映画「日本橋」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
日本橋の紹介：1956年日本映画。心優しい清葉と、彼女にライバル心を燃やすお考の二人の芸者。不幸な過去を背負う若き医学者葛木は清葉に姉の面影を追い求めたが、お考に愛されるようになる。泉鏡花の戯曲を市川崑が色彩豊かに映像化したカラー映画。巧妙なセット、芸者を演じる女優たちの上品な和服姿、陰影の強い照明でスタジオ内に日本橋界隈を作り上げる。
監督：市川崑 出演：淡島千景（お孝）、山本富士子（清葉）、若尾文子（お千世）、品川隆二（葛木晋三）.、柳永二郎（「赤熊」五十嵐傳吉）、船越英二（笠原信八郎）ほか
この解説記事には映画「日本橋」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
日本橋元大工町。小路に面して、旦那がいるのに別に愛人を作った末、愛人に捨てられ肺病で死んだお若という芸者の幽霊が出るという噂の屋敷があった。
ひな祭りの次の日、そこに芸者置屋の稲葉屋が引っ越してくる。駆け出しのお千世ら９人の芸者衆を抱える女主人お孝を、引っ越しのその日に赤熊こと五十嵐傳吉が訪れるが、たちまち追い返される。赤熊は北海道の海産物問屋だったが、お孝に惚れて金をつぎ込みすぎて資産を失なっていた。
気風がよい人気芸者のお孝だが、美貌の芸者、滝の屋の清葉には一方的に敵意を抱いていた。赤熊とつきあったのも、清葉への面当てに清葉にふられた男とつきあうことにしていたまでのこと。引っ越し当日も、待合・お鹿で清葉と出くわし憎まれ口をたたく。
清葉を待合にその日呼び出したのは、大学で研究する若い医学者葛木晋三。葛木の姉は弟に教育を受けさせるために妾となった。その後姉は妾の身を恥じて弟に会おうとせず、弟が学業を終えると観音様の巡礼に出て後行方不明となった。葛木は姉の形見の京人形に似た清葉に恋心を抱き、三か月ごと会っていたが、5年たった今日、初めて身の上を話し、妻となって欲しいと言った。清葉は旦那がいて自分の娘と母を養っているので、その思いを受け入れることはできない。葛木と別れの杯を酌み交わすが、清葉は芸者の身をうらむ。
清葉と別れた葛木は橋の上から、姉の形見の雛人形に供えたハマグリとサザエを投げる。その行為を怪しく思い笠原信八郎巡査がしつこく職務質問する。それを見かねたお孝がハマグリとサザエをもってきて川に投げたので、巡査はそういう習慣があるのかと納得。巡査に名を問われてお孝は葛木の「妻」と手帳に記させる。そこへお千世がやってきて、葛木が清葉にご執心だと教えるので、お考は例の如く葛木を誘惑するのだったが、この男にだけは特別な感情を抱くようになる。
赤熊の妻が乳飲み子を残して死ぬ。赤ん坊を育てられず赤熊は滝の屋の門の前を選んで子供を捨てる。その泣き声を聞いた清葉は、親が誰かを知ることなくその子を育て始める。
赤熊は稲葉屋に上がりこみ、お考にもう一度いっしょに寝てほしいと泣きつく。相手にしないお考だが、赤熊の妻が亡くなったという話に動揺し、赤熊を一晩泊めてしまう。
翌日、笠原巡査がお考を訪問する。巡査は、大学の生理学教室を訪れ葛木が本当に大学教員であることを確認したが学問的なたたずまいに感服したという話をする。巡査がお考を「奥さん」と呼びかけるのがうれしく、お考は自分こそ葛木の妻であると思い定めることにする。赤熊は居座ろうとして刃物を取り出すが、自分を殺すなら肌に刃物で「葛木」と描いてくれというお孝の凄みに気おされてしまう。
正月、葛木も参加する大学の先生たちの宴会の座敷にお考も清葉も入る。葛木に話しかけた清葉に嫉妬して騒いだお考を葛木はぶってしまう。でも、お考はそれを、自分を妻のように思ってくれる印と思って喜ぶ。
葛木がお考を稲葉屋まで送った帰り、赤熊が葛木を待ち伏せ、お孝と別れてくれと懇願する。それはお考の決めることと、相手にしようとしなかった葛木だが、赤熊は恥も外聞もなく頼み込む。葛木は、赤熊のようにお考を「自分の女房」と言えず、「自分の情人」と赤熊に言ってしまった自分を恥じ、お考にわびる。そして大学をやめ、姉を捜す巡礼の旅に出る。
葛木がいなくなってから、お孝は心に異常を来す。稲葉屋にはお千世をのぞいて芸者衆はいなくなり、お考のおばが住んで威張り散らす。清葉は困窮したお孝とお千世を救おうと、お千世が出るお座敷を紹介する。
ところがその夜、清葉の滝の屋が火事を出す。かけつけた清葉が心配するのは母親と赤ん坊のいる二階。火消したちは清葉を止めるが、赤熊が火の中に飛びこんで清葉の母と自分の子供を助け出していた。
人々が延焼を恐れて家財道具を外に出し騒然としている街。赤熊は赤ん坊を抱えて、赤ん坊を救った勢いでお考を殺してしまおうとする。おあつらえ向きに二階から日本刀を落とす人がいた。稲葉屋で赤熊はまずお考のおばを刺し、さらにお考と間違ってお千世を刺してしまう。倒れているお千世を彼女の祖父、次にお考が見つける。勘違いを恥じて小さくなっていた赤熊をお考が日本刀で刺すが、そのお考の手に、僧形で旅を続けていた葛木が触れた。
笠原巡査たちが事件現場に現れる。まだ助かる見込みのあるお千世が病院に運ばれる。だがお考は、神棚に置いてあった、初めて葛木と会った日に笠原巡査が「医学士 葛木晋三 三十才 同妻」と記し後で手帳から破ってお考に贈った紙片を葛木に渡した後、台所で硝酸を飲む。赤ん坊を捜しにきた清葉に稲葉屋を託し、葛木を「あなた」と呼んで息を引き取る。
葛木は、旦那と切れて心機一転した清葉が主となり活気を取り戻した稲葉屋を訪れる。お千世は命を取り留め経過はよいと聞く。人の心がわからずお考を死に追いやってしまった葛木は一生仏門に身を置く覚悟だと言う。もう姉を捜すこともしない。姉の形見の京人形を清葉に渡して去って行った。
以上、映画「日本橋」のあらすじと結末でした。
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