戦争のはらわたの紹介:1975年西ドイツ,イギリス映画。リアリズムに徹した戦争アクション映画。第二次世界大戦の独ソ戦。社会の縮図のようなドイツ軍の中でジェームズ・コバーン演じる下士官が暴れる。『ワイルドバンチ』のサム・ペキンパー監督らしいスローモーションの多用が目立つ。
監督:サム・ペキンパー 出演者:ジェームズ・コバーン(シュタイナー曹長)、マクシミリアン・シェル(シュトランスキー大尉)、ジェームズ・メイソン(ブラント大佐)、デビッド・ワーナー(キーゼル大尉)、センタ・バーガー(エヴァ)ほか
映画「戦争のはらわた」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「戦争のはらわた」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
戦争のはらわたの予告編 動画
映画「戦争のはらわた」解説
この解説記事には映画「戦争のはらわた」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
戦争のはらわたのネタバレあらすじ:起・シュトランスキーの着任
第二次世界大戦中、1943年の東部戦線、ドイツ軍はソ連軍の猛反撃に遭っていた。そこへフランスから、シュトランスキー大尉が志願して着任してくる。プロイセン貴族の出身の彼は鉄十字章を得るために転属したとうそぶき、紋切り型の愛国的なことばを述べ、独ソ戦の現実を知るブラント大佐やキーゼル大尉は白けた思いをする。そしてシュタイナー伍長とこの男は合わないだろうと考える。
シュタイナー伍長は小隊長として部下たちの厚い信望を得、上官たちは鉄十字章も身に着ける彼の兵士としての優秀さを高く買い、権威に対する反抗的な態度を大目に見ていた。ソ連の少年兵を捕虜にして戻ってきたシュタイナーにシュトランスキーは少年兵の殺害を命じ二人はさっそく対立するが、シュタイナーの部下が機転を利かせて少年兵の命を助ける。シュトランスキーはシュタイナーを曹長に昇格させるが、シュタイナーはうれしくもなんともなかった。また、シュトランスキーは副官のトリービヒ少尉の同性愛者であるという秘密を見破って自分に逆らえないようにする。
その夜は若いマイヤー少尉の誕生日をウォッカで祝い、兵士たちはつかの間の平穏な時間を過ごす。
戦争のはらわたのネタバレあらすじ:承・病院へ
翌朝、シュタイナーは少年兵をこっそり逃がす。だが、ちょうどソ連軍は総攻撃を開始していた。少年兵は味方に撃ち殺されてしまう。突然の攻撃にシュトランスキーは地下壕の中から電話で反攻中であると報告するが、実際のところ地上で指揮を執っているのはマイヤーだった。マイヤーが戦死し、シュタイナーも負傷する。
シュタイナーが脳震盪から回復したときに彼は病院にいた。病院にいても戦場の部下たちの姿がフラッシュバックしてくる。慰問に来た将軍の尊大な態度も気に入らなかった。エヴァという看護婦と愛し合うようになるが、一人の部下が前線に戻るのを見て、シュタイナーは望んで同行する。
戦争のはらわたのネタバレあらすじ:転・鉄十字章
前線に戻ったシュタイナーはシュトランスキーから、シュトランスキーがソ連軍への反攻を指揮したことを証明する書類への署名を要求される。シュトランスキーが鉄十字章を得るためにはその書類が必要だったが、シュトランスキーが戦う姿を見なかったシュタイナーは署名を拒否する。かといって、戦死したマイヤーの功績を横取りしようとしているという理由でシュトランスキーを告発しようとするブラント大佐の正義感にも同調できず、シュタイナーの理解者を自負していたブラント大佐をいらだたせる。
戦争のはらわたの結末:シュタイナーの最後の小隊
ソ連軍の大攻勢を前にして、ドイツ軍の退却が決まる。全小隊が一斉に退却することになるが、シュタイナーを目障りに思うシュトランスキーはその連絡をシュタイナーの小隊にすることを妨げる。一方、ブラント大佐はドイツの敗戦を見越して、キーゼル大尉が戦後の社会で活躍することを願って早めに前線を脱出させる。
取り残されたシュタイナーの小隊は敵前を抜け、ソ連の女性兵の集まる小屋を占拠する。二人の部下が女性兵の色香に迷って命を失うが、地図を得、女性兵から奪ったソ連兵の服を着ることによって敵をだましてようやく味方の間近まで戻る。
シュタイナーの小隊は敵味方識別の合言葉を唱えるが、シュトランスキーの指示を受けたトリービヒ少尉は「罠かもしれない」と言って部下に発砲させ、シュタイナー小隊の兵士は次々と命を落とす。シュタイナーは機関銃を撃ちまくってトリービヒを殺した後、最後に残った2人の部下の一人に「お前が小隊の指揮を執れ」と言って別れる。
殺到するソ連軍を前にブラント大佐も自ら機関銃を構えて戦っていた。シュトランスキーを見つけたシュタイナーは、シュトランスキーを撃って復讐を果たすかと思われたが、「あんたが俺の小隊だ」と告げてシュトランスキーに機関銃をもたせて二人で外に出て戦いに参加する。機関銃の弾倉の再装填の仕方がわからないと言って困っているシュトランスキーを見たシュタイナーの哄笑は世界のありとあらゆる戦場に響き続けた。
ドイツ軍の側だけを扱った戦争映画には、ルイス・マイルストン監督の「西部戦線異状なし」という傑作があるが、この「戦争のはらわた」は、男の理想とする”闘い”と”夢”をひたすら追求してきたサム・ペキンパー監督が、1943年のロシア戦線において、死と対峙する兵士たちの中にそのテーマを求めた力作だ。
敗色濃厚なドイツ軍のある舞台で、第2小隊を率いる人間味あふれるスタイナー伍長のジェームズ・コバーンが、自分たちの命を守ることを信条に闘い続けているところへ、プロシア貴族の誇りに凝り固まり、名誉欲に取り憑かれた将校マクシミリアン・シェルが赴任して来て、男同士の激しい確執のドラマが展開していく。
彼の願いは、名誉ある鉄十字勲章(CROSS OF IRON)を手に入れることだけで、捕虜のソ連の少年兵を殺せというシェルの命令に、コバーンが反対したのが始まりで、二人の対立は激化していく。
そして、シェルは鉄十字勲章の申請書に、コバーンの署名を求めようとごきげんとり作戦を試みるが拒絶される。
部隊長ジェームズ・メイソンや副官デイヴィッド・ワーナーが点描されるうちに、コバーンは負傷して病院へ送られ、看護婦センタ・バーガーと仲良くなったりするが、再び前線に復帰して、ソ連軍の猛攻に遭い、生き残った部下と孤立し、敵中を突破して友軍と合流しようとする。
このコバーン扮する主人公は、いかにも映画の主人公らしく、人情的で英雄的だ。
シェルの命令を受けて、コバーンや彼の部下たちを殺そうとした中尉を殺す場面は、さすがに暴力映画の巨匠ペキンパー監督らしく迫力がある。
全体を通じて最もペキンパー監督らしい野心が窺えるのは、すごく細かいカットを複雑に丹念に編集して、大激戦の迫力を構成しようとしたところだ。
凄絶な戦闘に男たちの求めるものは何か。
ペキンパー監督は、戦場での男たちの生き様を、スローモーションを効かせたダイナミックな演出で鮮やかに描写していて、ジェリー・ゴールドスミス作曲のエモーショナルなテーマ音楽も胸をえぐる。