白い巨塔の紹介:1966年日本映画。山崎豊子の同名小説のストーリー前半部分を映画化した作品で、後にテレビドラマで続編・リメイクが作られ大反響を巻き起こした医療サスペンスの金字塔的作品です。食道癌手術の権威にして野心家の主人公とその終生のライバルを軸に、大学医学部内部の権力闘争や誤診を巡って熾烈な駆け引きが展開されます。
監督:山本薩夫 出演者:田宮二郎(財前五郎)、田村高廣(里見脩二)、小川真由美(花森ケイ子)、東野英治郎(東貞蔵)、小沢栄太郎(鵜飼雅行)、船越英二(菊川昇)、滝沢修(船尾厳)ほか
映画「白い巨塔」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「白い巨塔」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「白い巨塔」解説
この解説記事には映画「白い巨塔」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
白い巨塔のネタバレあらすじ:起
浪速大学医学部の助教授・財前五郎(田宮二郎)は非常に優秀な外科医で、食道癌の手術に関しては優れた技術を持っており、将来的な次期教授の座は確実とされていました。しかし、その傲慢不遜な人格、名誉欲や権力欲の強さに加えて、勘に頼るところや独自の手術方法などを快く思わない者もおり、上司の東貞蔵教授(東野英治郎)は明らかに財前を嫌っていました。財前は岡山県の貧しい農家に生まれ、母・きぬ(瀧花久子)の手で医学部まで進んだ後、財前産婦人科病院の院長で財力も人脈も兼ね備えた財前又一(石山健二郎)に見いだされ、その娘・杏子(長谷川待子)と結婚して婿養子となり、又一の権力をバックにつけて助教授の座にまで上り詰めたのです。
白い巨塔のネタバレあらすじ:承
かねてから教授と助教授の間には大きな格差があることを痛感していた財前は、定年退職を間近に控える東教授の後任の座を狙って入念裏工作を展開していました。義父・又一から教授選挙戦のバックアップの確約を得た財前は、医学部長・鵜飼雅行(小沢栄太郎)に高価な絵を贈って味方につけることに成功します。一方、定年後も自身の影響力を誇示しておきたい東教授は外部から後任教授を招聘しようと画策、自身の出身校・東都大学の系列である金沢大学医学部の教授・菊川昇(船越英二)に目をつけ、娘の佐枝子(藤村志保)と結婚させて味方に取り込もうとしました。教授選には財前や菊川の他にも、第三勢力の拡大を図る整形外科・野坂教授(加藤武)の推薦する徳島大学教授・葛西の3人が立候補することになりました。
白い巨塔のネタバレあらすじ:転
教授選を間近に控えたある日、財前は、同期である清廉潔白な助教授・里見脩二(田村高廣)から、胃癌の疑いがあるという佐々木庸平(南方伸夫)という患者の診察を依頼されました。診察の結果は紛れもなく胃癌であり、財前の執刀の元で手術することとなりました。しかし、レントゲン写真から佐々木の肺に影があるのを発見した里見は断層写真を撮るよう進言しましたが財前は却下、胃癌の手術は無事成功しました。しかし、術後も佐々木の容態は改善どころか悪化、教授選の準備に追われていた財前はまともに佐々木の容態を診ることもせず、間もなく佐々木は死亡してしまいました。やがて様々な思惑が飛び交うなか教授選が行われ、財前と菊川の二者による決戦投票にもつれこみました。財前は買収や脅迫などあらゆる手段を駆使、決選投票では僅か2票差で財前が勝利を収めました。
白い巨塔の結末
遂に悲願の教授の座にまで上り詰め、まさに人生の絶頂期を迎えた財前でしたが、それから間もなく、先日死亡した佐々木庸平の遺族が浪速大学側の誤診があったと主張、財前を相手取り訴訟を起しました。マスコミが注目するなか、財前は老練な弁護士・河野(清水将夫)に弁護を依頼する一方、手術関係者に説得工作を行い自分に有利な証言をさせるよう仕向けました。一方の遺族側も正義感溢れる関口弁護士(鈴木瑞穂)を立て、里見も医学的観点から遺族側につきました。裁判の結果、癌医療の権威を味方につけた財前が勝訴、財前に不利な証言をした里見は外部の病院の教授へ左遷されることとなり、浪速大学を退職しました。もはや財前には敵は誰一人もなく、財前は“白い巨塔”を自信たっぷりに闊歩していました。
この映画「白い巨塔」の監督の山本薩夫といえば、「戦争と人間」三部作、「金環蝕」「不毛地帯」などの平和、反権力を貫いた骨太の作品を得意とする、日本を代表する左翼系の巨匠だ。
ところが、山本薩夫監督の作る映画は、紋切り型の主張を真正面から唱えていながら、その語り口は監督自身の主張を裏切って、”悪の美学”に満ちている。
例えば、「戦争と人間」で観る者を魅了するのは、山本学演じるひ弱な知識人よりは、芦田伸介演じる右翼というように—-。
日本の象牙の塔と言われる、大学の医学部の腐敗を追求した、山崎豊子の大ベストセラー小説を映画化した「白い巨塔」においても、山本薩夫監督の演出は、大勢の登場人物を手際良く捌いていて、全く滞るところがないほどの見事さだ。
金に物を言わせる開業医。権威主義の医学部長。学内政治にしか興味がない助教授。勝ち馬に乗ろうとする医局員。患者本位の医療を目指す良心的な医師—-。
その中で、教授の地位を狙う第一外科助教授の財前五郎を演じるのが、彼の代表作ともなった田宮二郎。
金のために婿養子となりながら、バーに愛人を作り、自身の学問的成果のために患者を利用し、同期の第一内科助教授の田村高廣演じる里見を、追い落としてまで医療ミスを揉み消そうとする。
この底なし沼のような野望を持つ、財前五郎という人間のニヒルさは、その後、田宮二郎自身によってテレビドラマ化されるほどの、ハマリ役となったのだ。