サムライの紹介:1967年フランス映画。侍を彷彿とさせる殺し屋の生き様を描くサスペンス。フレンチ・フィルム・ノワールの傑作として名高く、数々の映画作品に影響を与えたと言われる。孤独な殺し屋ジェフは、仕事を終え立ち去る際ピアニストのヴァレリーに顔を見られてしまった。しかし警察の尋問を受けた彼女は、何故か犯人はジェフではないと断言する。警察と裏社会双方から追われることになったジェフは、己の美学を貫き通す道を選ぶのだった。
監督:ジャン=ピエール・メルヴィル 出演者:アラン・ドロン(ジェフ・コステロ)、ナタリー・ドロン(ジャーヌ)、フランソワ・ペリエ(主任警部)、カティ・ロジェ(ヴァレリー)、ミシェル・ボワロン(ヴィエネル)ほか
映画「サムライ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「サムライ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
サムライの予告編 動画
映画「サムライ」解説
この解説記事には映画「サムライ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
サムライのネタバレあらすじ:孤独な殺し屋
舞台は1960年代のフランス、パリ。4月4日土曜日午後6時、ジェフ・コステロが動き出します。彼は一匹狼の殺し屋で、多額の報酬と引き換えに殺しの依頼を受けていました。帽子とコートを身につけたジェフは、寒々しいアパルトマンを出て路上に停まっていた車を盗み、愛人ジャーヌを訪ねます。彼女に午前2時15分前まで一緒にいたというアリバイ工作を頼み、今回のターゲットのもとへ向かいました。殺害対象はバーの経営者マルテ。バーに侵入したジェフは早々にマルテを射殺し、すぐに立ち去ります。ところが去り際に、バーで働くピアニストのヴァレリーと鉢合わせてしまいました。近距離で顔を見られてしまったジェフは足早にバーから出て行きます。その様子を、数人の従業員や客が訝しげに見つめていました。途中で銃を捨てたジェフは2時15分前までジャーヌと過ごします。帰り際、入れ違いでジャーヌのパトロンであるヴィエネルがやって来ました。
サムライのネタバレあらすじ:捜査
警察はすぐに動き始めました。目撃者の証言をもとに、犯人と似ている人間がパリ中から連行されます。ジェフもその1人でした。警察署で面通しが行われ、執拗な尋問が始まります。ジェフを怪しいと睨んだ捜査の主任警部は、アリバイを崩すためにジャーヌとヴィエネルを呼び出しました。しかしジャーヌは口裏合わせの通りに話し、ヴィエネルも自分がすれ違った男はジェフに似ていると証言。結果的にジェフのアリバイはより確かなものになりました。それでもジェフを疑う警部は、最後にもう一度ヴァレリーに確認します。近距離でジェフの顔を見たはずの彼女は、何故か「この人じゃありません」と断言しました。日曜日の午前6時15分前、ようやくジェフは釈放されます。しかし警部はジェフを容疑者から外さず、徹底した監視をつけることにしました。すぐに尾行に気付いたジェフは移動に移動を重ね、何とか警察を振り切ることに成功。そして依頼人との待ち合わせ場所に向かいます。
サムライのネタバレあらすじ:新たな厄介事
待ち合わせ場所の陸橋には、金髪の男が1人立っていました。彼は仕事の仲介人であり、殺し屋でもあります。男に突然銃撃され、ジェフは腕を負傷してしまいました。どうやら依頼人は警察に連行されたジェフに不信感を抱き、保身のために殺害を企てたらしいのです。警察はジェフのアリバイ崩しに躍起になっていました。ジェフの外出中、アパルトマンの部屋に侵入した警察は盗聴器を仕掛けます。その頃、ジェフはヴァレリーに会うためバーへ行っていました。彼女の車に同乗したジェフは、何故偽証したのか尋ねます。ジェフはヴァレリーが依頼人を庇うため嘘をついたのだと考えていましたが、彼女は肝心な問いには一切答えません。ただ2時間後に連絡を、と言うだけでした。
