約20年間に渡る奇妙な友情を描いた人間ドラマです。
監督:野村芳太郎 出演者:渥美清(山田正助)、長門裕之(棟本博、ナレーション)、左幸子(棟本秋子)、加藤嘉(堀江中隊長)、浜口庫之助(昭和天皇)ほか
映画「拝啓天皇陛下様」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「拝啓天皇陛下様」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「拝啓天皇陛下様」解説
この解説記事には映画「拝啓天皇陛下様」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
拝啓天皇陛下様のネタバレあらすじ:起
1931年(昭和6年)1月、岡山の陸軍訓練所にこの年も新兵たちが入隊してきました。彼らはこれから過酷な2年間の徴兵期間を過ごすことになるのです。その中には、大学を卒業したばかりの作家志望の男・棟本博(長門裕之)がいました。軍隊も戦争も大嫌いな棟本にとって兵役は苦痛でしかありませんでしたが、棟本はいつも満面の笑みを浮かべている一風変わった新兵のひとり山田正助(渥美清)と知り合います。山田は幼い頃に両親を亡くした天涯孤独の男で、漢字も読めずカタカナを書くのがやっとでしたが、先輩の二年兵から受けるしごきも苦にせず、不況下でも三度の飯にありつけて整った生活環境に身を置けるし勉強も教えてもらえる軍隊は山田にとっては天国のように感じられていました。
拝啓天皇陛下様のネタバレあらすじ:承
山田は先輩から勉強を教えてもらい、少しずつ読み書きができるようになっていきました。入隊の翌年である1932年(昭和7年)11月、天覧の大演習が行われ、昭和天皇(浜口庫之助)の優しそうな表情を目の当たりにした山田は深く心を打たれます。翌月、満期除隊の近づいた山田は堀江中隊長(加藤嘉)の計らいで果樹園の職を紹介してもらい、また後輩の垣内(藤山寛美)から手紙を欲しいと言われたことから、山田はいつの間にか自分が手紙を書けるようになっていた事に気が付きます。山田と共に除隊を迎えた棟本は秋子(左幸子)と結婚、ささやかな家庭を築いていましたが、1937年(昭和12年)、日中戦争の開戦と共に山田や棟本らは再び召集を受けます。
拝啓天皇陛下様のネタバレあらすじ:転
山田と棟本は岡山の練隊で再会を果たします。やがて南京が陥落、仲間たちはこれで戦争が終わると喜びますが、帰るあてのない山田は自分を軍隊に残してほしいとの願いを込めて、「ハイケイ天ノウヘイカサマ」という手紙を書き始めました。これは不敬罪に値すると感じた棟本は慌てて手紙を取り上げ破り捨てます。しかし戦争は終わるどころか泥沼と化し、翌1938年(昭和13年)、山田と棟本はそれぞれの戦地に赴くことになります。やがて戦闘で重傷を負い除隊となった棟本は1941年(昭和16年)に自らの経験を元にした小説「分隊長日記」を発行、小説家になるという夢を叶えます。ある日、九州で講演会を開いた棟本は、偶然にも炭鉱で働いていた山田と再会を果たし、酒を酌み交わします。山田は相変わらず軍隊に戻るという夢を抱いていました。やがて12月、太平洋戦争が勃発し、棟本は従軍作家として、山田は三度軍隊に召集され、そして1945年(昭和20年)、山田は中国大陸で終戦を迎えます。
拝啓天皇陛下様の結末
1947年(昭和22年)、棟本夫婦は作家としての仕事を失い、生活も困窮していました。ある日、浮浪者のような身なりをした山田が現れ、棟本夫妻は山田を同居させることにします。ところが、買い出しに出向いた際、山田は「徴発」だといってニワトリを盗んできたことから、激怒した棟本は山田を追い出してしまいます。翌1948年(昭和23年)、児童文学作家として再出発した棟本は、取材先の奥日光で偶然にも入植者として働いていた山田と再会、再び旧交を温めるようになっていました。山田は棟本の近所の長屋に住む戦争未亡人の手島国枝(高千穂ひづる)に片想いをし、より高額の給料を稼ぐために華厳滝から自殺者を収容する職に就きますが、手島には交際する気も再婚する気もなく、振られた山田は傷心のあまり姿を消してしまいます。そして1950年(昭和25年)、東京へ移り住んだ棟本夫妻のもとに山田が現れ、戦争未亡人の井上セイ子(中村メイコ)と結婚するので仲人をしてほしいと頼んできました。棟本夫妻は喜んで引き受け、式の支度に追われていたある冬の日、棟本夫妻は新聞で、酒に酔った山田がトラックに撥ねられて死亡したことを知ります。深い悲しみに包まれた棟本は、「拝啓天皇陛下様、あなたの最後のひとりの赤子がこの夜戦死をいたしました」と呟きました。
この映画の感想を投稿する