侠女の紹介:1971年台湾映画。北京に生まれ香港で映画人としてのキャリアを築いたキン・フー(胡金銓)が大ヒットした前作『残酷ドラゴン・血斗!竜門の宿』に続いて台湾に渡って製作した『侠女』(『聊斎志異』の中の一篇「侠女」の映画化)は武侠アクション映画の歴史的名作となり、キン・フーを世界的巨匠の地位に押し上げた。竹林での戦いのシーンは特に名高い。前作『竜門の宿』と同様に、明王朝時代の特務機関である東廠の魔の手を逃れようとする逃亡者の物語。
監督:キン・フー 出演者:シー・チュン(グー・ションザイ)、シュー・フォン(ヤン・フィジュン)、パイ・イン(シー将軍)、ロイ・チャオ(フイエン大師)、ハン・インチェ(シュー・シェンチェン)
映画「侠女」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「侠女」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「侠女」解説
この解説記事には映画「侠女」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
侠女のネタバレあらすじ:砦に引っ越してきた女
明時代の末期、山々に囲まれた辺地にある、誰も使わずクモの巣がはり、幽霊が出ると噂されるチンルー砦。その前の粗末な家にグー・ションザイは母親と住んでいた。街中に書や絵を描いて売る店を出して生活していた。母親は科挙を受けて官僚になれとうるさいが、グーにその気はなかった。チンルー砦に美しい女性ヤン・フィジュンが引っ越してきた。30歳を過ぎても嫁をとらない息子を心配していたグーの母はヤンさんと息子を結婚させようと思いつくが、ヤンは結婚する気がないと言う。しかし、母親が病気の時にヤンはグーの家を手伝ってくれた。一方、オウヤン・ニエンという男がグーに肖像画を描かせながら、砦やヤンの周囲の人々を探り始めていた。グーもヤンと盲人の易者、シー先生の話を立ち聞きして、ヤン、シー先生、グーの店の近くに近頃店を出した薬師のルー・ディンアン先生が知り合いであることを知る。三人は密かに連絡を取り合っていた。ヤンは、ある夜、グーを彼女の家に招く。ヤンは琴を弾きながら歌っている。抱きしめ合うグーとヤン。二人は共に朝を迎える。そこにオウヤンが現れる。オウヤンとヤンは剣を取り出して戦い始める。二人は延々と戦い続け、森の中に消える。
侠女のネタバレあらすじ:ヤンの素性
店に戻ったグーは県令の役所に呼ばれ、書類の写しを10部作るように注文される。それはヤンの人相書きだった。彼女を官憲につき出すと報酬が得られるのだ。その時、役所に東廠(皇帝直属の特務機関)の高官が現れる。その高官はオウヤンその人だった。彼は、東廠のメン・ダー指揮官が当地を訪れるのに備えて反対派の残党であるヤンたちの行方を探索していたのだ。危険を感じたグーは母を馬車で旅立たせる。私たちは夫婦も同然だからあなたを助けるとヤンに言うグーに、ヤンはそのことを忘れよと言う。しかし、グーの意志は固い。ヤンは彼女の素性について事実を話す。ヤンの父、楊連為は、宦官魏忠賢と彼が長官を務める東廠の不正についての報告書を皇帝に送った。そしてヤンの父は皇帝から呼び出される。だが、それは、東廠の罠であって、彼は皇帝に会うことなく、軍の金を横領したという濡れ衣を着せられて東廠のメン・ダー指揮官に拷問されて死ぬ。シー将軍とルー将軍(シー先生とルー先生の正体)はヤンの都からの逃亡を助けた。しかし、お尋ね者となったヤンの捜索を魏忠賢はあきらめない。オウヤンに率いられた東廠の追手はヤンと両将軍を地の果てまで追いかける。そこに有名なフイエン大師ら四人の仏教僧侶が現れる。彼らは素手とロープ(仏陀の土地で血を流すことは許さない)で東廠を追い払い、ヤンたちを助けた。ヤンは二年間寺で過ごしてフイエン大師から様々な武芸を教わった。そして今チンルー砦でヤンたちは東廠に反撃に出ようとしていた。
