マリーゴールド・ホテルで会いましょうの紹介:2011年イギリス,アメリカ,アラブ首長国連邦映画。人生終盤を迎えた男女7人が、快適な老後を過ごすために移住したインドで織り成す人間模様を描く。事情を抱えた熟年旅行者たちが傾きかけのホテルに長期滞在することに。観光、仕事、人探し、リハビリ生活、同じ屋根の下で過ごす間に生まれた人間関係が物語を動かしていく。
監督:ジョン・マッデン 出演:ジュディ・デンチ(イヴリン)、ビル・ナイ(ダグラス)、ペネロープ・ウィルトン(ジーン)、デヴ・パテル(ソニー・カプー)、セリア・イムリー(マッジ)、ロナルド・ピックアップ(ノーマン)、トム・ウィルキンソン(グレアム)、マギー・スミス(ミュリエル)、ティナ・デサイ(スナイナ)、ほか
映画「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
マリーゴールド・ホテルで会いましょうの予告編 動画
映画「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」解説
この解説記事には映画「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
マリーゴールドホテルで会いましょうのネタバレあらすじ:起・訳アリ熟年たち
夫を亡くし家を売らなければならないイヴリン、多くを語らない判事のグレアム、退職後の家が見つからないダグラスとジーン、脚の手術を待てないドネリー、出会いを求めるノーマン、恋人探しに余念のないマッジ。彼らが見つけたのはインド、ジャイプールにある熟年層向けの長期滞在型ホテルだった。
しかし、いざホテルに到着してみると、整備もままならないホテルだった。支配人のソニーは父親の遺産であるこのホテルを再興したいと、未来図として加工した写真を宣伝に使っていた事がわかった。
頭を抱える一行だったが、ドネリーは手術を終えてホテルでリハビリ生活、イヴリンはソニーの恋人のスナイナも働いている近くの会社に教養アドバイザーとしての採用、グレアムは子供たちとクリケットで遊び、ノーマンとマッジは同じ会員制クラブで恋人探をさがし、インドの生活に溶け込んでいった。
そんな中、ジーンは部屋に引きこもり、夫のダグラスだけが近くへ観光へ行った。
マリーゴールドホテルで会いましょうのネタバレあらすじ:承・こじれる人間関係
ある日、訪ねてきたソニーの母親が、ホテルを手放してスナイナと別れるまでと言って、ホテルに滞在を始めた。スナイナとの結婚のためにも、ソニーにはホテルの成功が必要だった。
ホテルで静養中のドネリーは、食事係の女性に掃除の仕方をアドバイスしようと話しかけると、不可触民の彼女は存在を認めてくれたと感謝し、ドネリーもまた自分が暇を出されたメイドだと打ち明けた。
引きこもっていたジーンは、グレアムを追って初めて外出をするが、彼がゲイだと知り帰国を望んだが、帰りの旅費がなかった。一方、夫のダグラスはイヴリンと親しくなった。
そしてノーマンは、クラブで出会ったキャサリンとのデートに張り切っていた。
マリーゴールドホテルで会いましょうのネタバレあらすじ:転・ほぐれる関係と危機
グレアムは青年時代に関係が世間に知れた時、かばえなかったマノージに負い目を負っていた。しかし実際に会ってみると、彼の妻もグレアムの事を知っており、今までの人生は穏やかだったと語った。
そして、ホテルに戻ったグレアムは患っていた心臓病で静かに息を引き取り、マノージはヒンドゥー式の葬儀を挙げた。
その頃、スナイナとソニーの母親との仲はいよいよ険悪になり、イヴリンを慰めるダグラスを見た妻のジーンは、いよいよ帰国を決めてしまった。
マリーゴールドホテルで会いましょうの結末:ホテルのピンチ
ソニーの母親がホテルの売却を決め、査定されるのを見て、ドネリーはビスケットを注文する振りをしてパソコンを借り、ホテルの帳簿を打ち出すとそれを持って投資家の元を訪れた。
イギリスの家族に電話を掛けたイヴリンは、スナイナと別れたと言うソニーを励まし、彼は彼女を連れてホテルに行くと、もう一度母親に結婚したいと懇願。執事のとりなしで二人は母親の許可を貰った。ホテルの経営も、ドネリーが帳簿を見せたおかげで話がまとまり、ドネリーはフロント係として働く事になった。
クラブで出会ったキャサリンと順調に交際しているノーマンや、仕事のあるイヴリンはこのままホテルに滞在する事になった。
その頃、空港に向かう途中で渋滞に巻き込まれたダグラスとジーンは、辛うじて三輪タクシーを捕まえた。しかし、荷物なしで二人乗るか、荷物付きで一人乗るかと選択を迫られ、ジーンだけが飛行場へ向かう事になった。
別れ際、ジーンは初めて前向きな言葉をダグラスに掛ける事ができ、ダグラスは一人ホテルへ戻ったのだった。
以上、映画「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」のあらすじと結末でした。
解説:リタイヤ後はインドに移住!
