こころに剣士をの紹介:2015年フィンランド,エストニア,ドイツ映画。元フェンシング選手と教え子達の絆を描くヒューマン・ドラマ。第二次世界大戦後、ソ連支配下のエストニア。元フェンシング選手のエンデルはソ連の秘密警察から追われていた。小さな町に身を潜めた彼は、圧政の下で希望も無く生きる子ども達と出会う。新しく創設したフェンシング部で次第に心を通わせるエンデルと子ども達。しかし秘密警察の手は確実にエンデルに迫っていた。伝説のフェンシング選手エンデル・ネリスの実話を基にした感動作。
監督:クラウス・ハロ 出演者:マルト・アヴァンディ(エンデル)、ウルスラ・ラタセップ(カドリ)、レンビット・ウルフサク(ヤーンの祖父)、リーサ・コッペル(マルタ)、ヨーナス・コッフ(ヤーン)ほか
映画「こころに剣士を」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「こころに剣士を」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
こころに剣士をの予告編 動画
映画「こころに剣士を」解説
この解説記事には映画「こころに剣士を」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
こころに剣士をのネタバレあらすじ:小さな町の体育教師
舞台は1950年代初頭のエストニア。スターリン指導下のソ連に統合されたこの国では、ドイツ軍の元兵士達が秘密警察に追われていました。小さな田舎町ハープサルに1人の男性がやって来ます。彼の名前はエンデル・ネリス。元々はレニングラードで暮らすフェンシングの選手でしたが、かつてドイツ軍に召集された経歴を持つため、秘密警察から逃れて来たのです。学校の体育教師の職を得たエンデルですが、校長はわざわざ都会から田舎町にやって来た彼を不審に思っていました。エンデルは密かに、レニングラードにいる友人アレクセイに電話をかけます。彼の元にも捜査の手が回っているらしく、深刻な様子で「油断するな」と警告されました。校長から運動クラブの創設を依頼されたエンデルは試行錯誤するものの、結局専門分野であるフェンシング部を作ります。圧政により辛い思いをしていたハープサルの子ども達は、フェンシング部に喜んで参加しました。
こころに剣士をのネタバレあらすじ:エンデルと子ども達
早速スタートしたフェンシング部ですが、用具が足りないため枝を集めて剣にするなど工夫を凝らすところから始まります。休日に偶然同じ学校に勤めるカドリと会ったエンデルは、一緒に紅茶を楽しみながら子ども達について相談しました。実は子どもが苦手なのだと白状すると、カドリはフェンシング部が子ども達の救いになっていると話します。何かに夢中になっている時は、辛いことを忘れられるのだと。しかし好きで教師をしている訳ではないエンデルは、子ども達相手に苛立ちきつい指導をしてしまいます。参加者の1人ヤーンから、「本当は僕らが嫌いなんだろ」と見透かされたエンデル。彼の言葉に反省し、「君を剣士にしてやる。約束だ」と剣を差し出しました。ヤーンがフェンシングに夢中になっていると知った彼の祖父は、古い用具をエンデルに寄付します。少ない数でしたがこれで本格的な練習も出来ると思われた矢先、校長がフェンシング部を認めないと言い出しました。体制に追従する彼は、もっと労働者階級に相応しい競技を教えるべきだと主張。エンデルは抗議しますが、ハープサルでは都会のような自由な考えは通用しないのだと言われてしまいます。
こころに剣士をのネタバレあらすじ:迫る危険