侠女のネタバレあらすじ:竹林の戦い
竹林でメン・ダー指揮官の側近と接触したオウヤンにヤンたちは矢や手裏剣を浴びせかける、背中に深手を負って逃げるオウヤンを追ったヤンとシー将軍はメン・ダーの二人の側近に道を阻まれるが、死闘の末に勝つ。オウヤンは県令の元に逃げる。メン・ダーへの手紙を口述筆記してもらう。敵の残党がいるのでここに来ることのないようにというものだった。瀕死のオウヤンのために呼ばれた医者はなんとルー先生(将軍)だった。オウヤンは将軍にとびかかるが死ぬ。
侠女のネタバレあらすじ:砦の幽霊
グーは子供のころから彼が学んだ兵法を今こそ生かせると考える。グーたちは、県令や県の役人たちも味方につけ、チンルー砦に幽霊が出ると言う噂を広めたうえで、メン・ダーを砦におびき寄せた。夜、メン・ダーと部下たちが砦に来ると突然鳴りだす鐘。指揮官は幽霊を信じないが、部下たちは幽霊だと騒ぎだす。不思議の光が現れさらに浮足立つ。死体で作った幽霊が次々と目の前に現れる。やがてヤンたちの攻撃が始まる。メン・ダー指揮官も最後にヤンにしとめられえる。朝になり、グーは自分が用意した、幽霊に見立てたカカシその他の仕掛けを見て高笑いをする。ついに彼の学んだ兵法を生かすことができたのだった。しかし、メン・ダーの亡骸を踏んだ時に成功の喜びは恐怖に変わる。ルー先生たちのそれを含むおびただしい数の死体。彼はヤンの名を叫ぶ。そこへフイエン大師を始めとする僧侶たちが現れ亡骸を片付け始める。誰もヤンの居場所を言わない。最後に母親が、彼女は探すなと言っていたとグーに話す。
侠女のネタバレあらすじ:ヤンを探す旅
グーはヤンを探す旅に出る。山や谷をめぐり、野宿をする。ついに寺を見つける。だが、一人の僧侶が赤ん坊を岩の上に置いて去っていく。手紙が赤ん坊と共に。それはヤンが産んだ子だった。だが赤ん坊を父親に託すヤン自身は仏門に入ると言うのだ。子供を抱えて去っていくグーを寺からヤンが目に涙をためて見つめていた。しかしグーと子供には危険が迫っている。フイエン大師はシー将軍と共に山を下りるようにヤンに命じる。グーも今や東廠のお尋ね者になっていたのだ。
侠女の結末:涅槃への道
多数の東廠の男たちがグーを追いかけてくる。グーを逃がしてヤンとシー将軍が戦う。ヤンたちは敵を皆殺しにしたかと思えたが、林の向こうにはさらに多数の男たちがいた。シー将軍は言う。東廠の最高指揮官、シュー・シェンチェンだ。林の中での戦いになる。東廠の他のメンバーが蹴散らされた後にシュー・シェンチェンと彼の二人の息子が残る。桁違いに武術に長けたシューにヤンとシー将軍もたじたじとなる。だが、シューの前にフイエン大師たちが現れる。フイエン大師は寺に助けを求めた二人を官憲に渡すことを拒み、シューとの戦いになる。ついにシューは捕縛され、彼を森に残して僧侶たちは去る。荒野を歩く大師やヤン、シー将軍たちの一行を、シューが二人の息子と共に先回りして待っていた。シューはこれまで人を多数殺してきたことを反省して、残りの人生を僧院で過ごしたいと訴える。だが、フイエン大師が近づいたとろころでシューは大師を刺して致命傷を負わせる。二人の息子も同時に不意打ちをかけ、ヤンやシー将軍も傷を負うが、フイエン大師に眉間を強打されて頭が朦朧としたシューは自分の二人の息子を殺し、自身は崖からジャンプして死んでしまう。ヤンやシー将軍、さらにはるか遠くにいるグーが崖を見上げると、フイエン大師は夕日を背に座り、涅槃に入ろうとしていた。
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