イギリスで年金生活を送っている、それぞれ「訳あり」の7人の年寄りたちが、物価が安いインド(ジャイプール)に移住を決意します。Retirement hotelの「The Best Exotic Marigold Hotel 」に住もう、と彼らは決めていました。(*リタイヤメントホテルとは、リゾートホテルの快適さで、老後をリッチに楽しく安心して過ごせるホテル、と解釈していいと思います)
「The Best Exotic Marigold Hotel 」は、その広告を見る限り、最高の素晴らしいホテル。ところがいざ訪れると、広告のうたい文句とはまったく違っています・・・まあ呆れるほどのおんぼろホテル・・・
埃だらけ、部屋によってはドアがついていない、鳩が住みついてゴキブリも出る・・・(*しかし映像的には素敵でした。カラフルな色遣いのファブリックに、アンティークなインテリア・・・)
彼らはがっかりしますが、様々な事情がありそのホテルに住み続けます。そして昔のインド人の「恋人」を探しに出たり、インドで「就職」したり、「療養」に精を出したり、新しい出逢いを求めたり、夫婦喧嘩したり、よそのご主人が素敵に見えてしまったり、と色々起こります。
解説:イギリス人流人間関係
しかし流石イギリス人。他人との距離の取り方が上手です。異国の地の田舎で、見知らぬ者同士が集まり、時間を持て余すわ、インドならではのストレスも色々あるのですが、上手に仲間と付き合ったり、個人行動をしたりしています。
日本人がかたまって暮らすとどうにもこうにも互いに干渉し合い、人の生活スタイルや考え方に口を挟む傾向があります。
だけどこの映画に登場するイギリス人のシニアたちは仲間が浮気しようが不可解な行動を起そうが我関せず。見事です、まさに大人です。
ドライだけども、直に相談されれば力になり陰で悪口を叩くこともありません。こういう大人ばかりなら、集団でどこか異国へ移住・・・うまくいくのかもしれません。
解説:異国インドの土地でつかんだもの
結末は7人それぞれまったく異なります。インド移住に「失敗」した年寄りもいれば、これをきっかけに息を吹き返しのびのびするようになった年寄りもいます。
最初から最後までインド生活全般について、不平不満、愚痴しか言い続けない女性・・・思わず「いる、いる、こういう人!」と脚の膝を叩いてしまいます。
7人の役者たちの年齢を見て驚きました・・・割と皆さん、年齢はばらばらだったのですね・・・失礼を承知でいいますが・・・全員同じ年代に見えました。
ジュディ・デンチ(1934生まれ)6つのローレンス・オリヴィエ賞、トニー賞など受賞、007シリーズでもお馴染み
ビル・ナイ(1949年生まれ)『ラブ・アクチュラリー』(2003)で英国アカデミー賞助演男優賞受賞、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでお馴染み
マギー・スミス(1934年生まれ)大英帝国勲章第二位を叙勲(1990)、一般的にはハリー・ポッタシリーズで知られている。
トム・ウィルキンソン(1948年生まれ)『フル・モンティ』(1997)で英国アカデミー主演男優賞受賞
ロナルド・ピックアップ(1940年生まれ)『ジャッカルの日々』(1973)
セリア・イムリエ(1952年生まれ)ローレンス・オリヴィエ賞(助演女優賞、2006)受賞
ペネロペ・ウィルトン(1946年生まれ)『カレンダー・ガールズ』(2003)、『マッチ・ポイント』(2005)など
マリーゴールドホテルの経営をしている、インド人の青年、サニー役をデーヴ・パテール(1990年生まれ)が演じています。『スラムドック$ミリオンエア』で主役を務め、一躍大スターになった俳優です。イギリス生まれなので、イギリス英語を話すと思われますが、この映画でもわざとインド訛りの英語を話しています。茶目っ気のある顔で好感がもてる俳優です。
実際にインドでロケを行ったそうで、すごいなと感心。年配の大スターたちをあの国に行かせて撮影をした・・・インド人のエキストラやスタッフ、街中の撮影・・・沢山苦労はあったと思いますが、見事な映画を作り上げたと思います。
つっこみは2点
・リタイヤメントスティビザ類のスタンプで、イギリス人の彼らはインドに移住したのではないか、と思いますが、なのになぜ仕事が出来る?
・ホテルマネージャーのサニー青年。ガールフレンドと街中でキス・・・するのでしょうか?インドでそんなことをしているカップルは、夫婦であろうともまずお目にかかりませんが・・・
解説:元気なシニアになりたい人のためのエール
日本でシニア世代を描くとどうにもこうにもしみったれたり絶望的だったり偏見に満ち溢れたりうんざりするステレオタイプのものが多いのですが年老いても外国に移住できる、年老いても恋はできる、年老いても就職はできる、年老いても友達はできる・・・
年老いても様々な可能性があるんだ、最後の最後まで人生を楽しもう、というパワーと励ましをもらえる映画です。
「私はもう年寄り・・・」とうなだれているシニアがもし身近にいるならぜひそんな人に贈りたい素敵な映画です。
「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」感想・レビュー
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ホテルを訪れた熟年旅行者たち、そしてホテル経営者とその恋人、ホテルで働く人々、その全てが新し人生をマリーゴールド・ホテルでの滞在から始めている。グレアムは亡くなってが、後悔したい人生を払拭し、マノージに埋葬された事で、遺志は継がれている。旅と言う非日常によって、各々が新しい道を発見している。それは、帰国してしまったジーンも、最後に夫のダグラスに対してそれまでの後ろ向きな言葉でなく、前向きな言葉にも表れている。新し事を始めるのも、今までの自分を改めるのも、遅い事など無く、いつでも、それこそ思い立ったが吉日だと思わせてくれる作品だった。
2012年4月時点で、26か国でリリースされた映画で、日本公開は2013年1月。「なんでこんなに面白くて、大スターが勢ぞろいしている映画なのに、すぐに日本公開しないのだろう」と不思議でならず。老人たちが主役のイギリス映画だから地味だ、人気が出ないと思われたのでしょうか。しかし日本だって今やシニアブーム。これはまさに老人版・男女7人物語です。日本でももっと大々的に宣伝すれば間違いなく大ヒットしたであろう傑作映画です。