サムライのネタバレあらすじ:依頼人の正体
月曜日の午前7時。警察はジェフのアリバイを崩すため、ジャーヌの部屋に押し入り強引な捜査を始めました。警部はあらゆる搦手でジャーヌの証言を覆そうとしますが、どんな脅しにも彼女は怯みません。一方、帰宅したジェフはヴァレリーに連絡を取ろうと電話の受話器を持ち上げます。ところが飼っている小鳥が妙に騒ぐのを不審に思い、部屋を調べて盗聴器を発見しました。そのため外に出て電話をかけますがヴァレリーは出ません。仕方なく部屋に帰ると、金髪の殺し屋が侵入していました。銃を突きつけた彼は誤解があったと和解を持ちかけます。マルテ殺しの報酬を渡し、新しい依頼について話し出す男。ジェフは隙を突いて男を殴り倒し、依頼人の名前と住所を聞き出します。依頼人の名はオリヴィエ・レイ。ヴァレリーのアパルトマンの隣室に住んでいました。
サムライの結末:殺し屋の生き様
ジェフに盗聴器を見破られた警察は、捜査員を増やして何とかジェフの尻尾を掴もうとします。ジェフがオリヴィエ・レイを訪ねるため外に出ると、あちこちで警察の目が光っていました。地下鉄に詳しいジェフは移動に次ぐ移動で捜査員を撒き、車を盗んでジャーヌのもとへ。彼女に別れを告げ、「決着はつける」と言って去っていきました。オリヴィエ・レイの住所へ向かったジェフは彼と対面し、問答無用で射殺します。次にジェフはバーへ行って演奏中のヴァレリーに近付きました。見つめ合った後、彼女に銃口を向けるジェフ。オリヴィエに依頼された次の標的は、ヴァレリーだったのです。その瞬間、店中に発砲音が響きました。バーで張り込みをしていた警部達が一斉にジェフを銃撃したのです。銃弾を浴びたジェフはその場で死亡。騒然とする店内で警部がジェフの銃を拾い上げると、弾は全て抜かれていました。ジェフはヴァレリーに救われた恩義を返すため、この結末を選んだのです。まさに「侍(サムライ)」を彷彿とさせるジェフの最期と共に、この映画も終幕を迎えます。
以上、映画サムライのあらすじと結末でした。
「サムライ」感想・レビュー
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この映画は、サムライの孤独な死と寡黙なプロの殺し屋の死を鮮やかにオーバーラップして描いた、ジャン・ピエール・メルヴィル監督のフィルム・ノワールの秀作だと思います。
この映画「サムライ」は、フランス映画史において”ヌーベルバーグ”と言われた、新しい波の革新的な動きがあり、ルイ・マル、フランソワ・トリュフォーら、この運動の担い手たちに多大な影響を与え、また、暗黒映画と言われる、”フィルム・ノワール”の名匠として、伝説的な監督になった、ジャン・ピエール・メルヴィル監督が、ゴァン・マクレオの原作を映画化した作品で、主演がハリウッドに渡って、実質的に失敗し、失意の内にフランスに帰国したアラン・ドロンが、「太陽がいっぱい」「地下室のメロディー」以来のはまり役で復活を遂げた記念碑的な作品ですね。
共演は当時、アラン・ドロンの夫人であったナタリー・ドロン、フランスの名優フランソワ・ペリエが脇を固め、撮影を「太陽がいっぱい」の名手アンリ・ドカエと、映画好きにはたまらないメンバーが集結しています。
主人公の一匹狼の殺し屋ジェフ・コステロ(アラン・ドロン)は、まるで日本の”サムライ”でもあるかのように、死地へ赴くこの男の胸中は、1本の刀に命を懸ける武士の心情の持ち主です。
彼は、寒々として空虚なアパートを出て、今日も孤独な仕事へと向かいます。
今回の殺しの仕事は、クラブ”マルテ”の経営者を殺す事で、そのアリバイ工作を情婦(ナタリー・ドロン)に任せ、その仕事はうまくいったかに見えましたが、逃走の際にピアニストのヴァレリー(カティ・ロジェ)に顔を見られてしまいます。ジェフをかばったヴァレリーの証言に不審を抱いた警部(フランソワ・ペリエ)は、ジェフに尾行をつけます。
