人間の証明の紹介:1977年日本映画。森村誠一の同名小説を映画化した作品。麹町署の刑事達は東京のホテルで殺害された黒人青年の素性を調べるうちに幼き頃に生き別れた日本人の母の存在にたどり着く。日本とニューヨークを舞台に繰り広げられる壮大なサスペンス映画です。
監督:佐藤純彌 出演者:岡田茉莉子(八杉恭子)、松田優作(棟居)、ジョニー・ヘイワード(ジョー山中)、夏八木勲(新見隆)、岩城滉一(郡恭平)、竹下景子(中山静枝)、長門裕之(小山田武夫)、ハナ肇(横渡)、三船敏郎(郡陽平)、鶴田浩二(那須)、 ジョージ・ケネディ(ケン・シュフタン)ほか
映画「人間の証明」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「人間の証明」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
人間の証明の予告編 動画
映画「人間の証明」解説
この解説記事には映画「人間の証明」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
人間の証明のネタバレあらすじ:起
東京赤坂にあるロイヤルホテルではデザイナー八杉恭子による華やかなファッションショーが行われています。その頃ホテルの最上階にあるスカイラウンジに到着したエレベーターからは大勢の客が降りてきました。エレベーターガールはいつまでも降りようとしない男がいることに気づいて声を掛けますが、その瞬間男の腕の中から西条八十の詩集がこぼれ落ちます。男はストウハと呟くと、その場に倒れ込みました。男の胸にはナイフが刺さっており、まもなく絶命します。被害者の名前はジョニー・ヘイワード、ニューヨーク出身のアメリカ人で三日ほど前に東京へやってきたばかりでした。周辺を捜査した麹町署の刑事達はホテルの近くの清水谷公園にジョニーの血痕とともに古びた麦わら帽子が落ちているのを発見します。ジョニーが呟いたストウハは麦わら帽子を示すストローハットのことではなかろうかと推測し、捜査を開始します。刑事の横渡はエレベーターに乗り合わせていた一組のカップルから事情を聞きます。男の名は新見隆、連れの女性を妻だと話しますが、実際はクラブに勤めるなおみという愛人です。二人はその後タクシーで帰宅しますが、なおみは誰かに見られては困るので途中で下ろして欲しいと言い出します。タクシーから降りたなおみは雨の降る夜道を歩きはじめますが、道に飛び出してきた乗用車にひかれ、死亡します。運転していたのはデザイナー八杉恭子の息子、郡恭平です。恭平は恋人とともになおみの遺体を車に乗せて、走り去ります。なおみが心配になって引き返した新見は道に落ちていた恭平の懐中時計を拾います。
人間の証明のネタバレあらすじ:承
翌日帰ってこないなおみを心配した夫小山田武夫が彼女の勤めるクラブを訪ねてきます。しかしクラブの同僚達は彼女がどこにいるのかさえ分からないと言います。小山田はなおみに男がいるのではないかと勘繰り始めます。新宿の喫茶店で働く男とその恋人は事件のあった日の午後7時半頃に清水谷公園でジョニーを見かけていました。二人はその2・3分前には公園から足早に立ち去っていく女性を目撃していましたが、顔までは覚えていないと言います。麦わら帽子は間違いなくジョニーがアメリカから持ち込んだものと判明しますが、彼が何の目的で日本にやってきたのかが分りません。警察は国際警察機関を通してジョニーの捜査協力をニューヨーク市警に依頼します。事件の担当となったケン・シュフタンがジョニーが住んでいたアパートを訪ねると、管理人からジョニーがキスミーに行くと話していたと聞き出します。報告を受けた麹町署の刑事達は日本にキスミーという地名があるか調べ始めます。一方新見の会社に乗り込んできた小山田は妻を返して欲しいと訴えますが、新見もまたなおみの所在が分からずに困り果てていました。二人はなおみが何者かに殺されたのではないかと考え始めます。恭平は恭子から借りた金で現場に落としたものと同じ懐中時計を購入しようとしますが、大変希少な時計で手に入りません。ケンはジョニーがライオネル・アダムスという富豪から多額の小切手を貰っていたことを突き止め、彼に会いに行きます。そこでジョニーの父ウィルシャー・ヘイワードが息子の渡航費を稼ぐため、故意に道に飛び出してアダムスに金銭を要求していたことが発覚します。さらにウィルシャーが戦後進駐軍として日本に滞在していたことも判明します。