金曜日の夜、学校で保護者会が開かれました。フェンシング部廃止についてヤーンの祖父は反対し、多数決を提案します。校長は、この会の内容と結果は市の教育委員会に報告すると脅した上で多数決を取りました。しかし保護者達はフェンシング部の存続を望みます。彼らは子ども達がフェンシングに夢中になっていることを知っているのです。校長は黙るしかなくなり、フェンシング部の存続が決定しました。安堵するエンデルのもとへ、思いがけずアレクセイが訪ねて来ます。そしてエンデルを探る動きが見られるので、もっと遠くへ逃げた方が良いと忠告しました。一度は承諾したエンデルですが、子ども達を見捨てられずハープサルに留まることにします。後日、アレクセイから大量のフェンシング用具が送られて来ました。エンデルは友の心遣いに涙ぐみます。用具を手に入れたフェンシング部は本格的な練習を始め、皆めきめきと力をつけていきました。
こころに剣士をのネタバレあらすじ:エンデルの決意
一生懸命な子ども達と、恋人になったカドリに囲まれ、エンデルは穏やかな日々を過ごしていました。そんな折、ソビエトスポーツ協会がフェンシングの全国大会を開くというニュースが飛び込んで来ます。場所はレニングラード。子ども達は大会に出てみたいと意気込みますが、エンデルは許可しません。今レニングラードへ行けば、秘密警察に捕まってしまう危険があったからでした。落ち込む子ども達に追い打ちをかけるように、ヤーンの祖父が秘密警察に捕まってしまいます。彼はヤーンに「立派な剣士になれ。人生を切り拓くんだ」と言い残しました。泣き腫らした目でフェンシングを続けるヤーンを見たエンデルは、全国大会へ出場しようと考えます。それを止めたのはカドリでした。エンデルは彼女に、自分の過去を話し始めます。エンデルは大戦中、18歳でドイツ軍に召集され軍に入りました。そこから脱走した後は、戦後も身を隠して暮らす毎日でした。エンデルは、自分を父親のように慕ってくれる子ども達を失望させたくないと言います。子ども達のほとんどは圧政により父親を奪われていました。エンデルが強制収容所送りになれば子ども達がまた悲しむと訴えるカドリ。しかしエンデルの決意は揺らぎません。後日、エンデルは大会に出場することを子ども達の前で発表。選手3人と、補欠1人を選びます。ヤーンは選手に選ばれ、補欠には一際強い眼差しを持つ少女マルタが選出されました。
こころに剣士をの結末:それぞれの戦い
全国大会の会場に到着したエンデル達。出場校はいずれも名門ばかりで、ヤーン達は思わず尻込みしてしまいます。しかしエンデルのアドバイスに奮起し、決勝戦進出を果たしました。喜ぶエンデルでしたが、秘密警察の姿を見つけ顔が強張ります。決勝戦を放って逃げようとするも、既に会場内のあちこちに秘密警察が配置されていました。動揺するエンデルの前に現れたのは校長です。彼はエンデルを怪しいと睨み、密かに調査を続けていたのです。そしてエンデルが元ドイツ兵という証拠を掴み、秘密警察に通報しました。自分の行動は正しいと確信しつつも、今ならまだ逃げられるかも知れないと呟く校長。しかしエンデルは決勝戦の場に戻りました。ヤーンが善戦しリードを奪っていましたが、転んで足を捻ってしまいます。そこでマルタの出番がやって来ました。一時は同点に追いつかれたものの、果敢に攻め一気に前に出たマルタは見事勝利をもぎ取ります。拍手に包まれ喜ぶ子ども達。しかしエンデルの姿がありません。子ども達の目に移ったのは、秘密警察に連行されるエンデルの後ろ姿でした。――1953年3月5日、スターリンが死去すると、強制収容所の囚人達は徐々に解放されました。エンデルはハープサルに戻り、カドリやヤーン達の出迎えを受けます。その後、エンデルは1993年に他界。エストニアの独立とソ連崩壊から2年後のことです。彼のフェンシング部は現在も存続していますが、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画こころに剣士を のあらすじと結末でした。
超大国ソ連に翻弄されていく、エストニアの小さな田舎町にスポットを当てているところが良かったです。スターリン時代のお互いへの疑惑の眼差しや、密告によって自由を奪われていった数多くの人たちの運命には胸が痛みました。フェンシングを通して子供たちと心を通わせていく、主人公のエンデルの姿には心温まるものがありました。