一方、依頼人もジェフを狙い、消そうとしますが失敗。そして、ジェフのもとに新たな殺人の依頼が来ますが、何とその標的はジェフをかばったはずのヴァレリーだった—-、という展開になっていきます。
この映画の題名の「サムライ」は、もちろん日本の武士道に由来しているのですが、常に死と直面し、最後には自ら進んで死地へと赴く、この映画の主人公に”武士道と共通の精神”を見出して、監督のメルヴィル監督が命名したものだと言われています。
クールでストイックで、己の価値観とスタイルを持つ、孤独な一匹狼の殺しのプロフエッショナルの寡黙な男を、ソフト帽にトレンチ姿のアラン・ドロンがその鋭利な刃物を思わせる、静かで厳しい中にもゾッとするような美しさをたたえて好演していると思います。
そして、メルヴィル監督のスタイリッシュでクールなハードボイルド・タッチの演出スタイルが、この映画の全編に横溢していて、1カット、1カットがまさに一枚の絵画を見るようで、観る者の感覚を痺れさすような、陶酔的な心持ちへと誘ってくれます。
サムライの孤独な死と、寡黙なプロの殺し屋の死を、鮮やかにオーバーラップさせて、ピーンと張り詰めた緊張感のある映像で、クールにスタイリッシュに描いた、ジャン・ピエール・メルヴィル監督のフィルム・ノワールの秀作だと思います。
1967年のフランス映画です。
「太陽がいっぱい」から8年。
アラン・ドロンが孤独な殺し屋を演じて、そのカッコ良さで多くの観客を釘づけにした作品だ。
この映画を初めて観たのは高校生くらいの時なので、話は、特にラストが良く分からなかった記憶がある。
一応記憶にある範囲で書けば、次の通りである。
殺し屋ジェフ(アラン・ドロン)は、無数の鍵の束から街の路肩に停めてある車の合鍵を見つけてその車を盗み、郊外へ行ってあるガレージでナンバーを取り替え、拳銃も受け取る。
依頼を受けたクラブの経営者を事もなげに冷徹に撃ち殺す。が、帰り際、クラブの黒人歌手バレリーに顔を見られてしまう。
恋人のナタリー・ドロンにアリバイを頼んであるが、警察はジェフの犯行を確信し、総力を上げて彼を尾行する。
この尾行されるジェフもかっこいい。映画の最初から最後まで、ほとんどトレンチコートに帽子を被っているドロンだが、これほどトレンチコートの似合う男は2人といないだろう。
数日後、家に戻った時に、飼っている小鳥の様子に異変を感じ、すぐに家に誰かが忍び込んでいるのを察する。
しかし見事に相手を組み伏せたジェフは、その男はジェフに殺しを依頼した男の手下だったと知る(確か、刑事ではなく、手下だったと思う)。
ジェフは、その後約束した鉄橋の上に、報酬を受け取りに行くが、待っていた男はいきなり銃を出し、殺されそうになり、ジェフは片手に一発の銃弾を浴びる。
自宅で自分で傷の手当てをするジェフ。
ここまで、ちょっと記憶が違っているところがあるかもしれない。もしあったらご勘弁。
その後ジェフは例のクラブへ乗り込み、ピアノを弾いている黒人歌手のバレリーに銃口を向ける。
このあたりは、私はもう話がよくわからない。
というのも、いっせいに、張り込んでいた刑事たちの銃声が響き、ジェフはその場に倒れるのだが、死んだジェフの銃を確認すると、一発の弾丸も込められていなかったのだ。
あえて、よくわからないけど解釈してみると、この最後は自ら死を選んだ、サムライのハラキリなのかな?
ちなみにこのサムライというのは、邦題ではなく、フランスの原題なのだ。
話がよく分かればもっと面白かったのだろうが、私はただ、パリの風景と、アラン・ドロンの見事なまでのカッコ良さで、2時間近く画面に見入ってしまった。
しかし、ネットで検索してレビューを色々見てみると、アラン・ドロンのカッコ良さについて触れているものが多く、物語にはあまり触れられていない。
この映画は物語よりも、やはり別の要素が大きいのだろう。
つまり、考えてみれば、たった1人の芝居で1本の映画を最初から最後まで見せてしまう俳優は、アラン・ドロンくらいしかいなかったのではあるまいか?
こういう映画もあった、そしてこういう俳優もいた。
要するにそういうことだ。