人間の証明のネタバレあらすじ:転
恭平は人を引き殺し、海に捨ててしまったことを恭子に告白します。恭子は自首するという恭平を説得し、ニューヨークへと逃避行させます。事故現場に落ちていた時計が恭平の私物であることを掴んだ刑事の棟居は横渡とともに郡家を訪ねますが、恭子の顔を見て愕然とします。戦後まもない頃のこと、棟居の父は米兵達に暴行されそうになっていた恭子を助けだそうとして命を落としていたのです。一方ジョニーが死に際に呟いた「キスミー」という言葉は西条八十の詩集におさめられた詩の中の地名「霧積」であることが判明し、棟居達は群馬県にある霧積温泉へと向かいます。そこで八杉恭子が進駐軍向けのバーで働き、黒人との間に子供をもうけていたことが明らかになりますが、当時の事情を知る老婆中山たねは何者かによってすでに殺害された後でした。ジョニーの母が八杉恭子なのではないかと推測する棟居は単身ニューヨークへと旅立ちます。ニューヨーク市警に出向いた棟居はケンの家に招かれますが、ケンの若い頃の写真や手の刺青から父親を殴り殺した進駐軍の一人だと気付いてしまい、憎悪を募らせていきます。棟居はニューヨークのホテルに泊まる恭平を見つけ出し、声を掛けますが、恭平は町中を逃げまわった挙句ケンに射殺されてしまいます。棟居はケンに日本人を何人殺せば気が済むのだと吐き捨てます。棟居とケンはハーレムの廃墟で暮らすウィルシャーを見つけ出し、ジョニーの本当の母親について真実を聞き出そうとします。
人間の証明の結末
東京では日本デザイナーコンクールの授賞式が行われ、今まさに金賞が発表されようとしていました。棟居は恭子の元に駆け寄り、恭平が射殺されたことを伝えます。恭子は受賞した賞を辞退し、失意のまま車を走らせます。向かったのは霧積の崖でした。恭子は後を追ってきた棟居達に犯罪を自白します。ようやく手にした幸福な生活を壊したくなかった恭子は自分を慕って訪ねてきた息子ジョニーをどうしても受け入れることができませんでした。恭子は公園でジョニーを刺し殺し、ジョニーとの関係を知る中山たねをも手にかけてしまったのでした。恭子は二人の息子を死なせてしまったことを悲観し、自らも崖から身を投げます。ケンは東京から届いたジョニーの遺品を届けにウィルシャーに会いにいきますが、彼はすでに息絶えた後でした。遺体の傍らには若かりし頃のウィルシャーと恭子が並んで写った写真が置かれていました。廃墟を出たケンは黒人男性に「日本びいきめ」と罵られ腹を刺され、のたうち回りながらやがて絶命するのでした。
「人間の証明」感想・レビュー
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’77当時10-11歳。映画のCMでジョー山中さんの歌と霧積 碓氷 あの麦藁帽子のセリフが40年以上経っても鮮明です。様々な縁や影響、無情と仏教思想の無常を突きつけてくる。
文脈は経験と知識、感受性に左右される。娯楽で見てたが、思い巡らすと、胸がザワつき苦しくなる。 -
今日は2021年11月14日。
以前観たのだが、再放送していたのでなんとなく録画して、先ほど観終わった。
観て良かった。以前の印象とは違うものを感じている。
オールスターキャストだが、娯楽映画ではない。そんな軽い映画ではない。
敗戦後の日本と日本人。母子の情に人種の問題も含まれていた、そんな映画であった。
エンドロールでは途中で見た役者達の名前を確認したが、どこで出ていたのか分からない人も多かった。確認出来た役者は皆若かった。
もう一度見直してみようと思った。 -
「自分がしたことは、いいことであれ、悪いことであれ、必ず返ってくるのだということ」を描いていますが、反面、ジョニーの父親やジョニーが報われないです。
そして、恭子を襲った米兵の大多数がその後も裁かれることなく、のさばっているのでは。
そんな理不尽を感じる作品でした。
ただのミステリーやサスペンスものではない、人間とは何かを問う映画です。戦争も絡んでくるので、戦争についても考えさせられます。自分がしたことは、いいことであれ、悪いことであれ、必ず返ってくるのだということを改めて教えてくれる映画でした。ジョー山中さんの切なげな歌声が今でも忘れられません。重いけれど、人生の節目節目で観たい映画です。森村誠一さんの原作もおすすめです。